三郎爺

スポンサーリンク
三郎爺

初級翻訳・三郎爺 第1話

一今からもう、六十七、八年も昔――まだ嘉永という年号だったころのお話です。江戸や上方の都会の人たちからは、「世界の果てか、毛むくじゃらの荒ぶる蝦夷(えぞ)が住んでいる場所」くらいに思われていた奥州(おうしゅう)。その草の生い茂る野原の端や、...
三郎爺

初級翻訳・三郎爺 第2話

とはいえ、彼の持つ同情心や正義感も、まだまだとっても荒削りなものです。心の勉強をして立派に磨き上げられた道徳なんかじゃなく、子どもの体が持っているエネルギーのままに、衝動の赴くままに行動しているだけなのです。だから、ついさっきまで弱い子の味...
三郎爺

初級翻訳・三郎爺 第3話

まるでナメクジが這うような、いや、何と表現したらいいか分からないほどの、驚くほどゆっくりとしたスピードでのんびり辿っているうちに、いつの間にか気まぐれな別の考えが頭の中にフワフワと入り込んできそうになってしまいます。その脱線しそうな頭を「こ...
三郎爺

初級翻訳・三郎爺 第4話

主人は親切な人だし、仕事は楽だし、手当てはしたいだけ出来るし、彼にとってはこの上ない処であるべきはずなのだが、ただ一つのことが、やがて彼をそこからも飛び出させてしまった。いくら下男でも、薬草刻みをするからには、医術の初歩を知らねばなるまいと...
三郎爺

初級翻訳・三郎爺 第5話

お金の使い方も、「まあ、入ってきたら入ってきたままでいいや、出ていくものは勝手に出ていけ」という調子で、全然ケチケチしません。ほかの人のようにゴマをすったりお世辞を言ったりも絶対にしませんでした。自分の思ったことを、頭に浮かんだままの言葉で...
三郎爺

初級翻訳・三郎爺 第6話

七彼の山沢さんに対する愛情は、相手が「あの山沢さんだから」という理由だけで無理やり抱いているものでもなければ、主人と召使いの間によくありがちな「まあ、めぐり合わせだから仕方がないか」というあきらめからくるものでも、もちろんありません。彼自身...
三郎爺

初級翻訳・三郎爺 第7話

そればかりか、実際に足元を手探りしながら進んでいた三郎は、思わず「ハッ」と息をのむほど、気味の悪いものを見てしまいました。もしあと半歩でも先へ進もうものなら、二度と「今日(こんにち)様」を拝むことはできなかったでしょう。足元の石が突然ポッキ...
三郎爺

初級翻訳・三郎爺 第8話

「下小屋(したごや)」というのは、現場のすみに建てられた小屋のことで、見回りに来た人がひと休みしたり、道具をしまったりする場所をかねていました。女房のおまさも、そうすれば毎日ごはんを運ぶ心配がなくなってラクちんだと思ったので、「それがいいわ...
三郎爺

初級翻訳・三郎爺 第9話

5、6年前までは10日くらいの徹夜続きでも居眠りさえしなかった人なのに、いざ弱り出すと案外もろいもので、70歳くらいになっていた老母親がまだシャンシャンと元気で動き回っているうちに、山沢さんは口もスムーズに利けなくなってしまいました。あたり...
三郎爺

初級翻訳・三郎爺 第10話

日頃の借金もみな返してくれたので、なんと三十四俵――彼らの言葉で言うところの「十七駄」もの米を、町の米屋へ預けることになりました。もちろん、その重要な仕事を任されたのは彼でした。しかし、昔ひとたび鐘のようにボーンと鳴り響いたあの男は、どこま...
三郎爺

初級翻訳・三郎爺 第11話

「お前さんのその太い胆っ玉は、いったいどこへいっちまったんだ!そんなことでは、山沢さんに申し訳が立たないじゃないか!」それは非常に愛情がこもっていながらも、同時にとても厳しく引き締まった声だったそうだ。その瞬間、彼はまるで、亡くなった旦那様...
スポンサーリンク