初級翻訳・海底都市 第25話

海底都市

「ヤマ族の悪魔め! またやりやがった!」
「もう我慢ならん。海底都市へ進撃して、ヤマ族を皆殺しだ!」
「そこに立っているヤマ族の一人を、まず血祭りに上げて殺してしまえ!」
「そうだ、そうだ。やっつけろ!」

僕は背筋が寒くなりました。暴徒たちです。彼らの主張する理由がどれほど憤るべきものだとしても、彼らの姿はまさしく暴徒と呼ぶにふさわしいものでした。「君は、僕に何を求めているんだ?」
僕はたまらなくなって、すぐそばで僕の手首を強く握りしめているオンドリに問いかけました。
「あの通り、同胞たちは激しく怒り狂っている。
尋常なことでは収まらないだろうよ。
仲間たちは君の姿を見て、ますます刺激されてしまったのだ。
彼らは日頃の忍耐を捨て去り、ヤマ族の海底都市を襲撃しようと叫んでいる。
あれ、聞こえるだろう……」
オンドリに言われなくても、彼らの好戦的な叫び声は、さっきから僕の耳に痛いほど届いていました。
とんでもないことになってしまったものです。
「海底都市の人々は、自分たちの進めている工事が、こうして君たちトロ族に深刻な被害を与えていることを知らないんだ。
もし知っていたら、即座に中止するに決まっている。
だから君たちは海底都市を襲撃する前に、まず事情を説明しに行くべきだ。
僕が力になれるかは分からないけれど、その使者の一人になってもいい」
「遅い。もう遅いのだ。
われわれの同胞は、あれほどの怒りの中にいる。
君は……君は気の毒だが、われわれの出発を飾る最初の生け贄だ。
ひッひッひッひッ」
オンドリは歯をむき出しにして、僕の腕の骨が砕けんばかりの力で掴み、激しく揺さぶりました。
あれほど穏やかだったはずのオンドリまでが、すっかり正気を失ってしまったようです。
万事休すです。
僕の心は千々に乱れました。愛する人たちが住む海底都市を、トロ族の暴行からどうやって守ればいいのか。また、激昂したトロ族をどうにかして鎮める方法はないものか。
……そのとき、僕は一つの策を思いつきました。
タイム・マシーン。

最後の土壇場で思いついた僕の一策とは、一体どのようなものだったのでしょうか。
それは、すこぶる大胆で、かつ無茶な方法でした。
しかし、今残された唯一の道だったのです。
トロ族の群衆は、今まさに僕の体を八つ裂きにしようとしています。それに続いて大挙して海底都市へ押し寄せようとしている。
彼らの残虐性と復讐心が、筆舌に尽くしがたい惨劇を巻き起こすことは明白です。
こうなったら、どんなに険しい道であろうとも、それが唯一の道である以上、僕は突き進むしかありません。
「はははは、僕を血祭りにしようというのか」
僕はオンドリに向かって笑い返しました。
「そうだ。それによって、われわれは、まず同胞が流した血の最初の一滴を取り返すのだ。
あとは海底都市へなだれ込み、何十倍、何百倍もの血にして取り戻してやる……」
「はははは。たわ言もいい加減にしたまえ。
君たちは僕たち人類(ヤマ族)を劣等生物だと見下しているが、今に後悔することになるぞ。
われわれ人類は、君たちのように野蛮じゃない。文化の面でもずっと優れているんだ」
「うそだ。ヤマ族は貧弱な文化力しか持たない、劣等で未開な連中だ」
「それは認識不足というものだよ。
今に分かる。そのとき、驚かないようにするんだな」
「へっ、笑わせるな。何が認識不足だ」
「殺してしまえ。八つ裂きにしろ!」
「早く殺っちまえ。顔を見ているだけでも虫酸が走る」
「迷っている死霊のために、そのヤマ族野郎の頭を叩き潰せ!」
トロ族の群衆の興奮と怒りは、ついに頂点に達しました。
彼らはついに鬨(とき)の声を上げて、僕の方へ殺到してきました。
手に手に異様な凶器を持ち、目を剥き出し、歯を剥き出して、怒り狂った獣の群れのように僕を目がけて飛びかかってきたのです。
何条もの刃に貫かれ、僕はその場ですぐに惨殺されてしまいました――。

チリチリチリチリン。
警鈴の音が鳴り響いています。僕は目を見開きました。まぶしい金属壁が光を反射しています。
(ほう、ここは見覚えのあるタイム・マシーンの中だ!)
と、気がつくやいなや、金属壁の一部が四角く開き――そこが扉だったのです――外からこちらを覗き込む影がありました。
「あッ、君は……」
覗き込んできた男こそ、辻ヶ谷少年でした。僕をこのタイム・マシーンに入れてくれた、同級生の辻ヶ谷君だったのです。
「おう、君。もういいだろう。出てきたまえ」
「いやだ! 今が一番大事なときなんだ。もう一度二十年後の世界へ僕を戻してくれ。君も知っているだろう、僕は今、トロ族に殺されて……」
「何を言っているんだ。うわごとはそのくらいにして、こっちへ出てきなよ。足が動かないなら手を貸してやろうか」
「だめだ、だめ。絶対に下りない! ねえ君、頼むよ。今、非常に重要なところなんだ。僕がたとえ何十回ここへ戻ってきても、僕がいいと言うまでは、君は僕を二十年後の世界へ何度でも送り込んでくれ。そうしないと、わが人類は一大事にさらされることになるんだ。いいかい、何度でも僕を、二十年後の世界へ追い返してくれ!」
僕は泣き出しそうな声で辻ヶ谷君に頼み込みました。
なにしろ僕は、トロ族の暴徒たちに殺されたに違いありません。死ぬと同時に、僕は元の世界へ戻ってきて、タイム・マシーンの中に自分の体を発見したのです。
すべては、僕の予想した通りでした。それなら僕は、かねて決めていた計画通りにやり抜くだけだ。
これから何度でもトロ族の暴徒たちの前に姿を現して、彼らを驚かせ、どこまでも説得し続けてやる。
「よーし、そんなに君が言うなら、また二十年後の世界へ送ってやるよ。でも、どんなことが起きても、僕は知らないからな」
辻ヶ谷君はそう言うと、扉に手をかけました。
「ありがとう、ぜひ頼む。……いいかい、僕がもういいと言うまでは、僕が何度ここへ戻ってきても、二十年後の世界へ追い返してくれよ」
「よし、分かった。君の望み通りにしてあげるよ」
そう言うと、辻ヶ谷君は扉をパタンと閉めました。
それから、いつものようにタイム・マシーンが動き始めました。
あたりがぼんやりと霞みます。
そしてしばらくすると、また別の音が聞こえてきました。
「ひっひっひっひっ。見やがれ。とうとう八つ裂きにしてやったぞ」
「血祭りの第一号だ。ヤマ族め、思い知ったか。悔しかったらもう一度生きてみろ」
僕は今だ、と思いました。
僕はむくむくと起き上がると、大声を張り上げました。
「あわててはいけない。僕は死んでいないのだ。オンドリ、僕が見えるか!」
僕はそばにいたオンドリの肩を叩きました。
そのときのオンドリの驚いた顔といったら!

不死身

「僕はまだ死んでいないぞ。よく見たまえ」
僕はオンドリの腕をつかんで、強く揺さぶりました。
「おやっ。まだ死ななかったのか」
オンドリは、僕がまだ生きていることをようやく理解したようです。
「この野郎はまだ生きているぞ。これではまだ血祭りが成立しない!」
オンドリは、前に集まっているトロ族たちを煽り立てました。
さっきまでは平和を愛するような顔をしていたのに、今はすっかり様子を変えて、煽動者になっています。

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