初級翻訳・人形と狼 第1話

人形と狼

おなかのすいた狼が、野原の道を歩いてくると、遠くにひとりの赤ん坊が眠っているのが見えました。
狼は大喜びで駆け寄ってみましたが、それは誰かが落とした大きな人形でした。
「なんだ、役立たずの偽物め」
と、狼は後ろ足でその人形を蹴散らしました。
「おれの食べ物にもならないくらいなら、お前なんかいったい何のために人間の形をして生まれてきたんだ」
すると人形は、ニコニコしながら答えました。
「お気の毒様ですね。
あなたのように、何でも可愛がる心を知らない者には、私は役立たずのガラクタに見えるでしょう。
しかし人間の世界には、私を命よりも大切な友達にしてくださる人がいくらでもいますよ。
私は狼さんのごはんになるよりも、人間のお役に立てるほうがずっと嬉しいのです」

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