初級翻訳・楽聖物語 第38話

楽聖物語

ニーヅェルスキーの演奏は、それよりもたしなみが良く、落ち着いた繊細さが好感を持たせます。
他には、パハマンの「マズルカ=ト長調(作品67-1)」(ビクターJF55)、パデレフスキの「マズルカ=嬰ハ短調(作品63-3)」(ビクター7416)、ローゼンタールの「マズルカ=ロ短調(作品33-4)」(ビクターJD924)などは、記念的な意味で重要です。また、ホロヴィッツの「マズルカ=ヘ短調(作品7-3)」(ビクターJE84)、「同=嬰ハ短調(作品50-3)」(ビクターJD1494)、「同=ホ短調(作品41-2)」(ビクターJE142)などは、演奏の精巧さという点で挙げられます。

ポロネーズ

これこそ、ショパンがそのポーランド魂を最もよく表現した、豪快で、あるいは優雅な国民舞踊です。
15曲あるポロネーズのうち8曲までを、ルービンシュタインが「ポロネーズ集」としてビクターに入れていますが(JD655-62)、これはルービンシュタインのショパン演奏の中でも傑出したものです。味の深みには少し欠けるものの、形の美しさは非凡なものがあります。
他には、あまり良いレコードがありません。
かつての古い録音の時代には、パデレフスキの「軍隊ポロネーズ」がファンの血を沸かせましたが、電気録音にはこの曲が含まれていません。パデレフスキのレコードとしては「ポロネーズ=変ホ短調(作品26-2)」(ビクター7391)と、「ポロネーズ=変イ長調(作品53)」、つまり「英雄ポロネーズ」(ビクターJD1104)が入っていますが、前者の方が幾分若々しさがあって良いでしょう。
パデレフスキはポロネーズにうってつけのピアニストで、演奏にもその祖国愛があふれていて興味深いものです。特に「英雄ポロネーズ」はショパンのポロネーズの中でも有名ですが、これを録音した時の彼はかなりの高齢で、どうしようもない衰えを感じさせます。
他にこの曲にはコルトーのもの、フリートマンのもの、ギーゼキングのもの、ブライロフスキーのものがありますが、どれも最上のものとは言えません。
「ポロネーズ=嬰ハ短調(作品26-1)」をパハマンが弾いたものはビクターの「パハマン選集」の中にありますが、これは高齢によるハンディキャップを差し引いても、捨てがたいレコードです。
パデレフスキの英雄ポロネーズと共に、記念として保存しておくべきでしょう。

幻想曲、子守唄、船唄

ショパンのピアノ芸術の最後の到達点であったと言われる「幻想曲=ヘ短調(作品49)」は、ショパン特有の甘美さをかなぐり捨てて、古典的な形式の中に雄大で奥深い瞑想を詰め込んだものです。レコードではビクターのコルトー(JD330-1)、コロムビアのロン、フリートマンなどがありますが、これはコルトーの雄大で力強い演奏を第一とします。
しかし、もう少し精神的な深みを持ったレコードがあっても良いかもしれません。
叶わぬことではありますが、若き日のパデレフスキなどが弾いていたら、と夢想してしまいます。
「子守唄(作品57)」は、ショパンの子供のような純粋な心が現れた、これほど優しく美しい曲は他にありません。
ビクターから出ているコルトーの演奏が断然良いですね(JD1674)。
コロムビアのロンのものも、女性らしい良さを買っても良いでしょう(名盤集)。
「船唄(作品60)」は、遥か遠い海の幻想を描いたものです。
ショパンの曲の中でもスケールの大きい名作の一つです。
レコードにはコルトー(ビクターJD509)、ロン、ルービンシュタインなどがあります。

ピアノ協奏曲

ショパンの協奏曲は、オーケストラの使い方が素人っぽいという理由で長い間批判されてきましたが、しかし「ピアノの詩人」であるショパンの個性は、協奏曲にも一風変わった生命を吹き込んでおり、二つとも世にも稀なほど美しいものです。
「第一ピアノ協奏曲=ホ短調(作品11)」は爽快な味わいがあって好ましい曲です。
レコードはポリドールのブライロフスキー、コロムビアのローゼンタール、ビクターのルービンシュタインのものがありますが、三つともそれぞれの特徴があるとはいえ、録音が美しいルービンシュタインのものを選ぶのが常識的でしょう。
オーケストラはロンドン交響楽団、指揮はバルビロリです(ビクターJD1270-3)。
「第二ピアノ協奏曲=ヘ短調(作品21)」は、優雅で美しい作品です。
レコードはビクターにルービンシュタインとコルトーの二種類、コロムビアにロンのものがありますが、これはコルトーのものを選ぶべきです。
指揮はバルビロリです(ビクターJD794-7)。
コロムビアのロンのものも、女性らしい優雅さと艶があって良いと言われています(J7832-5)。### ソナタ

ショパンが作曲したピアノ・ソナタは全部で3曲ありますが、これらも協奏曲と同じように、「ソナタ」という決められた窮屈な形式に縛られてしまい、ショパンの天才的な才能を十分に発揮しきれなかったと言われています。
ですが、その3曲のうち第2番と第3番は、やはり素晴らしい名曲です。
「ソナタ第2番 変ロ短調(作品35)」は、「葬送行進曲ソナタ」という名前でとても有名です。
なぜなら、第3楽章に、美しくも悲しい調べの「葬送行進曲」が使われているからです。
この曲のレコードには、ビクターから出ている2つの名盤があります。
それはコルトー(JD306-7)とラフマニノフ(1489-92)の演奏で、コルトーは2回も録音を残していますが、どちらも本当に素晴らしい、並外れた名演奏です。
優雅な悲しみにあふれ、今にも消え入りそうなほど美しい泣き声のような旋律は、コルトーの名演奏によって、この上なく美しく描き出されています。
ラフマニノフの演奏については、昔の私は「ちょっと納得いかないな」と思っていましたが、今聴いてみると、やっぱりとても上手です。
これは演奏者の個性が強すぎるために起こる現象なのですが、楽譜の指示に忠実というわけではないものの、不思議な情熱がぎっしり詰まっているのです。
「ソナタ第3番 ロ短調(作品58)」は、先ほどの葬送ソナタよりも、さらに完成度が高まったショパンの姿を見ることができます。
演奏するのはとても難しい曲ですが、本当に美しい曲です。
レコードでは、ビクターから出ているコルトーの名盤をおすすめします(DA2109-12)。
ただ、録音が少し古いのが残念なところです。この曲の繊細な味わいを楽しみたいなら、同じくビクターから出ているブライロフスキーの演奏を聴いてみるのが良いでしょう(JD1643-5)。

### 歌

ショパンの歌曲「乙女の願い」には、昔のレコード時代にゼンブリッヒが歌った、とても有名な骨董品のようなレコードがあります。
ピアノの伴奏も自分自身で弾いているのですが、録音が古いことをすっかり忘れてしまうほどの、愛らしくて可愛らしい歌声に、私はすっかり魅了されています。
電気録音になってからは、コルユスという歌手がビクターに「小さき指環」というタイトルで録音していますが、ゼンブリッヒのものと比べると、品格という点ではずっと落ちてしまうでしょうね。

最後に一つだけ言っておきます。

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