吉川 英治

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吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第129話

渋面を作った呂宋兵衛と、苦りきった菊池半助が、手足をもがれた味方や死骸の中に立ち尽くし、ぼんやりと朝の光を眺めていました。敵はどうした! 敵はどこへ行った!太陽が高く昇りましたが、その行方はついにつかめませんでした。家康の不機嫌な顔が思いや...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第128話

だが、死ぬ前にまだ臣下として残された役目がいくつもあるはずだ。都田川にさらされた御首級(しるし)を奪い返し、清らかな場所へ隠して差し上げること。また、刑刀を振るった菊池半助を討ち取り、龍太郎や忍剣の霊を少しでもなぐさめることも友情というもの...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第127話

「斬られた首が本物の伊那丸なのか、今見ている首が本物なのか、何が何だかさっぱりワケがわからなくなっちまいました」「そりゃもちろん、あっちの連中が偽物だろう」「えっ、どっちがですか?」「矢来の外に立っている連中だよ」「すると、生きているほうの...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第126話

点々と飛び散った返り血が、まるで夜叉のように彼の腕や袖を彩っています。哀しく静まり返った夕方の雲が、矢来の上におもく垂れ込めて、一瞬、そこを吹く風さえピタリと止まりました。 ああ、ついに間に合わなかったのか。小幡民部、山県蔦之助、巽小文治、...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第125話

いや、たとえ馬と共に血を吐くことになろうとも、それまでに三方ヶ原へ駆けつけねばならぬ!」「おお、もちろんそのくらいのこと、この際なんでもありません! して、着いた時には?」「手段を選んでいる時間はない。ただ群衆に紛れて、一瞬の隙に矢来(やら...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第124話

ただ静かに、月と星が黙りこくっているだけです。ふたたび、狛笛の音が高く澄んで響きました。そして咲耶子が、自分の吹く音色にうっとりとして、周囲のことも忘れかけたその時でした。さらにすさまじい一陣の疾風が、月の光をかき分けて、小太郎山の真上を「...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第123話

だから、その顔を好く者は深く親しみ、忌み嫌う者はまたひどく嫌うのでした。家康は珍しく酒宴を開いていました。多くの近侍や旗本を相手に、和やかな座談を楽しんでいます。それが飽きると、鼓の名人である大倉六蔵に鼓を打たせて聞き惚れていました。そこへ...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第122話

常人には到底不可能なことを成し遂げるために、竹童は心にもない大道芸人の真似事をしているのです。見ている小姓たちは面白がっていますが、竹童にとっては、涙が出るほど切ない芸なのでした。二「さあ、それから、それから!」輪になって取り囲んだ少年たち...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第121話

「おお、鷲のごちそう!」と一同に見せて笑わせながら、万千代はその餌を猛禽の鼻先へ持っていきました。そしてくちばしのそばへぶらぶらとさせましたが、鷲は横を向いて、その匂いすら嗅ごうとしません。業を煮やした万千代は意地になって、「こら、食え、食...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第120話

ですがおじさん、この広い原っぱは、いったい何という場所なんでしょうね」と尋ねました。「おまえ、そんなことも知らずに歩いているのか。子供というのは無知なものだなぁ。ここはおまえ、甲斐の武田信玄と家康さまが鎬(しのぎ)を削った有名な戦場、そう、...
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