おそらくこの便りは、仕事を十二倍もこなす愛すべき小さな犬によって、ケンおよびその友人たちのもとに届くと確信しています。ゆえに、二十四時間の間、我々はここに待機することにしましょう。――マルタン』
玉太郎はこの手紙を読んで飛び上がりました。
「ラツールさん! ケン小父さん、ダビットさん、張さん、それからラウダさん! みんな起きて、起きて! 大事件だ!」
そう叫びながら、玉太郎は空き缶をガンガンと打ち鳴らしました。
「おい、玉太郎の玉ちゃん、どうしたんだい?」
ラツール記者が真っ先に目を覚ましました。
「恐竜がやって来たのかい?」
そう言って飛び起きたのはダビットでした。「落ち着いて、落ち着いて……」
ケンはシャツのボタンを留めながら、冷静にそう言いました。
張とラウダも目を覚ましました。
「返事が来たんです。ポチが持ってきたんですよ。ほら、ケン小父さん、これです」
「うん、ポチはなかなかやるね。どれどれ」
玉太郎から手渡されたマルタンからの手紙を、ケンはみんなに聞こえるよう、大きな声で読み上げました。
「ばんざい!」
ダビットが両手を高く上げました。
「どうする?」
ケンがみんなを見回しました。
「すぐに出発するか、それとも……」
「それとも、なんですか?」
「あの帆船を調べるんだ」
一同の頭の中には、うまくすればあの帆船に乗って、この島から脱出できるかもしれないという希望が、ちらりとよぎりました。
「調べても無駄です」
ラウダが頭を振りながら、低い声で言いました。
「僕はもう、十分に調べてあるんです」
「その調べた結果を聞かせてもらおう」
ケンは議長のような態度で発言を促しました。
「まず、船自体は傷んでいません」
「大洋の航海に出ても大丈夫かな?」
「部分的には朽ちているところもありますが、大丈夫でしょう」
「それはありがたい」
「でも、船は大丈夫でも、あの洞穴から外に出すことはできないんです」
「できないというと?」
「なぜだかわかりませんが、船は少しも動かないのです。潮の満ち引きに応じて、多少なりとも動くべきはずの場所なのに、まるで船底をコンクリートで固定されたかのように、びくともしない。だから、もうだめなんです」
ラウダはがっくりと下を向きました。
「よしんば動いたとしても、あの湖からどうやって船を海に出すことができるだろうか。僕は五年もの間、調べに調べた結果なのです」
まるで独り言のように、深いあきらめの色が、消え入りそうな溜息と一緒にみんなの胸を悲しくさせました。
「でも、もう一度調べてみようじゃないか」
長い沈黙のあと、ケンが元気よく言いました。
「ラウダ君が見落としたところがあるかもしれないし、僕たちの新しい発見に期待してもいいだろう」
「ケン、いいところに気がついた! さあ、怪船探検へ出発しよう。ラウダ君が先頭だ。それからケン、玉太郎、ラツール君の順で進んでくれ。張君は少し遅れてあとから……」
「ダビット、何を言っているんだ?」
「映画の話だよ。僕はここにカメラを据える。君はそのままの位置で止まっていてくれ。次は僕が船の上から撮るんだ。なにしろカメラが一台しかないから、カメラマンは忙しいんだよ」
「ダビットさんは相変わらず仕事熱心だなあ」
「そんなに苦労して撮ったフィルムが、いつ世界の人の目に触れるんだ。永久にこの宝島に葬り去られるとも限らないんだぞ」
張が重々しい声で、死の予言のようなことを言いました。
「それは僕らが死ぬと決めているからだよ。僕らは助かる。そして文明社会に帰れるんだ。帰った翌日には、この映画はもう封切りさ。ニューヨーク劇場にしようか、それともワシントン劇場にしようか。僕はそれまで考えているんだ」
「夢のような話だ。奇跡の向こう側の物語だよ、君の言うことは」
「いや違う。明日のことを言っているんだ。大統領をはじめ、朝野の名士を多数招待して封切る場合は、とてもすばらしいぞ。僕はケンと一緒に舞台に登る。嵐のような拍手だ。ケンが恐竜島の探検談を一席やる。僕が続いて島の生活について語る。そして映画についての説明をするんだ。人々はただ驚嘆のうちに僕らの行動を称えるだろう。リンドバーグのように、ベーブ・ルースのように、僕らは世紀の英雄になるんだ!」
「やめてくれ、ダビット。その話は帰りの船の中で聞こうじゃないか」
ダビットは不平そうでしたが、こんな惨めな状況でも、明るく朗らかな性格でした。希望を捨てないその態度に、玉太郎はアメリカ人の強さを見せつけられたような気がしました。
「さあ、諸君、出発だ!」
ダビットはカメラのレンズのカバーを外しました。不平を言いながらも、誰もがその演出通りに歩き出しました。一歩一歩滑るような岩道を、湖の方へと下っていきます。そのゴロゴロとした岩道の向こうに、大きな帆船が御殿のようにそそり立っていました。
僕らは本当に助かるのだろうか?
「この船に乗り込む道はただ一つ。あそこです」
ラウダが指差しました。
「あの岩から、岩伝いに渡って、浅瀬を通って行くのです。さあ、僕の後について来てください」
幾度も、いや幾百回も通い慣れた道に違いありません。ラウダはすっかり慣れた足取りで岩道を登っていきました。あとからすぐダビットが続きます。ダビットは計画通り、一同が船に乗り込む様子を、帆柱の陰あたりからカメラに収めるつもりのようです。
ラウダが浅瀬を通って、船端に垂れ下がっている綱にすがって軽く船内に入ると、ダビットも続いて上がっていきました。もっともダビットの場合は、ラウダほど身軽にはいきませんでしたが。危うく落ちそうになったところを、横からラウダに引っ張り上げられました。
ケンも張も甲板へ上がりました。
ラツールはひどく疲れていたので、ポチと一緒に岩に腰を下ろすことになりました。
「玉ちゃん、しっかり頼むよ」
「うん、大丈夫だ。僕、よく見てくるよ」
玉太郎はラツールと握手をすると、身軽に飛び移りました。
甲板はしっとりと湿っていましたが、塵一つなく美しく片付いていました。
帆はどの帆もすっかり巻き込まれていました。
「この帆は役立つかな」
「大丈夫、役立つよ。現に僕は、この帆を剥いで小型のテントを作ったんだ」
ラウダが答えました。
「まず我々は、船長の部屋に敬意を表することにしよう。僕が案内する。ついて来たまえ」
ラウダは、自分の家を案内するように先頭に立って、階段を降りていきました。
階段はギシギシと音を立てます。
ある部分は腐っていましたが、それでも足を滑らせて転げ落ちるような危険はありませんでした。
「ここが船長室だ」
ラウダが指差した扉を見て、一同はぞっとしました。
扉の上には、すでにミイラになった人の首が、短刀に釘付けになって貼り付いているのです。
「なんだい、この謎は」
ダビットが首をかしげました。
「『この部屋に入る者は、この者と同じ運命をたどることを覚悟せよ』」
ケンがミイラの首の下に書いてあるスペイン語を英語に直して説明すると、
「つまり、船長室に入っちゃいけないってことだね、ケン」
「そうだよダビット。
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