着つけおわると、王さまはあちこちからかがみにうつる自分を見ました。
「何と美しい! ……よくおにあいです!」
その場にいただれもがそう言いました。
「この世のものとは思えなく美しい柄、言いあらわしようのない色合い、すばらしい、りっぱな服だ!」と、みんなほめたたえるのでした。
そのとき、パレードの進行役がやって来て、王さまに言いました。
「行進パレードに使うてんがい(王さませんようの大きな日がさ)が準備できました。
かつぐ者たちも外でいまやいまやと待っております。」
「うむ、わたしもしたくは終わったぞ。」と、王さまは進行役に答えました。
「どうだ、この服はわたしににあってるかね?」
王さまはかがみの前でくるっと回ってみせました。
なぜなら王さまは自分の服に見とれているふりをしなければならなかったのですから。
お付きのめしつかいはありもしない服のすそを持たなければなりませんでした。
地面に両手をのばして、何かをかかえているようなふりをしました。
やはりめしつかいも何も見えていないことを知られたくなかったので、すそを持ち上げているようなまねをしているのでした。
王さまはきらびやかなてんがいの下、どうどうと行進していました。
人々は通りやまどから王さまを見ていて、みんなこんなふうにさけんでいました。
「ひゃぁ、新しい王さまの服はなんてめずらしいんでしょう! それにあの長いすそと言ったら! 本当によくおにあいだこと!」
だれも自分が見えないと言うことを気づかれないようにしていました。
自分は今の仕事にふさわしくないだとか、バカだとかいうことを知られたくなかったのです。
ですから、今までこれほどひょうばんのいい服はありませんでした。
「でも、王さま、はだかだよ。」
とつぜん、小さな子どもが王さまに向かって言いました。
「王さま、はだかだよ。」
「……なんてこった! ちょっと聞いておくれ、むじゃきな子どもの言うことなんだ。」
横にいたそのこの父親が、子どもの言うことを聞いてさけびました。
そして人づたいに子どもの言った言葉がどんどん、ひそひそとつたわっていきました。
「王さまははだかだぞ!」
ついに一人残らず、こうさけぶようになってしまいました。
王さまは大弱りでした。王さまだって、みんなの言うとおり、自分がすっかりはだかだということが心の中でわかっていたからです。
でも、王さまは心の中でこう思いました。
「いまさら、もう始まってしまったパレードをやめるわけにはいかないぞ。」
だからこそ、王さまはいつも以上にもったいぶって、胸を張って歩きつづけました。
そして、お付きのめしつかいたちは、実際にはそこには何もない「ありもしないすそ」を、まるで本当に持っているかのように大切にささえながら、王さまのあとをずっと歩いていったのでした。
初級翻訳・はだかの王さま 第3話
はだかの王さま
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