しかもこれじゃあ届かない! どうしてしっかり戸締まりなんかしたんだろうね!
はてさて、そこでまた見つけたのがちっちゃなパンケーキ。
こんどは焦げあとが「たべて」って言葉になってて。
なのでさっそく食べて、全部飲みこんだ。
そのあとどうなったと思う? うん、思いもよらないこと! ふふふ、実はね。
アリスはおっきくおっきーくなっていってね。
背なんか前よりも高くって! 子どもよりもおっきく! 大人よりもおっきく! ぐんぐん、にょきにょきと! 絵を見てごらん、こんなに伸びちゃってさ!
いったいどっちがいいと思う? ネコちゃんくらいの大きさのちっちゃなアリスと、天井に頭をぶつけっぱなしのおっきなアリス。
3 なみだまり
もしかしてアリスが楽しんでるとか思ってる? 小さいパンケーキを食べて、気づいたらとんでもなくおっきくなってたからって。
そりゃあ難なくガラステーブルから鍵を拾えるし、ちっちゃなドアも開けられるけど。
うん、そりゃあできるとも。でもね、通り抜けることもできないのに、ドアを開けてどうなるっていうの? ひどいなんてもんじゃないよ、かわいそうに! 頭を床の近くまで低くすれば、片目でなんとか覗けるくらいなんだけど、できるのはそれだけ。
こんなに大きくなってしまうと、座り込んで、胸が張り裂けそうなくらい大声で泣くのも無理のない話さ。
えーん、えーん、と泣いて。
そのうち涙が広間の真ん中にこぼれていって、川が流れるみたいになって。
あっという間に大きな涙だまりができて、広間の半分がひたっちゃった。
もうどうしようもないところだったんだけど、そこへなんと、たまたま白ウサギがご主人様のもとへ向かう途中、この広間を通りかかったんだ。
めいっぱいめかしこんでて、片手には白い革の手袋一組、もう片手には小さな扇。
ぶつぶつ独り言を言っててね、「あいや、ご主人様、ご主人様! お待たせするなんて、なんていやなことだ!」
なのにさ、アリスに目もくれずで。
そこで口を開けて「もし、よろしければ――」なんて言うと、天井から声がしているみたいで。なにせ頭がたかーいところにありましたからね。
するとウサギはものすごく怯えて、手袋と扇をとり落として、全速力で逃げてった。
そこで、ほんっとへんてこなことになって。
アリスが扇をとりあげて、自分で扇ぎだしたんだ。
するとご覧あれ、みるみる小さくなって、1分もしたらネズミくらいの大きさになった!
ここでさし絵を見てね。
次に起こったこと、もうわかるよね? ほんとに海みたい、ね? でも間違いなくこれはさっきの涙の池――全部アリスの涙でできたものなんだ!
そういうわけでアリスは池にぼちゃん。
ネズミもぼちゃん。
いろんなのが一緒になって泳いでる。
この絵の泳いでるアリス、かわいくない? 水面の下あたり、アリスの青い靴下見えるよね?
でもこのネズミ、どうしてこんなに慌てて泳いで、アリスから離れようとするのか。
はて、そのわけは、アリスがイヌやネコの話をしだしたからなんだ。
ネズミはいつだって、イヌやネコの話なんか嫌だからね!
きみが自分の涙でできた池を泳いでるとして、そこで誰かがお勉強とかお薬のことを話し出したら、やっぱりめいっぱい泳いでどこか行きたくならない?
4 どーどーめぐり
アリスとネズミが涙の池からあがると、やっぱりずぶ濡れで。
たくさんいたへんてこな生き物たちも同じで、みんな一緒に落ちててね。
そこにいたのはドードー(まんまえにいる大きな鳥で、杖によっかかってるね)、それとアヒルにインコ(アヒルの真後ろで頭越しに見てるやつね)、あと子供ワシ(インコの左側にいるやつ)とかそのほかいろいろ。
さてところでそのみんなだけど、どうやって体を乾かしたものかさっぱりわからなくって。
けれどもドードーが――頭のいい鳥だから――どーどーめぐりをするのがよろしい、なんて言ってね。
いったいなんのことだと思う?
わからない? だったらきみはまだまだ子供だね! じゃあよおく聞いてね、すぐにちゃんとわかるから!
まずは走るコースを作ること。
その形は丸なんだけど、とりあえずちゃんと丸になってひとつにつながってればなんでもいい。
とにかくやる人はコースのあちこちに立って、くっつきすぎなければなんでもよくて。
しかも「いちについて、よーいどん!」なんて掛け声もいらなくて、みんな好きなときに走り出せばいいし、好きなときにやめていい。
そこにいた生き物、アリスとみんなはぐるぐる走りっぱなしで、それを乾ききるまで続けたんだ。
で、最後にドードーがみんなの勝ちって言って、みんなご褒美がもらえることに!
もちろんアリスがご褒美をあげる役。
とはいえあげるほどのものもなくてね、たまたまポケットにドライフルーツがあったもんだから、ひとりひとつずつみんなに分けた。すると、アリスの分のごほうびが足りなくなってしまいました!
そこでどうなったと思いますか? あとアリスが持っていたのは、お裁縫の指ぬきだけ。
ほら、さし絵を見て。どうなったか分かるでしょう。
「こっちへ貸しなさい」とドードーが言いました。
そしてドードーは指ぬきを受け取ると、またアリスに返して、こんな言葉を添えたのです。
「この見事な指ぬきを、我らよりお受け取りくだされ!」というわけで、その場の生き物たちがパチパチ、わーわー大騒ぎ。
こんなへんてこな贈り物ってあるでしょうか? 考えてもみてよ。お誕生日プレゼントをくれる人が、きみのおもちゃ箱のところへ行って、そこにあるきれいなお人形をとりだして「はい、いい子だからこの素敵な誕生日プレゼントをあげよう!」なんて言うのと、まだ持ってない新しいものをくれるのと、どっちがいい?
5 トカゲのビル
さて次のお話は、白ウサギのお家でアリスがどうしたか。
覚えてる? ウサギが手袋と扇を落としたときのこと。アリスの声が空から聞こえてきたのかとびっくりしたんだよね。
だから手袋も扇もないままじゃあ、ご主人様のところへもうかがえない。そこで少ししてから探すために引き返したんだ。
ドードーとへんてこな動物たちがどこかへ行ってしまう頃には、アリスもひとりきりで辺りをうろついていてね。
で、ウサギさんはどうしたと思いますか? なんとアリスを自分の家のメイドさんと勘違いして、あれこれ言い付けだしたんだ!
「メリアン! 今すぐうちに行って、手袋と扇をとってくるでおじゃる! 急ぐでおじゃる!」
ひょっとすると、あのお赤いおめめは前があんまり見えないのかも。だってアリスとメイドさんは似ても似つかないんだよ? それでもアリスはとってもいい子だったから、ちっとも気を悪くせずに全速力でウサギのお家へ向かったんだ。
都合よくドアは開いていて。だってチリンチリンと呼び鈴を鳴らすことになったら、きっと本物のメリアンがドアを開けに来るからね。そうしたらアリスは中に入れてもらえない。それから運よく、本物のメリアンには会わないまま階段をとことこ登れた。
コメント