初級翻訳・きりぎりす の かひもの 第1話

きりぎりす の かひもの

ある八百屋さんの店に、きゅうりが山のように積んでありました。
その山のてっぺんで、一本の大きなきゅうりがぐうぐう眠っていました。
初めは一番下にいたのですが、どんどん仲間を押しのけて、いつの間にかてっぺんによじ上り、いい場所をとってお昼寝をしていたのです。
こういうきゅうりのことを、「横着(おうちゃく)きゅうり」と言います。
そこへ、一匹のきりぎりすがきゅうりを買いに来ました。
きりぎりすがきゅうを大好きなことを知っている八百屋さんは、
「一本四銭より安いきゅうりは、一本もありません。」
と、本当の倍くらい高い値段を言いました。
きりぎりすは困ってしまいました。
なぜって、きりぎりすは一銭銅貨を二枚しか持っていなかったからです。
そこで、きりぎりすは八百屋さんに、
「どうか二銭に負けてくれませんか。」
と頼みました。
八百屋さんは、
「いやー、どうしても四銭よりは負けられませんよ!」
と、プンプン怒って断りました。
それから、きりぎりすと八百屋の主人は交互に、
「どうぞ、負けてくれませんか。」
「いやー、負けられませんよ!」
「どうぞ、どうぞ、負けてくれませんか。」
「いやー、いやー、負けられませんよ!」
と言い争いました。
八百屋さんはもともととっても気が短い人だったので、ついに頭に血がのぼって、いきなり足の先で、
「えいっ、この面倒くさいきりぎりすめ!」
と、きりぎりすを力いっぱい蹴とばしました。
けれども、風のように身の軽いきりぎりすは、そのとき「えいっ」と体をかわしたので、八百屋さんの足は、きゅうりの山のてっぺんで気持ちよさそうにさっきからお昼寝していた、あの横着きゅうりの横っ腹にドカンとぶつかりました。
「あ、いたた、いたた、いたた!」
びっくりした横着きゅうりは目を覚まして、大きな声を張り上げました。
かわいそうなことに、横着きゅうりは真ん中からポキッと二つに折れてしまったのです。
きりぎりすは二つに折れたきゅうりの半分を拾って、八百屋さんに言いました。
「一本が四銭なら、半分は二銭でしょう。ですから、二銭をお支払いして、この半分をいただいていきます。私は生まれつき少ししか食べられませんから、これだけでも多すぎるくらいです。」
そして、きりぎりすは八百屋さんに銅貨を二枚チンチンと渡して、横着きゅうりの半分を買い物かごの中に入れて、帰っていきました。
八百屋さんは腹が立って大声でわめきたくなりましたが、いくら指折り数えてみても、四銭の半分は二銭ですから、怒るわけにはいきませんでした。
なかなか賢いきりぎりすですね。
そう思いませんか?

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