でも、どういう手を打つかは別問題なので、なかなか一つに決まりませんでした。
サンタクロースがニコニコ谷の中で一年中働いているということは、みんな知っていました。
そこでクリスマスイブに配るプレゼントを作っているのです。
まずはとにかく、サンタクロースをそそのかして、自分たちの洞窟に連れてこよう、ということが決まりました。
もしかすると、そのあとサンタクロースをあの穴のところに引っ張り出して、奈落の底に突き落とすつもりなのかもしれません。
そういうことで、次の日、サンタクロースがお手伝いの妖精たちと一緒に、せっせとおもちゃ作りに励んでいると、ジコチューがふらりとやってきて、サンタクロースに話しかけました。
「そのおもちゃ、本当にすばらしい作品だなぁ。
そんなにすごいものを、どうして自分ひとりのものにしないの? もったいなくない? あんなうるさいガキやぷりぷりしてる娘どもに渡したら、あっという間に、このすばらしい作品を壊されちゃうよ!」
すると、サンタクロースはあごひげをさすって、目をきらきらと輝かせながら、甘い言葉をささやく悪魔のほうをじろりと見つめました。
「たわけたことをおっしゃい! どんな男の子も、どんな女の子も、わしのプレゼントをもらったら、ちゃんとおとなしくしよるわい。
一年のうちたった一日でも、子どもを幸せにできるというなら、わしはそれだけで満足なのじゃ。」
こう言われて、ジコチューはどうくつへ帰りました。
するとみんなが待っていたので、ジコチューはこう言いました。「だめだった。サンタクロースは、ちっとも自分勝手じゃなかったよ!」
次の日はネタマシーがサンタクロースのところへ出かけていって、こうさそいかけました。
「おもちゃ屋ってさ、あんたの作るおもちゃに負けないくらいすばらしい品物が、本当に山ほど並んでるよね。あいつらは、あんたの邪魔をしてるのさ! なんて腹の立つやつらだ! しかも、あいつらは機械で作ってるから、あんたが手作りするよりもずいぶん早くできるんだぜ。まったく、あいつらはそれでお金をもらって、あんたは何にももらわない。それって、不公平じゃないかい?」
でも、サンタクロースはそのさそいにはのりませんでした。
「わしは一年に一回しか子どもたちにおもちゃをやることができん――それも、クリスマスの夜だけだ。それというのも、子どもは大勢いるのだが、わしはひとりしかおらんからな。みんなのためにおもちゃを作るとなると、時間がかかるんじゃよ。それに、わしは子どもが好きで、子どもによろこんでもらいたいからおもちゃを作っているのであって、こんなささやかなプレゼントに対して、お金をもらうなんてとんでもない。しかし、子どもはクリスマスだけじゃなくて、一年中何かで遊んでおらんといかん。だから、おもちゃ屋も必要だし、なによりおもちゃ屋だって子どもを幸せにしているじゃないか。わしはおもちゃ屋も好きだし、おもちゃ屋がうまくいけば、わしもうれしい。」
こうして、悪魔のたくらみはまた失敗しましたが、それにもこりずに、今度はニクシミーがサンタクロースの邪魔をしてやる、とはりきりました。次の日、ニクシミーはおお忙しのお城にもぐりこんで、サンタクロースの前に行くと、こう言いました。
「よう、サンタ! 実は、お前に悪い知らせがあるんだよ。」
するとサンタクロースはこう言いました。
「そうか。いい子なら、そのままお帰り。悪い知らせっていうのは、胸の中にしまって、口に出しちゃいかんのじゃよ。」
「でも、これは言わなきゃならないことなんだよ。実はだね、この世界には、サンタクロースを信じてない人が、本当にたくさんいるんだぜ。そんなやつがいると知ったら、お前だって憎らしく思うだろ? だって、お前に対して失礼なことをしてるんだぜ。」
「そんなの、ささいなことじゃ。」
「いやいや、ほかにも、お前が子どもを幸せにするからむかつくっていうやつらとか、お前のことを頭のおかしくなったジジイっていうふうに鼻で笑うやつだっているんだ! お前がそうやって自分のかげ口をたたいているやつを憎んで、その仕返しをするっていうのが、いちばん正しいことじゃないのか?」
そこで、サンタクロースはきっぱりと言い返しました。
「なぜ憎まなきゃならんのじゃ! その人たちがそういうことをしたとしても、わしは別になんとも思わんわい。ただ、そのことによって、自分と自分の子どもを不幸せにしているだけじゃ。切ないことじゃのう。そういう人たちには、たとえ何がどうあろうとも、いためつけるんじゃなくて、何かその人の役に立ってやりたいものじゃ。」
というわけで、悪魔がどんなふうに誘惑をしても、サンタクロースはいっこうになびきませんでした。それどころか、サンタクロースはとてもかしこい人でしたから、悪魔たちがいたずら目的でやってきているということも、ちゃんと見抜いていました。サンタクロースが元気よく笑うのを見て、悪魔たちはどうして悪い心をもたず、笑っていられるのかとても不思議に思いました。けれど、自分たちのたくらみが失敗に終わったということははっきりわかりました。
そこで、悪魔たちは甘い言葉なんていうまわりくどいことはやめて、力ずくでいくことにしました。サンタクロースがニコニコ谷にいるかぎり、どういう方法を使っても、サンタクロースには手出しができません。なぜなら、たくさんの妖精やリル、ヌックたちがサンタクロースを守っているからです。でも、クリスマスイヴの日には、たくさんのプレゼントを子どもにあげるために、ひとりトナカイに乗って、世界中をかけめぐります。ちょうどそのときが、悪魔たちにとって絶好のチャンスです。そこで、悪魔たちは計画を練って、クリスマスイヴが来るのを待っていました。
クリスマスイヴの日、空には大きなお月さまが出ていて、明るく輝いていました。その下では、雪がカチカチに凍って、きらきら光っていました。サンタクロースはむちをぴしっとしならせて、トナカイを走らせていました。ニコニコ谷から世界へ向かっているところでした。大きなソリには、おもちゃの入った大きな袋がめいっぱいつまれていました。サンタクロースは運転席に座って、ニコニコ笑いながら口笛を吹いていました。
サンタクロースにとっては、一年のうちでこの日がいちばん幸せでした。
お城で作った小さな宝物を、子どもたちに届ける大切な日なのです。
今夜も忙しくなるな、とサンタクロースは思いました。
口笛を吹き、声を張り上げ、ムチをしならせながら、自分のことを待ち望んでいる村や町、都市のことを考えていました。
これだけのプレゼントがあれば、世界を回って、子どもたちみんなを幸せにできる、と思いました。
トナカイは子どもたちが何を欲しがっているのか、ちゃんと分かっていました。
トナカイは一面雪の降り積もった地面すれすれのところを、うまく走り抜けていきました。
そのとき、変なことが起こりました。
いきなりロープが月明かりの中、ひゅうっと飛んできて、その先についていた輪っかがサンタクロースの体にすっぽりはまって、ぎゅっと締め上げてしまいました。
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