こいぬのちびすけ
村山籌子
こいぬのちびすけが、それはもう威張(いば)ってやってきました。
「ウー、ウー、ウー、ぼくは立派(りっぱ)な大きな犬(いぬ)なんだぞ!」
大きな犬のジョンがびっくりして言いました。
「きみだってもうすぐ大きくなるさ。だけど、いまはまだちっぽけな子犬だよ」
「ウー、ウー、ぼくはきみより大きいんだ! ぼくはこの辺(へん)のご近所(きんじょ)でいちばん大きいんだぞ!」
「ウォオ、ウォオ、ウォオ、きみは頭(あたま)がどうかしてしまったらしいね」と、ジョンは笑いました。
「気のせいなんかじゃないもん! 今朝(けさ)早くのはらで遊んでいて、ふと見たら、ぼくの影(かげ)はきみよりずっと大きかったんだからね!」
ジョンは立ち上がって言いました。
「よろしい。それなら、いっしょにのはらへ行ってみようじゃないか」
「ワン、ワン! さあ、行こう!」
太陽がカンカンと真上から照りつけて、暑くてたまりませんでしたが、ジョンとちびすけはかけっこをしてのはらへ行きました。
のはらの真ん中で影を見てみると、二匹とも小さくて小さな影でした。
いくら大きく見せようと力を入れて踏(ふ)んばっても、小さな影は大きくならなかったのです。
ちびすけはびっくりして泣き出してしまいました。
「ウー、ウー、大変なことになっちゃったぞ……!」
夕方(ゆうがた)、太陽が沈(しず)みそうになったとき、ジョンはちびすけに、もう一度のはらへ散歩に行こうと言いました。
悲しそうなちびすけは、首をうなだれたまま、ジョンのあとをついていきました。
「さあ、影をごらんよ」
ジョンが言いましたが、ちびすけは首をあげようとしません。
ジョンが耳をくわえて引っ張ったので、ちびすけはしかたなく首をあげて、自分の影を見ました。
「ワン、ワン! ぼくは大きな犬だ! ぼくは大きな犬だぞ!」と、ちびすけは大喜びで飛びあがり、しっぽをクルクルと振り回しました。
朝見たときよりも、もっともっと影が大きくなっていたのです。
そして、影もまるで喜んでいるように、飛びあがったり、しっぽをクルクルと振り回したりしていました。
ジョンが言いました。
「ワン、ワン、よく見てごらん。きみの影は大きいけれど、ぼくの影はもっともっとずっと大きいよ。どんなに影が大きくなったって、きみはやっぱり子犬なんだよ」
ちびすけはちょっと考えていましたが、やがてピョンと飛びあがって言いました。
「ぼくは大きな影を持った子犬なんだ! いつかきっと、もっと大きな影を持った大きな犬になるんだぞ! ワン、ワン、ワン! うれしいな、うれしいな!」
そして、自分の影とじゃれついて楽しく遊びました。
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