こどもべやの いとしご
ママの むねは
こどもが かけこむところ
こわい あぶない かなしい
まわりが まっくらなとき
ほらほら ねむっている
あのこから こえの ない
いのりの うたが きこえる
やすらかな こころの
こどもの キスは
くちびるから ながれでる
あいの しるし なんどでも
つたわる すてきな おもい
おんなのこの よろこびが
あふれそうなほど いっぱい
ゆめの ぶたいは いつも
しあわせな おうち
まえがき
(お母さまがたへ)
本当の話、『ふしぎの国のアリス』は5歳から15歳までのおおぜいの子どもたちに読まれてきました。
同じように、15歳から25歳の子どもたちにも。
それだけでなく、25歳から35歳の子どもたちにも。
さらに、まさかまさか。まだ元気いっぱいで、すれてもいない、あかぬけてもいない、あきらめきってもいない、生き生きした子どもたち。子どもの頃からわきあがる喜びの泉をそのままに欲しがる子どもたち。そんな、長年お話が語られぬまま、かたく閉ざされてしまいそうな「それなりの」お歳の子どもたちにまで読まれるとは。
そこで今回目指すのは(むちゃかな?)、0歳から5歳の子どもたちに読んでもらうことです。
読む? いや、違う! むしろ、ページをめくって、きゃっきゃと喜んで、端っこを折り曲げて、しわくちゃにして、キスしてほしいのです。
まだ読み書きのできない、えくぼのある小さな子どもたちに。
子ども部屋をゆかいなさわぎ声で、そしてその心の奥の奥を、安らかな幸せでいっぱいにしてほしいんです!
たとえば、昔知り合った子どもにこんな子がいました。女の子には、どんなものでもひとつでじゅうぶん。パンふたつ、オレンジふたつ、何かふたつってほしがっていると、きっと「がめつい」悪い子になっちゃうぞって、しつこく言い聞かされていたんです。そんな子が、ある朝ベッドで体を起こして、2本ある自分の小さなあんよをまじまじと見つめて、こうつぶやいたんです。
ふと、ばつが悪そうに、「まめちい!」と。
1890 イースターの時節に
1 しろウサギ
むかしむかし、アリスという女の子がいてね。とってもへんてこな夢を見たんだ。
いったいどんな夢だったか、ききたい?
さあて、これがはじめの場面。
しろウサギがすぐそばを大あわてで走っていくところ。アリスとすれちがいざまに足を止めて、ポケットから時計を取り出したんだよ。
そんなの面白くないって? よく見てごらんよ。ウサギが時計をポケットに入れて持ち歩いてるんだよ? そりゃあウサギだって、時計を持つならポケットに入れるってもんさ。
口にくわえたって持ち運べないしね。それに走り回るんなら、手が足りなくなるし。
あと、おめめが赤くない?(しろウサギって、みんなおめめが赤いと思うんだけど。)みみも赤いし、着ている上着はすてきな茶色。それにほら、ポケットから赤いハンカチがのぞいている。
ほかにも青いネクタイやら、黄色いチョッキとか、ほんとにとってもおしゃれでしょ。
「やんぬるかな!」とウサギさん。
「ちこくで おじゃる!」 いったいどこへ遅刻しそうなのかな?
うん、それはね、ごぜんさまのところなんだ。
(もうちょっとしたら、台所にいるその人の絵が出てくるからね。)ごぜんさまはね、いつもいらいらしているおばさまのこと。
ウサギさんは待たせたりしたら、ひどく叱られるって思っているんだ。
かわいそうに、これでもかってくらいびくびく。
(どんなにぶるぶる震えていたか、わかる? ちょっと本をゆすってごらん、右ひだりに。ほら、ぶるぶるしてる。)
だってね、ウサギさんは罰として首をちょんぎられるかもしれないんだよ。
ハートのクイーンがいつもやることなんだけど、腹を立てたらちょきん!(さしえはまたあとでね。)
といっても、その人はいつも「ちょんぎれ!」って言い付けるだけで、そうなると思い込んでいるけれど、実はだあれもそんなことしない。
はてさて、しろウサギが走り抜けていったんだけど、アリスはその先が気になってね。
だからついていったんだ。で、走って走っていると、いきなりウサギ穴におっこちちゃって。
ずっと、ずーっと落ちつづけてね。ぴゅーっと風が吹いて、このまま地球をまっすぐ突き抜けて、反対側の裏側まで出ちゃうんじゃないかって、アリスはそんな気がしてきました!
深くて深い井戸みたいなんだけど、お水はぜんぜんありません。
こんなところへ本当に落ちてしまったら、どんな人だってきっと死んじゃうでしょう。
でもほら、夢の中だから、落ちたってけがひとつないんです。
だって落ちていると思っているあいだも、本当は横になって、なんの心配もなくぐっすり眠っているだけなんですから!
それでもいつかは穴の底にたどりつくわけで、アリスはうずたかく積まれた落ち葉と枝の上へ、どすん。
けがひとつなくぴょんと起き上がると、またウサギのあとを追いかけたんだ。
こうしてアリスのへんてこな夢が始まったってわけ。
こんどしろウサギを見かけたらね、アリスちゃんみたいにへんてこな夢を見てみたらいいんじゃないかな。
2 アリス、おっきくなりすぎ
というわけでアリスは、ウサギ穴を落ちたあと、地面の中をえんえん走っていたんだけど、気がついたら急に大きな広間にいてね。まわりにはドアがいっぱい。
ところがどのドアも鍵がかかっていて、かわいそうなアリスは広間から出られない。
だからなんだか悲しくなってきちゃった。
それでもしばらくしてからテーブルのそばへ行きました。
全部ガラスでできていて三本足(さし絵では2本がはっきり、残りの1本がちらっと見えてるよね、わかる?)、で、そのテーブルの上にちっちゃな鍵があった! 広間をぐるりとまわって、これでドアがどれか開かないか試してみたんだけど。
かわいそうなアリス! その鍵、どのドアも開けられなくって。
でも最後にやってきたちっちゃなドア、するともう嬉しいのなんの、鍵がぴったりあったんだ!
そのちーっちゃなドアを開けて、しゃがみこんで中をのぞきこんだんだけど、なにが見えたと思う? もうとーっても素敵な広ーいお庭! そこに行きたくて行きたくて! なのにドアがちっちゃすぎるんだ。
体を押し込んでもとても無理。
きみがネズミの巣穴に入れないのとおんなじこと!
かわいそうにアリスちゃんは、しっかり戸締まりして、鍵をテーブルにもどしてね。
するとさっきまでなかったものがあるってことに気がついて(もう一度さし絵を見てね)、これいったい何だと思う? 小瓶だよね。ラベルがついていて、そこには「のんで」の文字。
そんなわけで、口をつけてみる。
するととっても美味しくて、あらためて一気飲み。
そのあと、もうへんてこなことになってさ! 思ってもみないことだよ。
ふふ、実はね。
アリスが小さく小さくなっていって、最後にはちっちゃなお人形さんくらいの大きさになったんだ!
そこでひとりごと。
「あら、この大きさなら小さなあのドアも、うまく通り抜けられてよ!」ってことで走りだす。
でもね、たどりついたドアは開かないわけで、鍵はテーブルの上。
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