町の人々は、不思議な景色が見えなくなると家の方へ帰りましたが、少女だけは岩の上に立って、沖の方を一心に見つめていました。
そのうちに、一艘の赤い船が、こちらを指して漕いできたのです。
少女を迎えに来たのでした。
少女はそれに乗ると、ふたたび天国を目指して去っていきました。こうして、心やさしい天使は、この地上の世界に永遠の別れを告げました。
天国では、やさしい天使のお母さんが、愛しい我が子の帰りを今か今かと待ちわびていました。
三年間というもの、下界でつらい思いをしてきた我が子に、何か悪いことでも起きていないだろうかと、お母さんはずっと心配でたまらなかったのです。
小さな天使は、無事に帰ってくることができ、ふたたび懐かしいお母さんの姿を見ることができました。
お母さんは、我が子が以前と変わらず、心の美しく清らかなままの姿であることを知ると、本当にうれしくてたまりませんでした。
天国にいるお姉さんや弟の天使たちも、人間たちが暮らす下界がどんなところか知りたくて、みんなでこのやさしい天使を取り囲み、お話をねだりました。
小さなやさしい天使は、下界で見てきたことや知ったことを、一つひとつお話ししました。
そして、正直に生きているけれど、つらい境遇にある人々に、どうか幸福が訪れますようにと、心から願ったのでした。
――一九二四・一〇作――
初級翻訳・海からきた使い 第3話
小川 未明
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