一方、サンタクロースは、捕まったその晩からずっと元気がありませんでした。妖精たちが自分たちで考えてどうにかしてくれると信じてはいましたが、やっぱり心配なのか、不安そうな様子が時折、その優しげな目にちらちらと見え隠れしていました。プレゼントを待っている子どもたちががっかりするようなことになったらどうしよう、と考えてしまうのです。
悪魔たちは代わる代わるサンタクロースの見張りをして、身動きのとれないサンタクロースに酷い言葉をかけて、いじめることも忘れませんでした。クリスマスの朝がすっかり明けきったころ、ミンナテキーが見張りにやってきました。ミンナテキーの言葉は、ほかのどんな悪魔たちのものよりも、心にぐさりと突き刺さるものでした。「おいサンタ、もう子どもたちがおきはじめるぞ! やつらが靴下の中をのぞいても、プレゼントは入っていないのさ! ひゃひゃひゃひゃ! そうなったら、やつらぶつくさ文句を言って、わめき散らして、怒って地団駄を踏むだろうな! 今日の洞窟は満員御礼に決まりだぜ、サンタのじじい! 洞窟は子どもたちでいっぱいになるんだ!」
そう言われても、ほかの悪魔たちが来たときと同じように、サンタクロースは何も答えませんでした。
捕らえられてしまい、ひどく落ち込んでいる。
それは事実です。
でも、その心まで負けてはいませんでした。
サンタクロースが自分の言葉にちっとも耳を貸さないことに気づくと、ミンナテキーはほどなくしてどこかへ行ってしまいました。
代わってやってきたのは、ハンセーという名の悪魔でした。
この最後の悪魔は、今までの連中とは違って、いかにも人の好かないようなタイプではありませんでした。
柔らかであか抜けた物腰で、声も落ち着いていて、どこか優しい響きがありました。
ハンセーは洞窟に入ってくると、こう言いました。
「うちの兄弟たちは、どうやらワタシを信用していないようですね。
もう朝になってしまいましたから。
いたずらもこれでおしまいです。
そしてあなたは、来年のクリスマスイヴまで、子どもたちのもとへ行くことができなくなってしまいましたね。」
サンタクロースは、すでに気力を取り戻していました。
「その通りじゃ。
クリスマスイヴは終わってしまった。
プレゼントを配り始めて何千年にもなるが、子どもたちに会えなかったのはこれが初めてのことじゃよ。」
するとハンセーは、すまなそうに小さな声でこう言いました。
「子どもたちは、本当にがっかりしているでしょうね。
しかし、もうどうすることもできません。
こうして生まれた悲しみが、子どもたちを自己中心的で、人を妬ましく思い、憎むような心に変えてしまうでしょう。
もし今日、子どもたちが悪魔の洞窟にやってきたら、ワタシはそのうちに何人かでも、この『反省の洞窟』に招き入れて、心から反省できるように頑張ってみようと思います。」
そこでサンタクロースは尋ねました。
「つかぬことを聞くが、あなたはもしや……」
「名前がハンセー(反省)ですからね。
今でも、あなたをさらう手助けをしてしまったことを、深く反省しています。
もちろん、犯してしまった間違いは取り返しのつくものではありません。
でも、間違いをしてしまったとしても、そのあとで反省することはできるのです。
最初から悪いことをしなければ、反省する必要なんてないのですが……。」
「なるほど。
悪の誘惑を振り切った人は、そもそもあなたの洞窟へ来る必要はないというわけじゃな。」
「そうです。大抵の場合は、そうです。
でも、あなたは……あなたは何も悪いことをしていないのに、ワタシの洞窟へやってこなければなりませんでした! 本当なら、誘拐なんてことをしたワタシたちが恥じるべきだったのに、あなたはご自分のことのように、自分が悪いかのように心から悔やんでおられました。
ですからワタシは、あなたがワタシの洞窟へ来なくてもいいように、ここから外へ出して差し上げようと思います。」
その言葉を聞いて、サンタクロースは大変驚きました。
しかし、よく考えてみると、それこそが「反省」というものの本当の気持ちなのだと理解できました。
すぐにハンセーはサンタクロースを縛っていたロープをほどきはじめ、壁につながれていた鎖も取り外しました。
ハンセーは長いトンネルの中、サンタクロースを案内しました。
二人がたどり着いたのは、ハンセーの洞窟の出口でした。
ハンセーはサンタクロースに言いました。
「どうかお許しください。
お気づきかもしれませんが、ワタシは決して、悪いことをしようと思ってあなたを誘拐したのではないのです。
ただ、反省という大切な心を、皆に忘れてほしくなくて……。
ワタシは、この世界のためになることを、良いことを、たくさんやりたいと、そう強く思っているのです。」
そう言うと、ハンセーはドアを開けました。
すると、目の前から光があふれてきました。
サンタクロースは心地よい空気の匂いを感じて、胸がいっぱいになりました。
サンタクロースはハンセーに向かって、優しい声で話しかけました。
「わしは、きみを悪いやつだなんて思っておらんし、敵だとも思っておらん。
わしは今、ちょうどこう考えていたところなんじゃ。
きみがいなければ、この世界はどんなにやるせない場所になっていたことだろう、とな。」
サンタクロースは外の景色を見て、こう言いました。
「ああ、いい朝じゃ。」
そして、ハンセーの顔を見て、
「メリークリスマス!」
と言いました。サンタクロースは、明るい朝に「おはよう」と挨拶をするために、外へと歩き出しました。
しばらくすると、彼はやさしい口笛を吹き鳴らし始めました。
一歩一歩、地面をしっかりと踏みしめるように歩きながら、サンタクロースはニコニコ谷にある自分の家へと向かいました。
ちょうどそのとき、非常に大勢の妖精たちが、山の雪を踏みしめて行進してくるのが見えました。
どんな人であっても、この場に居合わせたら、きっと驚くに違いありません。
数え切れないほどのヌックたちが森からやってきており、野原からは上品なリルたちが、自分の守っている草花のブローチをつけてやってきていました。
そのうしろにはたくさんのピクシーやノーム、ニンフたちが続いており、最後には、可愛らしいフェアリーたちが千人、綺麗な衣装をまとって行進に加わっていました。
この行進のいちばん前には、ウィスク、ピーター、ナター、キルターの四人がいました。
この四人は、サンタクロースを助け出すために、そして大好きな子どもたちからサンタを奪い去った悪魔たちを懲らしめるために、これだけの妖精たちを集めてきたのでした。
妖精たちは、見た目は優しくおとなしそうでしたが、心のなかではひどく怒っており、想像もつかないほどの力が隠されていました。
もし、この恐ろしい行進に悪魔たちが遭遇したら、きっととんでもないことになるに違いありません!
でも、その行進の向かう先をご覧になってください! あのサンタクロースが力強くこちらへ歩いてくるのが見えます。
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