初級翻訳・楽聖物語 第71話

楽聖物語

ダンディが自ら作曲した「山の詩」を弾いたピアノのレコードがフランスにはありますが、今となっては骨董品ですね。
残念ながら、日本ではなかなか手に入りません。

ショーソン
(エルネスト・ショーソン 1855―1899)

 フランクの弟子たちの中でも、ひときわ個性的な作曲家です。
その清らかで美しく、情愛に満ちたフランスらしい作風は、誰からも愛されています。
「ピアノとヴァイオリンのための協奏曲 ニ長調(作品21)」は、情熱があふれる美しい曲です。コルトー(ピアノ)とティボー(ヴァイオリン)、そして弦楽四重奏団が演奏したレコードは非常に素晴らしい出来栄えです(ビクターDB1649―53)。
「詩曲(ヴァイオリンと管弦楽のための)」は、先ほどの曲よりも、もっと思想的に深みがあります。
優雅で素直でありながら、心に訴えかける力がとても強い作品です。
メニューインがヴァイオリンを弾き、彼の師匠であるエネスコがパリ音楽院管弦楽団を指揮したレコードが秀逸です(ビクターJD239―40)。
「リラの花咲く時」は、ショーソンを代表する歌です。
昔の歌手メルバが歌ったものは、骨董レコード界でもトップクラスの名盤ですが、電気録音の時代になってからは、パンゼラが歌ったものがあります(ビクターJD1251)。
ただ、メルバが持っていたような、清潔で柔らかく甘い響きには少し及ばないかもしれません。

リアドフ
(アナトーリ・リャードフ 1855―1914)

 リムスキー=コルサコフの教え子で、可愛らしい曲の中に良い作品があります。
大物というわけではありませんが、バレエ音楽やピアノ曲には注目すべきものがあり、何といってもロシア民謡の研究に大きく貢献した人物です。
コーツ指揮の「ロシア民謡選曲集」(ビクター9797―8)や、同じくコーツ指揮の「音楽玉手箱」が民謡集の4面目に入っています。
この「音楽玉手箱」のピアノ演奏のレコードを、岩崎雅通さんが長い間探し続けて、ようやく古い盤で見つけ出したというエピソードがありました。

イッポリトフ=イヴァノフ
(ミハイル・イッポリトフ=イヴァノフ 1856―1935)

 ロシア近代の作曲家であり指揮者です。組曲「コーカサスの風景」が代表作で、とても親しみやすい曲です。
ストコフスキーが、「村の中」(ビクターJI921)と「酋長の行進」(同JE176)を指揮しています。
この人の曲は日本人の好みに合っているようで、ラジオでは週に一度くらいは必ずと言っていいほどレコードが流されています。

エルガー
(エドワード・エルガー 1857―1934)

 イギリスで国民的な尊敬を集めた作曲家です。十数年前、友人の中村善吉氏がイギリスへHMV盤の注文を出した時のことです。「赤盤の傑作集は全部送ってほしいが、エルガーの作品は送らなくていい」と伝えたところ、リミントン商会の主人が「エルガーは現代で一番の大作曲家だ。あなたが何と言おうと、エルガーの作品は全部送ることにするよ!」と強気で言い返してきたという話があります。
イギリス人がどれほどエルガーを大切に思っているか、これを知ればよく分かるでしょう。
彼の曲作りは穏やかで、確かにイギリス風ではありますが、現代の大作曲家としての貫禄は十分です。
レコードはかなりたくさん日本に入ってきています。「威風堂々」や「エニグマ変奏曲(謎)」といった有名な作品のほかに、エルガー自身が指揮した「交響曲第2番」や、メニューインが弾く「ヴァイオリン協奏曲 ロ短調」などがあります。

プッチーニ
(ジャコモ・プッチーニ 1858―1924)

 イタリアのオペラ作曲家で、「蝶々夫人」や「ラ・ボエーム」のような甘く美しいオペラを作りました。
ヴェルディほど偉大とは言えませんが、世界中で愛されている作品は数多くあります。
「蝶々夫人」と「トスカ」は、どちらもコロムビアからモラヨーリ指揮による全曲版が出ています。「ラ・ボエーム」は、ビーチャムが指揮した第4幕のみが収録されています。
オペラの一枚ものに関しては、昔の歌手の方が良いと思いますが、ビョルリンクが歌う「冷たい手(汝が小さき手)」(ビクター愛好家協会第3集)などは傑作です。

レオンカヴァッロ
(ルッジェーロ・レオンカヴァッロ 1857―1919)

 オペラ「道化師」一つで有名になった人です。
「道化師」はたった2幕の短いオペラですが、素晴らしい名作です。
全曲盤のレコードには、名テノール歌手のジーリをはじめとする豪華なメンバーが参加しており、ギオーネがスカラ座の管弦楽団と合唱団を指揮しています(ビクターJD510―8)。
一枚ものなら、カルーソーのものが最高です。

ヴォルフ
(フーゴー・ヴォルフ 1860―1903)

 ドイツの歌曲(リート)は、シューベルトからシューマンを経て、フランツとヴォルフという二つのスタイルに分かれました。
ヴォルフの歌曲は、ピアノ伴奏の役割を大きく広げ、表現を重厚にすると同時に、アクセントに神経を使うことで独特の味わいを生み出しました。しかし、初期の歌曲と比べると、暗くて重苦しい雰囲気があるのは避けられません。
それでも、非常に個性的で、熱心なファンを抱えている作家です。
十年ほど前、HMVで雑誌『グラモフォン』のマッケンジー氏の提唱により「ヴォルフ協会」が組織された際、日本から数百名もの申し込みがあり、日本人の熱心さがイギリス人を大いに驚かせたことがあります。ただ、1集につき7枚組のレコードを第5集まで全て揃えた人は、日本には何人もいなかったのではないでしょうか。やはりヴォルフの歌曲はとても難しく、日本ではなかなか一般的に親しまれるまでには至りません。
第1集はゲルハルト一人が歌い、第2集以降はさまざまな歌手が参加しています。
ゲルハルトはこの時すでに晩年を迎えていましたが、やはりその歌唱は誰よりも優れたものでした(ヴォルフ協会のゲルハルトについては、私の著書『名曲決定盤』に詳しく解説しています)。
一枚もののレコードでは、ポリドールから出ているシュルスヌスのものがかなり多く収録されています。
この人は声質がとても美しいので、ヴォルフの少し暗い歌でも聴き手を飽きさせず、面白く聴かせてくれます。
そのほかには、ポリドールのスレザークが歌う「隠栖」が名演です(50030)。
ビクターのゲルハルト盤も全体的に素晴らしいですが、「隠栖」はまた違った味わいがあります(DA1219)。また、ビクターのレーマンが歌う「アナクレオンの墓」もおすすめの一枚です(JE34、ドイツ歌曲集)。
古い話になりますが、ゲルハルトが名指揮者ニキシュのピアノ伴奏で吹き込んだヴォルフの「望郷」は名盤であり、25歳当時のゲルハルトの素晴らしさが今も偲ばれます。
これはI.R.C.C.および歴史的名盤集から発売されています。

アルベニス
(Isaac Albeniz 1860―1909)

 スペイン近代音楽界で最も優れた作曲家であり、ファリアやグラナドスの先輩として、現代スペイン音楽の先駆けとなりました。
まとまった作品はあまりレコード化されていません。
組曲「イベリア」が唯一の組曲作品です。

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