壺井 栄

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壺井 栄

初級翻訳・大根の葉 第1話

一 健ちゃんのお母さんは、今夜また、赤ん坊の克子(かつこ)ちゃんを連れて神戸(こうべ)の病院へ行くことになっていました。健ちゃんはどうしてもお母さんについて神戸へ行きたいと思ったのですが、お母さんはどうしても「いいよ」と言ってくれません。部...
二十四の瞳

初級翻訳・二十四の瞳 第45話

それは、小学六年生のときの学芸会で、最後のプログラムとして彼女が独唱し、それによって彼女の人気を一気に高めた思い出の唱歌だった。早苗はたまらず、マスノの背中にしがみついて声を上げて泣いた。
二十四の瞳

初級翻訳・二十四の瞳 第44話

なあ先生、わたし、あの弁当箱、戦争中は防空壕にまで入れて守ったんですよ。あの弁当箱だけは、娘にもやりたくないんです。わたしの宝でしたの。今日もお米を入れて持ってきたんですよ、先生」 それを聞くと吉次が、あ、そうじゃ、と言いながら、国民服のわ...
二十四の瞳

初級翻訳・二十四の瞳 第43話

どう?」「わあっ、うまい、うまい」並木がまたさきに歓声をあげ、大吉もさんせいらしい笑顔でうなずいた。日曜日は朝から曇っていた。ふりさえしなければ、一本松から一里の道を歩くにはかえって都合がよかった。歓迎会は一時からというので、十二時にはもう...
二十四の瞳

初級翻訳・二十四の瞳 第42話

お母さんの教え子の墓まいりなんだから。いっしょに、きてもいいけど」なんだか不服そうなおおよしを残して、二人は並んで歩きだした。「まあ、ノッポになったことミサ子さん。あんた一番ちっちゃかったでしょう」「いいえ、コトやんです。そのつぎがわたしで...
二十四の瞳

初級翻訳・二十四の瞳 第41話

「先生、もしも自転車をお買いになるんでしたら、ご相談にのりますから」それがどういう意味なのか聞き返す暇もなく、大吉の舟は急にスピードを上げて近づいてきた。陸地の影に入って、風が止んだのだろう。大吉は母親だけにちらっと笑いを見せ、そっぽを向い...
二十四の瞳

初級翻訳・二十四の瞳 第40話

彼女は小さいときに亡くなった姉のことなどおぼえていなかったのだ。それで、古い家庭のことをきくのはもうやめた。西口ミサ子の娘は、勝子(かつこ)といった。そのほか三人の女の子のなかに、赤い新しい洋服を着た川本千里(かわもとちさと)という子どもが...
二十四の瞳

初級翻訳・二十四の瞳 第39話

これほど弱り、まわりの人たちからいたわられている彼女が、ふたたび教職に戻ることができたのは、陰で早苗(さなえ)が一生懸命尽力してくれたおかげだった。早苗はいま、岬の本村(ほんむら)にある母校にいた。「四十になるんだぞ。現役の先生でいても、年...
二十四の瞳

初級翻訳・二十四の瞳 第38話

お母さんがそう言ったとき、大吉にはすぐにはその意味が飲み込めなかったが、だんだんとその本当の意味がわかってきた。近頃では、村の柿の木も栗の木も、完全に熟れるまで実が残っていたことは一度もなかった。みんな食べ物が足りなくて、待ちきれなかったの...
二十四の瞳

初級翻訳・二十四の瞳 第37話

少しは人の気持ちも分からないなんて、馬かかしら……」そう言って、大吉の額をツンと指先で強く押した。その勢いでひょろひょろと倒れかかった大吉は、腹を立てて母につかみかかっていった。しかし、母の目に大涙がぽろぽろとこぼれ落ちそうになっているのを...
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