初級翻訳・ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記 第4話

ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記

この先生が、あの有名な博士なんですね」
ネネムはそっとつぶやきながら、自分もふところから鉛筆と手帳を取り出して、講義のメモを取り始めました。

その時、教室にパッと電気がつきました。もう夕方になっていたのです。
博士が向こうで叫んでいます。
「では、なぜ夕方になると緑色がはっきりと見えるのか? それは『プルキンエ現象』によるものだ。プルキンエというのは、こう書くんだ!」
博士はミミズがはったような横文字を、いっぺんに三百も黒板に書きました。ネネムも一生懸命に書き写しました。

すると博士は、急に両手を大きく広げて言いました。
「いいか! 空にあるモヤモヤした星雲も、地面にあるあやふやな『ばけもの法律』も、すべてはこの宇宙を支配しているのだ!」
そう言いながら、博士はテーブルの上にぴょんと飛び乗り、腕を組んで口をギュッと結び、キッとした顔であたりを見回しました。
学生たちはみんな興奮して、
「ブラボー! フゥフィーボー先生、ブラボー!」
と叫び、それからバタバタとノートを閉じました。
ネネムもすっかりその場の空気に引き込まれて、
「ブラボー!」
と叫び、自分も固く決心したように口を結びました。

この時、先生はやっとほんの少しだけ笑って、一段と声を低くして言いました。
「みなさん。これからすぐに卒業試験を始めます。一人ずつ私の前を通りなさい」
学生たちは、一人ずつ順番に先生の前を通りながら、ノートを開いて見せました。
先生はそれをちょっと見て、一言か二言質問をすると、チョークで学生の背中に「合格」とか「不合格」とか「おまけで合格」とか「退学」とか書き込みました。
背中に書かれている間、学生たちはいかにもくすぐったそうに首をすくめていました。
書かれた学生は、結果が気になって仕方ない様子で、そっと肩をすぼめて廊下まで出ていくと、友達に背中を読んでもらって、大喜びしたり泣き出したりしていました。

どんどん試験が進んで、いよいよ最後はネネム一人になりました。
ネネムがノートを差し出した時、フゥフィーボー博士が大きなあくびをしたので、なんとノートはスポンと先生の口に吸い込まれてしまいました。
先生はそれを別におかしなこととも思わないようで、ゴクンと飲み込んでしまってから言いました。
「よろしい。ノートは大変よくできている。では、問題に答えなさい。煙突から出る煙には、何種類あるかな?」
「四種類あります。その種類を申し上げますと、黒、白、青、そして無色です」
「ふむ。無色の煙に気づいたところは、実に感心だ。では、形はどうかな?」
「風がない時はまっすぐな棒の形、風が強い時は横にたなびく棒の形、そのほかはミミズのような形になります。煙がとても少ない時は、コルク抜きのようにくるくる回ることもあります」
「よろしい! お前は今日の試験で一番だ。何か望みがあるなら言ってみなさい」
「書記になりたいのです」
「そうか、わかった。私の名刺に住所を書いてやるから、今夜すぐそこへ行きなさい」

ネネムは名刺をくれるのかと思って待っていましたが、博士はいきなりチョークを持ち直すと、ネネムの胸に直接、「セム二十二号」と書き込みました。
ネネムは喜んで丁寧にお辞儀をして、先生の前を一歩下がりました。すると先生が小さく、
「そろそろワラのオムレツができあがる頃だな」
とつぶやいて、テーブルの上にあった革のカバンに、チョークのかけらや講義の原稿などを全部一緒に放り込みました。カバンを小脇にかかえると、さっき顔を出した窓から、ホイッと向こうの向こうにある黒い家をめがけて飛び出していきました。
ネネムは、町を包む黄色い夕暮れの中、物干し台にフゥフィーボー博士が無事に着地して、家の中に入っていくのをしっかりと見届けました。

さて、ネネムが教室を出て階段を降りると、そこには不合格になった学生が山ほどいて、みんな泣いていました。
それもそのはず、三千六百五十三回、つまり、うるう年も入れて十年の間、日曜日も夏休みもなしにずっと落第ばかりしていたのですから、泣かずにはいられなかったのでしょう。
けれども、ネネムは彼らとは全く違います。
元気に大学の門を飛び出すと、自分の胸に書かれた住所を指さして、通りかかったクラゲのようなばけものに、どう行けばいいか尋ねました。
するとそのばけものは、ものすごく丁寧にお辞儀をして言いました。
「ええ、それは世界裁判長さまのお屋敷でございます。ここから二チェーンほど行かれますと、大きな粘土で固めた家がございます。すぐにお分かりになるでしょう。どうか、立派になられた暁には私をお引き立てください」
そう言って、また丁寧にお辞儀をしました。

ネネムはそこから、一時間に一ノット一チェーンという速さで、そちらへ向かって進んでいきました。
するとすぐに道の右側に、その粘土作りの大きな家がしゃんと立っていて、「世界裁判長官邸」という看板がかかっていました。
「ごめんください、ごめんください」
ネネムは赤い髪をかきながら、声をかけました。すると家の中から、ペタペタペタペタとたくさんの、それはもうたくさんのばけものたちが次々にやって来ました。
みんな真っ黒な長い服を着ていて、ネネムに向かっておそるおそる、そして心からの敬意をこめて深々とお辞儀をしました。
「私は大学校のフゥフィーボー先生のご紹介でまいりましたのですが、世界裁判長さまにちょっとお目にかかれますでしょうか?」
すると、みんなは口をそろえて言いました。
「それこそは、あなた様でございます。あなた様こそが、その世界裁判長さまなのでございますよ!」
「なるほど、そうだったのですか。それでは、あなた方は一体なんですか?」
「私どもは、あなた様の部下でございます。判事や検事、その他もろもろの係の者です」
「そうですか。それでは、私はここのご主人様ということですね」
「さようでございます!」
そんなやり取りのあと、ペンネンネンネンネン・ネネムはあっという間に世界裁判長になって、たくさんの部下たちに取り囲まれながら、裁判長室にある海綿(スポンジ)で作られたふかふかの椅子にどっかりと腰掛けました。
すると、一人の判事が恭しくやってきて言いました。
「本日の夜、さっそく開廷することになっている裁判が二件ございますが、いかがいたしましょうか? もしかしてお疲れではございませんか?」
「いや、大丈夫だ。すぐにやろう。ところで、裁判の方針はどうなっているんだ?」
「はい。裁判の方針といたしましては、こちらの世界の住民たちが、できるだけあちらの世界(人間界)へむやみに顔を出さないように取り締まりたいと考えております」
「わかった。それでは、さっそく始めよう!」

ネネムはまっ白なちぢれ毛のかつらをかぶり、黒い長い服を身にまとって、キリッとした姿で裁判室へと歩み出ました。
部下たちもすでに三十人ほど、それぞれの席にずらりと座っています。
ネネムは、正面の一番高い場所にある席にドーンと座りました。
すると、向こうの隅にある小さな戸口から、ばけものの番兵に両脇を引っ張られて引き出されてきたのは、背が高くて目がやけに鋭い、灰色の肌をしたやつでした。そいつは片手にほうきを持っていました。

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