あちこちの島々には、小屋や小さな家が見えました。
そして奥へ進んでいくにつれて、家々も大きく美しくなりました。
しまいには、大きな白いお屋敷も見えてきました。
海岸にそって木々が立ちならんでいました。
そのむこうには畑がありました。
小さな丘の上にも木々が立っていました。
それを見ているうちに、ニールスはおもわず、ブレーキンゲを思い出しました。
そこでもブレーキンゲとおなじように、陸と海とがおたがいの持っているいちばんいい、いちばんすばらしいものを見せあおうとでもするように、こんなにも美しく、こんなにもなごやかに向かいあっているのです。
ガンの仲間たちは、「ガン湾」にある、草も木も生えていない島におりました。
みんなは岸べをひとめ見て、あちこちの島にいっているあいだに、春がだいぶ深まったことがわかりました。
大きなりっぱな木々はまだ葉をつけてはいませんが、その下の地面には、白、黄、青の、色とりどりの春の草花が咲いています。
ガンの仲間たちは、この花の敷物を見たとき、びっくりしました。
南部地方で、すこしぐずぐずしすぎたと思ったのです。
そこでアッカは、「スモーランドでやすんでいるひまはないから、あしたの朝すぐに、エステルイエートランドをこえて、北にむかって旅をつづけなければならない」と、みんなに言いました。
これでは、スモーランドはなにも見られないことになってしまいます。
ニールスは、それがざんねんでたまりませんでした。
というのは、まえからスモーランドのことは、ほかの地方よりもずっといろいろ話に聞いていたからです。
で、ニールスは、ぜひともじぶん自身の目で見たかったのでした。
きょねんの夏、ニールスは生まれ故郷に近いヨルドベリヤの近くの、ある農家でガチョウ番にやとわれていました。
そのとき、ほとんどまいにちのように、やっぱりガチョウの番をしている、スモーランド生まれのふたりの子どもに出あいました。
その子どもたちは、スモーランドのことで、たびたびニールスをおこらしたものでした。
もっとも、ねえさんのオーサがニールスをおこらせたわけではありません。
この子は、りこうな子で、そんなことはしませんでした。
ところが、弟のマッツのほうは、どうにもしようのないいたずらっ子でした。
「おい、ニールスくん、きみは、スモーランドとスコーネが、どんなふうにしてできたか、知ってるかい?」と、マッツはたずねたものでした。
そして、ニールスが知らないと答えますと、すぐに、スモーランドのむかしからの言いつたえを話しはじめました。
「じゃあ、話してやろう。いいかい、神さまが世界をおつくりになっていた時のことだぜ。神さまがその仕事をなさっているところへ、聖ペテロが通りかかったんだ。ペテロは立ちどまってながめていたけれど、まもなく、それは骨のおれるお仕事ですか、ときいたんだ。すると、神さまは、『うん、そんなにやさしくはないね』とお答えになったのさ」ペテロは、しばらくそこに立って見ていました。神さまが、いかにもやすやすと、陸地をつぎからつぎへとおつくりになるのを見ているうちに、自分でもやってみたくなったのです。そこで神さまにむかって、「ちょっとお休みになってはいかがでしょう。そのあいだ、わたくしがかわりに、お仕事をいたしておりますから」と言いました。
でも、神さまはそうさせたくはなかったので、「おまえにまかせておけるほど、おまえの腕はたしかかな」とお答えになりました。すると、聖ペテロは腹を立てて、わたしだって神さまとおなじように立派な土地をつくることができます、と言ったのです。
そのときは、ちょうど神さまがスモーランドをこしらえていらっしゃるところでした。まだ半分もできてはいませんでしたが、非常に美しく、よく肥えた土地になるように見えました。ところで、神さまはペテロに「いけない」と言うのもかわいそうだと思われたのです。それに、こんなにうまくできかけているのだから、だれがやってもできそこなうようなこともあるまいと思われたのですね。
そこで、「それなら、おまえとわしのどちらがうまくやるか、ひとつためしてみようではないか。おまえははじめてだから、わしのやりかけたあとをつづけてやるがいい。わしは、新しい土地をつくることにするから」と言われました。
ペテロはすぐに承知して、ふたりはめいめいの場所で、それぞれ仕事にかかりました。神さまはすこし南へいかれてスコーネをつくりはじめましたが、すぐに仕上げてしまいました。そこで、こんどはペテロにむかって、おまえの仕事はおわったかとたずねられ、新しい土地を見にきてはどうかと言われました。
するとペテロは、「はい、とっくにできあがっております」と言いましたが、その声の調子からみると、ペテロは自分のやった仕事に、いかにも満足しているようでした。
ペテロは、神さまのこしらえたスコーネをながめたとき、じつによくできていると感心しました。耕すのにもってこいの、よく肥えた土地で、山というようなものはほとんどありません。見わたすかぎりが平地なのです。人間がそこに住んで、気持ちよく暮らすことができるようにとの考えから、神さまがこしらえられたことははっきりしていました。
ペテロは、「ほんとうに、これはよい土地ですね。けれども、わたしのつくったほうが、もっといいと思います」と言いました。
「それでは、それを見ようではないか」と、神さまがおっしゃいました。
その土地は、ペテロが仕事をはじめたときには、もう北と東はできあがっていました。だから、南と西と真ん中が、ペテロのこしらえたものだったのさ。ところが、神さまはその土地をごらんになったとたんに、びっくりなさって、「いったい、おまえはなにをこしらえようというのだ?」とおっしゃいました。
そう言われて、ペテロもあたりを見まわして、自分でも驚いてしまいました。さいしょ、ペテロのつもりでは、あたたかい土地をつくるのがいちばんいいだろうと思ったのです。そこで、たくさんの石をつみあげて、高地をきずきあげました。つまり、こうすれば太陽に近くなるから、それだけ太陽の熱をたくさん受けられるだろうと思ったわけです。そして、そのつんだ石の上に、ペテロはすこしばかり土をかけて、これで、すべてがうまくいくものと思いこんでいました。
ところが、ペテロがスコーネにいっているあいだに、ものすごい夕立が二度ばかりあったのです。そのために、せっかくペテロのやった仕事が台なしになってしまいました。神さまがおいでになってごらんになったときには、土はすっかり洗い流されてしまい、いたるところに裸の石肌があらわれているという始末なのです。いちばんいいところでも、岩の上に粘土や重たい砂利があるくらいのもので、とにかく見るからに貧弱でした。だから、ここには植物にしても、せいぜいネズやエゾマツ、コケ、ヒースぐらいのものしか生えないだろうということは、一目でわかったほどです。
ところが、水だけは実にたくさんありました。山の裂け目という裂け目に、満ちあふれていたのです。どこにもかしこにも、湖や川や小川があります。もちろん、沼や沢もひろびろとひろがっています。
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