初級翻訳・サンタクロースがさらわれちゃった! 第5話

サンタクロースがさらわれちゃった!

サンタクロースが、頼もしい妖精たちのところへ帰ってきたのです! ふさふさとしたひげが風にたなびき、きらきらした目が、妖精たちが自分を助けようとしてくれていたことに喜び、輝いています。
妖精たちは嬉しくて、サンタクロースのまわりに駆け寄りました。
無事に帰ってきたことを喜んで、妖精たちはみんなで踊りました。
サンタクロースはそのあいだ、みんなに何度も何度もお礼を言いました。
とりわけウィスク、ナター、ピーター、キルターの四人には、ありがとうという気持ちを込めて、抱きしめました。
サンタクロースは、妖精たちに向かってこう言いました。
「もう、悪魔たちを捜す必要はない。この世界には、彼らは彼らで、居場所というものがあるのじゃよ。それは決して、なくなったり壊したりできるようなものではない。それは、たいへん残念なことじゃけれどな。」
そう言ったサンタクロースは、何か深く考え込んでいるようでした。

それからフェアリーやヌック、ピクシーやリルたちは、みんなでサンタクロースをお城まで連れていき、四人のお手伝いに、例の夜の出来事を話させました。
ウィスクは自分の体を見えないようにして、世界の子どもたちが、この素晴らしいクリスマスをどう過ごしているのか、確かめにとんでいきました。
ウィスクが帰ってきたころには、ピーターがサンタクロースに、みんなで頑張っておもちゃを配り終えたという話を終えたところでした。
ウィスクはサンタクロースにこう言いました。
「ぼくたち、本当にちゃんとやり遂げたんですよ。だって、朝になっても、不幸せな子どもなんてほとんどいなかったんですから。でも、もう捕まったりしないでくださいね、ご主人さま。またぼくたちがプレゼントを配らなきゃいけないなんてことは、もうこりごりです。」

それからウィスクは、自分たちがちょっとした間違いをしてしまったことを、みんなに白状しました。自分たちの間違いに、世界を回ってみて初めて気がついたのです。
それを知ると、さっそくサンタクロースはチャーリー・スミスにはゴム長靴を、マミー・ブラウンにはお人形さんを贈りました。
それによって、落ち込んでいた二人も幸せになることができました。
今ごろ、あの意地悪な洞窟の悪魔たちはどうしているでしょうか? 考えに考えたサンタクロースの誘拐が失敗に終わったことがわかると、悪魔たちはおこって、とても悔しがりました。
だって、クリスマスの日は本当に、誰一人として自己中心的になったり、人を妬ましく思ったり、憎んだりする人はいなかったのです。
そして、子どもたちの大好きなサンタクロースには、たくさんの頼もしい友だちがいて、サンタクロースの邪魔をしようとしても無理だということがわかったので、悪魔たちはそれから二度と、クリスマスイヴの日にプレゼント運びの邪魔をしようとは考えなくなりました。L・フランク・ボームの作品といえば、何といっても『オズの魔法使い』をはじめとするオズ・シリーズが有名ですが、彼はそれ以外にもたくさんの素敵な童話を描いています。この物語も、そのひとつです。

実は、このお話の前に『サンタクロースの冒険』という作品が1902年に発表されており、今回翻訳した『サンタクロースがさらわれちゃった!』は、いわばその続編のような物語です。もし興味を持たれたら、ぜひそちらも読んでみてください。田村隆一さんによる翻訳版が、扶桑社エンターテイメントから文庫本として出版されています。

また、今回登場したサンタクロースや、彼のお気に入りの妖精たちであるリルやヌックは、オズ・シリーズの『オズへつづく道』にも登場します。そちらもあわせて楽しんでみてくださいね。

翻訳の底本:Baum, Lyman Frank (1904) “A Kidnapped Santa Claus”
上記の翻訳底本は、著作権の保護期間が満了しています。

2004(平成16)年1月1日 初訳
2006(平成18)年4月30日 微修正

※この翻訳は「クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンス」(http://creativecommons.org/licenses/by/2.1/jp/)のもとで公開されています。このライセンスに従う限り、訳者に断りなく自由に利用、複製、再配布をすることができます。

※翻訳に関するお問い合わせは、青空文庫ではなく、訳者本人(http://www.alz.jp/221b/)までお願いいたします。
翻訳者:大久保ゆう
2014年3月24日作成
青空文庫収録ファイル:
このファイルは、著作権者自身の意思により、インターネットの図書館である青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)に収録されています。

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