初級翻訳・潜航艇「鷹の城」 第25話

小栗 虫太郎

機関室のドアを開けてみてください……」

そう言われて、胸をドキドキさせながらウルリーケ夫人がドアを開けた瞬間、あまりの衝撃と恐ろしさに、彼女は頭がクラクラしてその場によろめいてしまいました。

そこには、天井の梁(はり)にロープをかけ、まるで大きな振り子のように、ふんわりと揺れているものがあったのです。

ああ、なんということでしょう! この一連の恐ろしい事件を引き起こした「艇長フォン・エッセン」の正体は、ウルリーケ夫人のたった一人のかわいい娘、朝枝ちゃんだったのです!

法水は、ショックのあまり激しく震えているウルリーケの肩に、そっと優しい手を置いて、静かに語りかけました。

「しかし、私がどうして、朝枝ちゃんが犯人だと気づいたか分かりますか?

それはほかでもない、あの『アマリリスの植木鉢』がヒントだったのです。

普通、心の健康な人が見る夢は、現実離れしたデタラメなものになりがちですが、逆に心に病を抱えている人の夢は、とても現実的でしっかりした内容になると言われています。もし、その二人の『現実』と『夢』がぴったり一致したとすれば、そこには、何か一つの共通する原因があるはずなのです。

つまり、あなたの見た夢と、心に重いこだわりを抱えていた朝枝ちゃんの強い思いが、ぴったり一致していたのですね。あの『アマリリスのつぼみが、どうか開かないでほしい』という願いは、花びらがダラリと垂れ下がる形が、あの不気味な油絵に描かれた『おびえるような赤い唇』にそっくりだったからなのです。

もちろん、朝枝ちゃんもいつの間にか、あの秘密の隠れ場所を見つけ出していました。ですが、それがどうして、これほどまでに恐ろしい事件を引き起こしてしまったのでしょうか。

あなたが心の中で、あの憧れの艇長(フォン・エッセン)を深く愛し、思い焦がれる声を聞くうちに、まだ子供だった朝枝ちゃんも同じように強い影響を受け、まだ見ぬ艇長に対して、胸いっぱいの憧れを抱くようになったのです。しかし、ついにあの秘密の手紙を盗み見てしまったとき、彼女の心の中に、暗くおそろしい心の闇が、もくもくと立ちこめてしまいました。

なぜなら彼女は、自分の母親であるあなたとライバルになり、あなたを罠にはめて陥れてでも、幻の存在である艇長を自分だけのものにしようとしたからです。

自分の夢をどうしても叶えたいという、その強すぎる思い――。それこそが、八住を殺害し、そして実の母親であるあなたを、一生消えない恐ろしい罠へと追い詰めようとした原因だったのです」しかし、あのアマリリスの奇蹟は、父親のひたむきな愛情の中から生まれたものなのですよ。

八住は毎晩、夜が明ける頃になると、不自由な体を無理して押しては花屋へと向かい、まだ蕾のアマリリスを買ってきては、以前のものと取り換えていたのです。

そして、前夜まで飾っていた花は、防波堤から海の中へと投げ入れていたのですが、その際に彼が心覚えとして印をつけたものが、貴女もご存知の、まるで火術の暗号のような形だったのです。

ところが悲しいことに、目の見えない人が描く直線というものは、腕の回転を軸にして少しずつ曲がっていってしまうものなのです。そのため、八住は毎日、防波堤との距離がどんどん遠くなっていることには気づかず、そこが岬の角ではないかという勘違いをしてしまったのですね。

さあ、夫人。もう一度「鷹の城」を潜航させて、防波堤の下の海底へ向かいましょう。

先ほど朝枝は、その景色を見て天上の愛に心を打たれましたが、そこにはアマリリスが一面に咲き乱れていて、あの重たげな花びらが、打ち寄せる波の中でこう囁いているのが聞こえるはずですよ――「あれは父の愛なのだ」と。

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