初級翻訳・オシャベリ姫 第2話

かぐつち みどり

今までのは、今度のお話をもっと面白くするために話しただけよ」
「何……これからが本当に面白い話だと言うのか?」
「それはどんな話なんだ?」
王様とお妃様は、興味津々で尋ねました。オシャベリ姫はまた話し始めました。

「あたしはね、今までお話しした二つの夢から覚めたとき、本当に今夜は変な晩だなと思ったの。だって、寝ていれば黒ん坊が来そうだし、女中の部屋に行ったらまた何か変なものを見そうだし、どうしようかと困ってしまって。それで仕方がないから、寝床に入ったまま二人の女中の名前を呼んでみたのよ」
「ああ、それはよかった。最初からそうすればよかったのに」と王様が言いました。
「でも、前のは夢なんですもの。仕方がないわ」
「うん、そうだったな。それで、どうしたんだ?」
「そうしたら、二人の女中が二人とも『はい』と言って起きてきたから、あたしはやっと安心をして、今お話しした二つの夢の話をして聞かせたの」
「二人ともびっくりしたでしょうねえ」とお妃様が言いました。
「ええ、本当にびっくりして二人で顔を見合わせてね。それからニコニコ笑って、『それは大変におめでたい夢でございます』って言うんですの」
「ほう。どうしてそれがおめでたいのだ?」
「宝物を盗まれたり、女中が死んだりする夢が、どうしてそんなにいいことなの?」
王様とお妃様は、またしても声を揃えて尋ねました。

「それはね、こうなんですって。二人の女中の話では、この国で一番おめでたい夢は『短刀と蜘蛛』の夢だと、昔から言い伝えられているんですって」
「ふーむ、そうかなあ」
「あたしは初めて聞いたわ」
王様とお妃様は顔を見合わせました。
「あたしもよく知らないけれど、女中がそう言うんですの」とオシャベリ姫は言いました。
「して、それはどういうわけで、おめでたいのだ?」と王様が尋ねました。
「何でも、短刀と蜘蛛の夢を見ると、いいお婿さんがやってくるって、みんなが言うんですって」
「まあ、それは本当なのかい?」
「本当だそうです。でも、そんな夢を見たことが相手のお婿さんにバレると、縁談がダメになってしまうんですって。だから二人の女中は私に、その夢のことは誰にも言っちゃダメよ、と約束させたの」

「まあ、お前は本当に馬鹿だねえ……。なぜそんなに大切な夢の話を、ペラペラとおしゃべりしてしまうんだい」
お妃様は、本当に残念そうに言いました。
「いいえ、お母様。あたしはお婿さんなんかいらないの。それよりも、その夢の話をこうしておしゃべりするほうが、ずっとずっと面白いんですもの!」「だって、こんなに面白い夢を見たことは、生まれて初めてなのですもの」

「お前は本当に、どうしようもないおしゃべりだねぇ。それなら、お前のお守り役の女中たちが、その夢のことを外へ漏らさないように言い含めておこう」
とお妃様がおっしゃいました。

「いいえ。構わないのよ、お母様。女中たちが黙っていたとしても、あたしが自分でお話ししてしまいますから、ダメですよ」
とオシャベリ姫は言いました。

王様とお妃様が、姫のおしゃべりぶりに呆れていらっしゃるところへ、姫のお付きの女中が二人そろって姫の前にやってきて、頭を下げました。
「お姫様、お化粧のお手伝いにまいりました。もうすぐお食事の時間でございますから」
そう言って、二人は丁寧にお辞儀をしました。

お妃様はそれを見て、
「おお。お前たちは昨夜、姫から面白い夢のお話を聞いたそうですね」
とおっしゃいました。
王様からそう尋ねられると、女中たちは驚いたような顔をして顔を見合わせました。そして、二人同時にこう答えました。

「いいえ。お嬢様は夢のお話など、一つも私達になさいません」
「えっ……お前たちは姫から、夢の話を一つも聞いていないのか?」
王様は怖い顔をして、二人をにらみつけました。

「はい」
「嘘をつくと許さんぞ」
「嘘は申しません」
「よし。あっちへ行け」
王様にそう言われると、女中たちは一礼して去っていきました。

王様は女中たちが姿を消すと、オシャベリ姫をぐっと鋭くにらみつけました。
「こら……オシャベリ姫。お前はなぜ、そんなに嘘ばかりついておしゃべりをするんだ」
王様は雷のような声で姫を叱りつけました。

けれども姫は少しも怖がらず、こう言いました。
「いいえ。私はちっとも嘘なんてついていません。本当にそんな夢を見て、本当にその話を女中にしたのです。女中の方が嘘をついているのよ」
姫はそう言って言い張りました。

しかし、お父様である王様は、もう姫の言うことを信じてくださいませんでした。
「お前の言うことはみんな嘘だ。その上、そんなに強情を張っておしゃべりをやめないのなら、もう俺の子ではない。この国では嘘をついた者は石の牢屋に入れることになっているのだから、貴様も入れてやる!」
そう言うが早いか、王様は立ち上がって、泣き叫ぶ姫の襟首を掴みました。

お母様のお妃様は慌ててそれを止めようとして、
「さあ、姫や。嘘をついて済みませんでしたと言いなさい。これから先は決して嘘をつきませんと言いなさい。お母さんが代わりに謝ってあげるから」
と諭されましたが、姫は頭を振って「イヤイヤ」と拒みながら、強情を張って泣くばかりでした。

「よし。そんなに強情を張るなら、いよいよ勘弁できぬ」
王様は大変お怒りになって、とうとうオシャベリ姫を石の牢屋に閉じ込めてしまわれました。

石の牢屋は、お城の地下にある、真っ暗で冷たい場所にありました。
オシャベリ姫はそこに放り込まれて、あまりの恐ろしさに石の上に寝転がったまま「オイオイ」と泣いていましたが、いつまで経っても誰も助けに来てはくれません。
お母様や女中たちの名前を呼んでも、あたりはただ静まり返り、真っ暗なままです。

そのうちに姫は泣き疲れて、ウトウトと眠りかけました。すると間もなく、
「ニャー」
と、優しい猫の声が聞こえました。
見ると、向こうの暗がりに黄金色の猫の目が二つ、キラキラと光っています。
オシャベリ姫は寂しくてたまらないところでしたから、この猫を見ると喜んで、
「チョッチョッチョッ」
と呼びかけました。

すると猫はすぐに姫のところへすり寄ってきて、喉をゴロゴロと鳴らしました。
姫は猫を抱き上げて、こう言いました。
「まあ……お前はどこから入ってきたの? この石の牢屋には、ネズミ一匹入る穴さえ無いのに……。お前、もし外へ出る方法を知っているのなら、あたしに教えて頂戴な!」

「ニャー」
「おや。お前、出て行く道を知っているのかい?」
「ニャー」
「じゃあお前、先に立ってあたしを連れて行っておくれな」

「ニャー、ニャー」
そう鳴きながら、猫はもう姫の手をすり抜けて歩き出し、「こっちへいらっしゃい」と言うように振り返りました。

オシャベリ姫は、猫が本当に牢屋の外へ連れて行ってくれるのかしらと不思議に思いながら、真っ暗な中で時々振り返る猫の目を頼りに、そろりそろりと歩き出しました。すると不思議なことに、狭いと思っていたはずの牢屋は大変に広く、どこまで歩いても突き当たりません。

そうこうするうちに何だか野原に出てきたようで、履いている靴の先に草の葉が当たるのが分かりました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました