ハイフェッツ盤(ビクター JD378-81)は録音も新しく、手際も実に見事です。その技巧は冷たいほどに冴え渡り、人間離れした美しさを放っています。
第6番の「ヴァイオリン協奏曲変ホ長調 K.268」は、ティボー盤とデュボア盤があります。
ティボーのモーツァルトは、独特の風格と情愛を湛えた名盤でしたが、これも録音が非常に古くなっています(ビクター VD8048-50)。
第7番の「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」は、ビクターからメニューイン盤が出ています。
また、モーツァルトが10歳の時の作品とされる「ヴァイオリン協奏曲(アデライデ)ニ長調」をメニューインが弾いたものもあります。重要な作品というわけではありませんが、十分に可愛らしい曲です。
**ピアノ協奏曲**
「ピアノ協奏曲」のレコードも膨大な数がありますが、その中から特に傑出したものを二、三挙げるにとどめます。
「ピアノ協奏曲第9番変ホ長調 K.271」は、甘美で若々しい曲です。ギーゼキングの演奏は胸がすくような爽快さがあり、軽い気持ちで聴くのにぴったりです(コロムビア J8705-8)。
「ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466」にはフィッシャーの演奏があります(ビクター JD315-8)。教授らしい生真面目な演奏ですが、端正で実に美しいものです。
亡くなった小ニキシュの同曲演奏もありますが、形見以上の重要性はありません。
この曲を指揮者ブルーノ・ワルターが、モーツァルト時代の習慣に従ってピアノを弾きながら管弦楽を指揮したレコードは、派手さはありませんが、落ち着いた高雅な演奏で、名品の一つに数えられるでしょう(コロムビア JS43-6)。
「ピアノ協奏曲第26番(戴冠式)ニ長調 K.537」は、チェンバロ奏者のランドフスカ夫人が、ピアニストとしても第一流であることを証明する一枚です。女性らしく思いやりに満ちた、巧みで繊細な演奏です(ビクター JD1076-9)。
最後に「ピアノ協奏曲第27番変ロ長調 K.595」は、シュナーベルが演奏しています。
曲自体にもモーツァルトの晩年を象徴する深みがあり、演奏も一風変わった個性的なもので、シュナーベルによるモーツァルトを聴く醍醐味が詰まっています。**フリュート協奏曲**
モーツァルトの美しい「フリュート協奏曲」が三つ、レコードに収められています。
「フリュート協奏曲第1番ト長調 K.313」も美しい作品ですが、同じく名手モイーズが吹いているものであれば、録音は古いものの「フリュート協奏曲第2番ニ長調 K.314」の方が、はるかに聴き応えがあります。
管弦楽の指揮はコッポラが担当しており、まるで玉を転がすような、きらびやかで圧倒的な美しさは、言葉では言い表せないほど素晴らしいものです(ビクター JB207-8)。
同じ曲を第2、第3楽章だけ抜き出して一枚のレコードに収めた、アマディオによる演奏もまた格別です(ビクター JH206)。
モイーズのフリュートはフランス風の、硬質で透明感のある音色が特徴です。それに対してアマディオは、イタリア風の柔らかく甘い音色を奏でており、二人の音色の違いを聴き比べるのも面白いものです。
それからもう一つ、「フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K.299」という12インチ3枚組の名品があります(ビクター JB1-3)。
フルートはモイーズ、ハープはラスキーヌが担当しており、二人の名人の息がぴったりと合っています。この曲が持つ、光り輝くような美しさは、この世のものとは思えないほどです。
天才モーツァルトの真髄は、まさにここにあると言いたくなるような名演です。
**ヴァイオリン・ピアノ・ソナタ**
ゴールドベルク(ヴァイオリン)とクラウス(ピアノ)の組み合わせは、かつて日本でも聴くことができましたが、この二人が奏でるモーツァルトは、新鮮で透明感があり、一種の高貴な気品を漂わせています。
決して豪華絢爛というわけではなく、大きな舞台向きではないかもしれませんが、レコードに録音して、間近でじっくりと聴くには、まさに現代人好みの素晴らしいモーツァルトだと言えるでしょう。
この二人の組み合わせによるモーツァルトのレコードは、コロムビアから「ソナタ 変ロ長調 K.378」「ソナタ ハ長調 K.296」「ソナタ ト長調 K.379」「ソナタ 変ホ長調 K.481」とかなりの数が発売されており、どれも個性豊かで優れたものです。
私は、女流ヴァイオリニストのモリーニがケントネル(ピアノ)と共演した「ソナタ 変ロ長調 K.454」を愛聴しています。
この曲の、優しい歌心に満ちた甘美さが、女性であるモリーニの感性にぴったりとハマっていて、何とも言えない魅力があるからです(ビクター DB1429-31)。
同じ曲をハイフェッツとベイの組み合わせで入れたものと、その歯切れの良い冷ややかな美しさを聴き比べてみてください(ビクター JD1329-31)。
こちらも申し分なく素晴らしいレコードですが、親しみやすさという点では、やはり前者に軍配が上がるでしょう。
もっとも、「親しみやすい」ということは「技術が劣る」という意味ではありません。
演奏技術も録音の質も、ハイフェッツの方が圧倒的に勝っていることは言うまでもありません。
メニューイン兄妹は「ソナタ イ長調 K.526」を録音しています。
妹のピアノを引き立てるために、兄のメニューインが少し控えめになっているのは、やむを得ないところでしょう。
ハイフェッツとベイが収めているもう一つの「ソナタ 変ロ長調 K.378」は、技巧的には宝石のように輝く素晴らしさを持っています。この、享楽的とさえ見える自由奔放な美しさを追い求めた若い頃の作品を、ハイフェッツが人間離れした冷徹なテクニックで弾きこなす快感は、並大抵のものではありません(ビクター JD1021-2)。
同じ曲をポリドールでフレッシュが弾いているものもあります。これは先のヘンデルのソナタと一緒にアルバムに入っていますが、録音の状態はあまり良くないものの、老教授の風格が漂っていて興味深い演奏です。
**ピアノ・ソナタ**
モーツァルトの簡素なピアノ・ソナタは聴いていて本当に楽しいものですが、ここでは代表的な二、三のレコードだけを紹介しておきます。
有名な「トルコ行進曲付きソナタ K.331」は4、5種類ほどレコードが出ていますが、ビクターのフィッシャー盤(JD367-8)と、ポリドールのケンプ盤(45231-2)が代表的です。
前者は端正で、きらめくような美しさがあります。
まさに古典演奏における最上の風格と言えるでしょう。一方の後者は重厚で熱っぽく、どこか心温まる親しみを感じさせます。
私はどちらかといえばフィッシャーを好みますが、ケンプを支持する人も少なくないはずです。
「ピアノ・ソナタ ハ短調 K.457」のギーゼキングによる演奏は、一風変わったモーツァルトとして評判になりました(コロムビア JW223-4)。
この新人ピアニストが奏でる古典には、古い伝統の殻を破った、新しいリアリズムの生命が宿っているのでしょう。
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