吉川 英治

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吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第99話

「なに、人がおぼれていると?」「やッ――また沈んでいった、木隠、木隠、早くこっちへ松明をかざしてみてくれ」「待て、ただいままいるから」と龍太郎は、また二つ三つの岩をとんで、忍剣のそばへ寄っていった。焔を高くささげながら、じッと、あわだつ水面...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第98話

ずいぶん久しく会わなかったのう」「では、やっぱりお師匠さまでございましたか。ああ、お姿を見たいにも、竹童めは、何の罰でか、このような盲目となってしまいました」「竹童、目がつぶれたことを、おまえはそんなに不自由だと思うか」「はい、伊那丸さまの...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第97話

あたりをさぐりながら外へ出ると、夜は四更(しこう)の闇の中だが、空には女菩薩(にょぼさつ)の瞳にも似た、うるわしい春の星がまたたいている。 鳥の巣のように乱れた髪、土にまみれた肩や肘、そして血のにじんだ素足――。 それらあわれな姿をさらす竹...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第96話

「わあッ、化け物ッ!」 蛾次郎は持っていた芋の串をほうりだすと、逃げるわ逃げるわ、夢中で逃げ出した――一心不乱に、明かりのあるほうへ駆け出した。 夜になっても、今宮の境内はにぎやかであった。 そこで蛾次郎は、はじめてホッと人心地にかえった。...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第95話

若君のお調べに対して、少しでも曖昧なことを言うと、こうして痛い目を見るぞ」 もう一度、ドンと鉄杖を食らわせます。「ううむ、フフフ、痛うございます、痛うございます!」「痛いなら、本当のことを話せ」「も、申し上げます。間違いなく和田呂宋兵衛の手...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第94話

その二人は、まるで手をつなぐかのように階段の上へ大きく腕を広げると、声を張り上げました。「待て! 酔いどれめ!」「ここを通すことはまかりならぬ!」どちらの声も、迫力に満ちていました。「な、なんだとッ」頭を抑えられた狼のような男たちは、ふんぞ...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第93話

すると泣き虫蛾次郎は、少し気取って例のボロ鞘(ざや)の刀を差し直し、松の小道を通って麓(ふもと)の方へ歩き出しながら、道すがら山椿の葉を一枚もいで唇にくわえ、木の葉笛で調子をとりつつ、妙な歌を叫び出しました。ピキ、ピッピキ トッピッピ竹童ち...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第92話

すると、四人が橋を渡りおえるとともに、いまがいままで、さえざえと夜明けの光をたたえていたあたりは、また、どんよりとしたおぼろ月夜となり、人声や車の雑音もぱったり聞こえなくなった。「や、や? ……」立ちどまっていると、ものかげから、ひとりの男...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第91話

「策はないか! なにかいい名案はないか!」呂宋兵衛はしばらく額を押さえて考え込んでいましたが、やがて決断したのか、「うむ、どうしても今夜を逃してはならん。昌仙、耳を貸せ……」あの大きな碧い瞳をギョロリと光らせ、丹羽昌仙の耳元で何やら計略をさ...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第90話

そして菊亭殿の奥のようすをジッと聞きすましているらしかったが、ひろい大殿作りの内からは、あれきり鼓の音も人声ももれてはこず、ただ花橘(はなたちばな)や梅の香に、ぬるい夜風がゆらめくのを知った。二駆けるほどにいくほどに、早足の燕作は、さっさつ...
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