初級翻訳・ほんとにそのとおり! 第1話

ほんとにそのとおり!

「おそろしい話なのよ!」と、一羽のメンドリが言いました。
そこは町のはずれで、このお話のできごととは、なんの関係もない場所でした。
「向こうのトリ小屋で起きた、おそろしい話なのよ。あたし、今夜はとっても、ひとりでなんか眠れそうもないわ。でも、あたしたちはこうしてみんないっしょに、とまり木の上にかたまっているからいいけれど」
それからメンドリは話しはじめました。すると、ほかのメンドリたちは毛を逆立て、オンドリたちはトサカをだらりと垂れました。
ほんとにそのとおり!

それでは、はじめからちゃんとお話しすることにしましょう。
さて、その出来事のはじまりというのは、町の向こうはずれのトリ小屋の中で起きたことなのです。お日さまが沈むと、ニワトリたちはとまり木に飛び上がりました。その中に一羽、真っ白な羽をした、足の短いメンドリがいました。卵もきちんとよく産みますし、メンドリとしてはどこから見ても申し分のない、りっぱなメンドリでした。
このメンドリが、とまり木に飛び上がろうとしながら、自分の羽をくちばしでつついたのです。するとその拍子に、小さな羽が一枚、抜け落ちました。
「あら、羽が一枚抜けたわ」と、そのメンドリは言いました。「でもいいわ。あたしは羽をつつけばつつくほど、きれいになっていくんですもの」
もちろん、これは冗談で言ったことなのです。なぜって、このメンドリは仲間の中でもほがらかな性格だったからですし、さっきもお話ししたとおり、たいへんりっぱなメンドリだったのですから。
それから、このメンドリは眠ってしまいました。あたりは真っ暗でした。メンドリたちは体をすり寄せて眠っていました。ところが、そのメンドリのお隣にいたメンドリだけは、まだ眠っていませんでした。このメンドリは、聞いても聞かないようなふりをしていました。だれでもこの世の中を無事に、のんきに暮らしていこうと思えば、そんなふりをしなければならないものですがね。
けれども、別のお隣さんに、ついこう言ってしまいました。
「ねえ、おまえさん。今言ったこと聞いた? だれって、べつに名前は言わないけどね、この中に、自分をきれいに見せようとして、わざわざ自分の羽をむしりとるメンドリが一羽いるのよ。もしあたしがオンドリだったら、そんなメンドリは軽蔑してやるわ」

ニワトリたちのいるすぐ上に、フクロウのお母さんが、旦那さんと子供たちといっしょに座っていました。この一家はみんな早耳でしたから、いまお隣のメンドリが言ったことを、残らず聞いてしまいました。みんなは目をまんまるくしました。フクロウのお母さんは、羽をバタバタさせながら言いました。
「あんなこと聞かないほうがいいわ。でも、いま下で言ったこと聞いたでしょう。あたしは、この耳でちゃんと聞きましたよ。あなたが元気でいるうちに、いろんなことを聞いておかなくちゃなりませんものね。あそこにいるニワトリの中には、一羽だけいやなメンドリがいるんですよ。メンドリのくせに、自分がメンドリであることを忘れてしまってね、自分の羽をみんなむしりとって、オンドリの気を引こうっていうんですからね」
「プルネー ギャルド オー ザンファン(子供たちに、気をつけなさい)」と、フクロウのお父さんがフランス語で言いました。「そんな話は子供にはよくないからね」
「でも、お向かいのフクロウさんには話してやりましょう。あの人はだれとおつきあいしても、評判のいいひとですからね」こう言って、フクロウのお母さんは飛んでいきました。
「ホー、ホー、ホホー」と、二羽のフクロウは鳴きながら、お向かいのハト小屋にいるハトに向かって言いました。
「お聞きになった? お聞きになった? ホホー。オンドリに見せようとして、羽をみんなむしりとってしまったメンドリがいるんですって。まだ死にはしないけど、きっとそのうちに、凍えて死んでしまうわ。ホホー」
「どこで? どこで?」と、ハトがクークー鳴きました。
「お向かいの中庭でよ。あたしは、この目で見たもおんなじなの。変な話をするようだけど、ほんとにそのとおり!」
「おい、聞いてくれよ、聞いてくれよ。ぜったいに本当の話なんだから」ハトはこう言って、クークー鳴きながら、鳥飼い場へ飛んでいきました。「一羽のメンドリがね、いや、話によると二羽だというひともいるけどね。その二羽のメンドリがさ、ほかの仲間とはちがった格好をして、オンドリの気を引くために、羽をみんなむしりとっちゃったんだってよ」ずいぶんと思い切ったことをしたもんじゃないか。
そんなことをすれば風邪をひいて、熱を出して、死んでしまうのも当然だよ。
二羽とも、死んでしまったんだってさ」

「起きろ! 起きろ!」と、オンドリが大きな声で鳴きながら、板の囲いの上に飛び上がりました。
まだ眠たそうな目つきをしていましたが、それでも大きな声を張り上げて鳴きました。
「かわいそうに、三羽のメンドリが一羽のオンドリを好きになって、そのために死んだんだとさ。
みんな、自分の羽をむしり取ってしまったんだ。
実に情けない話じゃないか。
俺は自分一人の胸にしまっておきたくない。
みんなに知らせてやろう」

「みんなに知らせてやろう」と、コウモリはチーチー鳴き、メンドリはコッコと鳴き、オンドリはコケッコ、コケッコと鳴きました。
「みんなに知らせてやろう。
みんなに知らせてやろう」

こうして、このお話はトリ小屋からトリ小屋へと伝わって、とうとうしまいには、そのお話が生まれたもとの場所へ戻ってきました。
そしてそのときには、
「五羽のメンドリがいてね」ということになっていました。
「それが一羽のオンドリを好きになって、誰がそのために一番気を使って痩せてしまったかを見せようとしてさ、みんな自分の羽をむしり取ってしまったんだって。
それから血まみれになって、蹴り合いをしているうちに、とうとう倒れて死んでしまったんだね。
一家の不名誉と恥辱はこれ以上ないほどだし、飼い主にとっても大きな損害さ」

ところが、あの最初のメンドリは、小さな羽が一枚抜け落ちてなくなっただけなのですから、まさかこれが自分の話だとは知るはずもありません。
それに、このメンドリは立派なメンドリでしたから、こう言いました。
「あたし、そんなメンドリは軽蔑してやるわ。
でも、そういう人たちってずいぶんいるものね。
そういうことは隠しておいてはいけないわ。
ひとつ、この話が新聞に載るようにしてやりましょう。
そうすれば国じゅうに広まるわ。
そのくらいの目にあったって、そのメンドリたちや家族の者には仕方がないことだわ」

こうして、このお話は新聞に載りました。
それから、本にも印刷されました。
ほんとにそのとおり! 小さな一枚の羽が、しまいには五羽のメンドリになれるんですよ。

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