そして、下層の空気や地表からの熱が宇宙へ逃げていくのを防いで、地球全体の平均気温を五度くらいは暖かくしてくれるはずだと思っている」
「先生、あの火山を今すぐ爆発させることはできないでしょうか?」
「それは可能だろう。だがね、その作業に行った者のうち、最後の一人はどうしてもそこから逃げ戻ることができなくなってしまうのだよ……」
「先生、どうか私にそれをやらせてください。どうか先生からペンネン先生へ、私がそれをやることの許可が出るようにお言葉をかけてください!」
「それはいかん。きみはまだ若いし、いまのきみの代わりになるような仕事の人はそうそういないんだからね」
「私のような人間なら、これからいくらでも生まれてきます。私よりもっともっと何でもできる人たちが、私よりもっと立派に、もっと美しく、自分の仕事をやり遂げたり笑顔で生きたりしていけるのですから!」
「その相談は、私では受けられない。ペンネン技師に直接話しなさい」
ブドリは家に戻ると、さっそくペンネン技師に相談しました。
技師は静かうなずきました。
「それはいいだろう。だがね、その仕事は私がやろう。私は今年でもう六十三歳になるのだ。ここで命を落とすなら、私にとってはまったく本望というものだよ」
「先生、ですがこの仕事はまだあまりにも確実性がありません。たとえ一度うまく爆発したとしても、すぐにガスが雨に吸収されてしまうかもしれませんし、何もかもが思い通りにいかないかもしれないのです……」「先生が今度(こんど)おいでになってしまっては、あとなんとも工夫(くふう)のしようがなくなると存じます。」
おじいさんの技師は、だまってうつむいてしまいました。
それから三日後、火山局(かざんきょく)の船が、カルボナード島へ急いで向かいました。
島にはいくつものやぐらが組み立てられ、電線がしっかりとつなぎ合わされました。
すべての準備がととのうと、ブドリは仲間たちを全員船に乗せて帰し、自分ひとりだけが島に残りました。
そしてその次の日、イーハトーヴの人たちは、青空が緑色ににごり、太陽や月が銅(どう)のような色に光っているのを見ました。
けれども、それから三、四日もたつと、気候はめきめきと暖かくなり、その年の秋は、ふだんとほとんど変わらない収穫(しゅうかく)をむかえることができました。
そしてちょうど、このお話のはじまりのようになるはずだった、たくさんのブドリのお父さんやお母さんたちは、たくさんのブドリやネリといっしょに、その冬をあたたかな食べ物と、明るい薪(まき)の火で、とても楽しく暮らすことができたのでした。
初級翻訳・グスコーブドリの伝記 第10話
グスコーブドリの伝記
コメント