初級翻訳・あたらしい憲法のはなし 第4話

あたらしい憲法のはなし

あたらしい憲法は、この基本的人権を、侵すことのできない永久に与えられた権利として記しているのです。
これを基本的人権を「保障する」というのです。
しかし基本的人権は、ここにいった自由権だけではありません。
まだほかに二つあります。
自由権だけで、人間の国の中での生活がすむものではありません。
たとえばみなさんは、勉強をしてよい国民にならなければなりません。
国はみなさんに勉強をさせるようにしなければなりません。
そこでみなさんは、教育を受ける権利を憲法で与えられているのです。
この場合はみなさんのほうから、国に対して、教育してもらうことを請求できるのです。
これも大事な基本的人権ですが、これを「請求権」というのです。
争いごとのおこったとき、国の裁判所で、公平にさばいてもらうのも、裁判を請求する権利といって、基本的人権ですが、これも請求権であります。
それからまた、国民が、国を治めることにいろいろ関係できるのも、大事な基本的人権ですが、これを「参政権」といいます。
国会の議員や知事や市町村長などを選挙したり、じぶんがそういうものになったり、国や地方の大事なことについて投票したりすることは、みな参政権です。

みなさん、いままで申しました基本的人権は大事なことですから、もういちど復習いたしましょう。
みなさんは、憲法で基本的人権というりっぱな強い権利を与えられました。
この権利は、三つに分かれます。
第一は自由権です。
第二は請求権です。
第三は参政権です。
こんなりっぱな権利を与えられましたからには、みなさんは、じぶんでしっかりとこれを守って、失わないようにしてゆかなければなりません。
しかしまた、むやみにこれをふりまわして、ほかの人に迷惑をかけてはいけません。
ほかの人も、みなさんと同じ権利をもっていることを、わすれてはなりません。
国全体の幸福になるよう、この大事な基本的人権を守ってゆく責任があると、憲法に書いてあります。

八 国会

 民主主義は、国民が、みんなでみんなのために国を治めてゆくことです。
しかし、国民の数はたいへん多いのですから、だれかが、国民全体に代わって国の仕事をするよりほかはありません。
この国民に代わるものが「国会」です。
まえにも申しましたように、国民は国を治めてゆく力、すなわち主権をもっているのです。
この主権をもっている国民に代わるものが国会ですから、国会は国でいちばん高い位にあるもので、これを「最高機関」といいます。
「機関」というのは、ちょうど人間に手足があるように、国の仕事をいろいろ分けてする役目のあるものという意味です。
国には、いろいろなはたらきをする機関があります。
あとでのべる内閣も、裁判所も、みな国の機関です。
しかし国会は、その中でいちばん高い位にあるのです。それは国民全体を代表しているからです。
国の仕事はものすごくたくさんありますが、これを大きく分けてみると、だいたい三つの種類に分けることができます。
その一つめは、国のいろいろな決まりごと(規則)を作る仕事で、これを「立法(りっぽう)」といいます。
二つめは、みんなの争いごとを公平にさばいたり、悪いことをした人に罪があるかないかを決めたりする仕事で、これを「司法(しほう)」といいます。
ふだん私たちが「裁判(さいばん)」と言っているのはこれのことです。
三つめは、この「立法」と「司法」をのぞいた、そのほかのいろいろな仕事をまとめたもので、これをひとまとめにして「行政(ぎょうせい)」といいます。
国会は、この三つの仕事のうち、どれを担当しているかというと、「立法」の仕事をうけもっている機関なのです。
「司法」は裁判所がうけもっています。
「行政」は、内閣(ないかく)と、その下にあるたくさんの役所たちがうけもっています。
国会は「立法」という仕事を担当していますから、国中の決まりごとは、ぜんぶ国会が作ることになります。
国会が作る国の決まりごとのことを「法律(ほうりつ)」といいます。
みなさんも、「法律」という言葉をニュースなどでよく耳にするでしょう。
しかし、国会で法律を新しく作るのには、いろんな正しい手続きが必要なので、あまり細かすぎる決まりごとまでぜんぶ法律で決めることはできません。
そこで憲法は、ある場合には、国会以外のほかの機関――たとえば内閣などが、国の決まりごとを作ることをゆるしています。
これを「命令(めいれい)」といいます。
だけど、国の決まりごとは、できるかぎり国会が作るのが一番よいのです。
なぜなら国会は、国民が自分たちの手でえらんだ代表者(議員)が集まっている場所であり、国民のみなさんの意見が一番よく分かっているところだからです。
だから、あたらしい憲法は、「国の決まりごとは、ただ国会だけが作ってよい」と決めました。
これを、国会は「唯一の立法機関(ゆいいつのりっぽうきかん)である」というのです。
「唯一」とは、ただ一つだけで、ほほかにはないという意味です。
立法機関というのは、国の決まりごとを作る役目を持った組織ということです。
ですから、国会以外のほかの機関が国の決まりごとを作ってもよい場合は、憲法の中で一つひとつ細かく決められているのです。
また、国会が作った国の規則、つまり法律の中で、「これこれの細かいことは『命令』で決めてもいいですよ」とゆるす場合もあります。
国民がえらんだ代表者たちが、国会に集まって、国民を治めるための決まりごとを作る――これこそが民主主義の正しいやりかたなのです。
しかし国会には、国の決まりごとを作る仕事のほかに、もう一つとても大事な役目があります。
それは、内閣や、その下にある国のいろんな役所たちが、ちゃんと正しく仕事をしているかを見はって、監督することです。
これらの役所たちの仕事は、さきほどお話しした「行政」というはたらきですから、国会は「行政」の仕事を監督して、まちがいがないようにチェックする役目もしているのです。
これによって、国民の代表者たちが、国の仕事がちゃんと行われているかを見はりつづけることができるわけです。
これもまた、民主主義の国の大切な治めかたなのです。
日本の国会は、「衆議院(しゅうぎいん)」と「参議院(さんぎいん)」という、二つのグループ(お部屋)からできています。
その一つひとつを「議院(ぎいん)」といいます。
このように、国会が二つの議院からできている仕組みのことを「二院制度(にいんせいど)」といいます。
国によっては、議院が一つしかないところもあり、それを「一院制度(いいんせいど)」と呼びます。
しかし、世界中の多くの国の国会は、日本とおなじように二つの議院からできています。
国のたいせつな仕事は、この二つの議院が話し合っていっしょに決めるのです。
それでは、どうして二つの議院が必要なのでしょうか?
みなさんは、野球やそのほかのスポーツで言う「バック・アップ」という言葉を知っていますか?
一人の選手がボールをあつかっているときに、もう一人の選手がすぐ後ろにまわって、ボールを落としたりしないようにしっかり守ることを「バック・アップ」と言います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました