銀河まつり

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吉川 英治

初級翻訳・銀河まつり 第1話

はしがき『人国記』という本によると、昔から信州(長野県)の人は争いごとが好きだといわれています。これは、他の土地の人には見られないほど情熱的でたくましい、とほめる意味にもとれますが、実は「心が狭い」という意味にも聞こえます。また、この土地は...
吉川 英治

初級翻訳・銀河まつり 第2話

そもそも、戸狩の百姓たちに火薬の作り方を教えたのが、村上義清に仕えていた兵助の先祖だといわれており、それが三百年の時の流れの中で、まるで雀が蛤に化けるような例え通り、ほとんど農業を捨てて本職の花火職人に成り代わってしまったというのが、この土...
吉川 英治

初級翻訳・銀河まつり 第3話

七之助と」彼女はあわてて隣席の者の前へ逃げました。「黒田様、おひとつ」そして席順に次へ滑っていき、「長沼様、林様、いかがでございますか」後ろの方で慎吾がまだ何か言っているのを聞こえぬふりをして、急いで父の兵助の前まで来ると、訴えるように、「...
吉川 英治

初級翻訳・銀河まつり 第4話

硝石なんかは皆、イギリス製を買い込んでいると言っていたぞ」「向こうは向こう、こっちはこっちだ。何も真似をするこたあねえ。第一、俺は毛唐(けとう)のものは嫌いだ。俺の仕事は日本流でいくんだ」「こいつ、呆れ果てた無知なやつだ。じゃあ、どうしても...
吉川 英治

初級翻訳・銀河まつり 第5話

空屋敷だから落ち着けるのでね」「そんなことをすれば、村の人が何と言って噂するか分かりません」「分かってもかまわないだろう。いずれ分かってくることになる、そなたと拙者の仲なのだから」肩に手をのせて、耳に触れるように囁いた慎吾は、お芳が無反発で...
吉川 英治

初級翻訳・銀河まつり 第6話

その間に、慎吾は下げ緒をほどいて袖をたくし上げました。おろおろと戸惑うお芳に顎をしゃくって合図し、刀の柄糸を何度も締め直しましたが、次第に自分の胸の鼓動が高まってくるのを感じていました。待つ時間はだいぶ長く感じられました。彼は二つ三つと、腕...
吉川 英治

初級翻訳・銀河まつり 第7話

二人の手伝いが休んだので、慎吾も仕事小屋でぼんやりしていたが、一昨日、窓から投げ込まれていったお芳の手紙を出して読み直していた。彼女の手紙は、その前のものよりも、自分への好意をだんだん明らかにしていると慎吾は思った。二人の男の知能や身分を比...
吉川 英治

初級翻訳・銀河まつり 第8話

――この前、気に食わない慎吾の顔を見て、ふいに止めてしまった陣屋跡の古家――そこへ来たのである。頬被りをすると、すぐに犬のように這って、縁の下へ潜り込んだ。いつかの時は、この不格好な姿を慎吾に見られるのが嫌で引き返したのかもしれない。土台の...
吉川 英治

初級翻訳・銀河まつり 第9話

七は煙草を吸いながら、戸狩の若者七人ばかりと一緒に、草むらに腰を据えていました。いるな。来たな!両方の感覚が、無言のうちに研ぎ澄まされます。慎吾は少し硬い態度のまま、一同と一緒に歩み寄って声をかけました。「七、たいそう早かったな」「おいでな...
吉川 英治

初級翻訳・銀河まつり 第10話

「さあ、お芳の番だ」七の目は蛇のように水面から丘を見つめつつ、力強く泳いだ。しかし、彼の影が丘へ近づくと、そこから一艘の小舟が急流に乗って下流へ離れていった。七もすぐに激流へ身を任せた。舟はやがて浅瀬の砂利に底を噛まれて、棹(さお)が利かな...
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