初級翻訳・夕映えのむこうの国 第2話

キングスフォード アンナ

目に見え、肌で触れ、耳で聞ける美こそが、真の、唯一実在する美なんだよ。
つまり、感覚で捉えられる美のことさ。そしてそれは、今日、いまここにあるんだ」
旅人は答えました。
「咎めるつもりは毛頭ないのだが、君らは私の王女を見たことがないからな。
だが、私は見た。話す声も聞いた。いつかまた王女の元に帰りたいと願っている。
私が出発しようという時、王女はこう警告してくれた。
この国にはあらゆる手合いの妖怪ども、ハルピュイアやセイレーン、オーガのような奴らがいて襲ってくるから気を付けろと。
そいつらに雄々しく立ち向かい、倒さなければならないのだ。
用心のために教えてほしいのだが、この国のどこにその手の危険な奴らがいるのだろうか?」
すると、若者たちは一層声を上げて笑い、こう答えたのです。
「ああ、なんて馬鹿な旅人なんだ。
本当に脳みそが夢でいっぱいなんだね! セイレーンなんてどこにもいないよ。
あれはギリシャの伝説だろう。そんなおとぎ話を真に受けるのは、昔のギリシャ人と現代の赤ん坊だけだよ! セイレーンにもハルピュイアにも出会うはずがない。
君が言う王女様だってそうさ、会えるのは夢の中だけ。
この国こそが唯一の実在する国で、夕焼けの向こう側の世界なんて何もないのさ」
まさにその時です。旅人のマントの折り目の下で、王女がくれた小鳥が朗々と歌い始めました。
旅人は小鳥を手に取って、話をしている若者たちに見せてこう言いました。
「君らは王女を神話だと言うが、この鳥はその王女から貰ったものだ。
神話が生きた鳥をくれるかい?」
彼らは答えました。
「君は夢を見ているだけじゃなくて、頭もおかしいんだな。
どう見たってその鳥は、君が寝ている間に部屋に飛んできたんだろう。
君はそれを都合よく利用して、幻想の中で王女様からのプレゼントなんて話をでっち上げたんだ。
何かを認識する時、意識っていうのは雲を通すようにしてそれを受け取るものさ。
そこで現実から勝手に物語を織り上げているんだよ」
旅人は疑い始めましたが、それでも踏みとどまって言いました。
「しかし、聞こえるだろう! この鳥の歌の甘さといったら! 誰からも教えられていない野生の鳥なら、こうは歌えないはずだ」
若者たちはこれに大爆笑し、一人が叫びました。
「えっ、普通にチッチチッチ鳴いているだけじゃないか。
そこいらの野鳥と同じだよ。毎日鳴いているツグミやムネアカヒワと変わらないさ!」
別の一人は言いました。「俺があんただったら、そんな鳥、首を絞めちまうけどな。いつもそんなにやかましく鳴くなら邪魔でたまらないよ!」
三人目は「放しちゃえよ、キーキー鳴くから話が聞こえないじゃないか!」
そこで旅人は、その鳥のことを恥ずかしく思うようになってきました。
こう考えたのです。
「私が言ったことは全て、彼らには馬鹿げたものに見えるらしい。
王女の贈り物ですら、彼らの目にはぴぃぴぃ鳴く普通のズアオアトリに見えるのだ。
もし私が夢を見ていたのだとしたらどうだ? 結局これが現実の世界で、あの世界こそが幻想だとしたら?」
鳥は歌いました。
「逃げなさい! 逃げなさい! さもないともう王女様に会えなくなりますよ! 真実の世界は夕映えの門のむこうにあるのですよ!」
しかし、鳥がいま何と鳴いたかを若者たちに尋ねると、「チッチチッチ」「ぴっぴっ」としか聞こえない、と言うのです。そこで旅人は、心から腹を立てました。
たぶん貴方は、その怒りが若者たちに向けられたものだと思ったでしょうが、違ったのです。
旅人は小鳥に対して腹を立て、その鳥を連れている自分自身を恥ずかしく思い、情けなく感じたのです。
そして旅人は鳥を空へと投げ上げ、手を打ち鳴らして追い払ってしまいました。
若者たちも、娘たちも、みんな旅人のそばに立って手を叩き、一緒になって囃し立てました。
「しっしっ、あっちへ行け!」彼らは叫びました。「いっちまえ、この能なしのクソ鳥め! 首を絞められなかったのがめっけもんだと思え、この騒音野郎!」
そして鳥は飛び去りました。遠く、遠く、夕映えのむこうへと。きっと王女の元へ帰り、事の顛末をすべて報告したことでしょう。
旅人は美の女王を崇拝する彼らの列に加わり、心ゆくまで踊り、歌い、宴会を楽しみました。
結局のところ、自分が本当はセイレーンたちの手に落ちてしまったのだと気づかないままに。

三

その間、他の二人の旅人はこうした歓楽を好まなかったので、そのまま先へと進んでいきました。
一人は地面に目を落としながら歩く真面目そうな男で、道端の岩石や灌木の一つ一つを興味ありげに観察し、珍しい草があれば一層しげしげと眺め、花びらをつまみ上げては調べていました。
もう一人は穏やかで感じの良い顔つきをしており、背筋をピンと伸ばして歩き、遥か前方に横たわる大山脈を真っすぐに見つめていました。
まもなく、道の先から二人の旅人に向かって、幟旗(のぼりばた)を掲げた一団が行進してきました。
その旗にはこんな標語が書かれています――「知識は自由なり!」「科学が知る法則に、進歩の法則ならざるなし!」「自由、平等、友愛!」「有用性こそ徳性!」といったような、もっともらしい言葉が他にもたくさん掲げられていました。
最前列の人々はほとんどが眼鏡をかけ、何人かは見すぼらしい学者のような格好をしていました。
真面目な顔の旅人が団体の一人を礼儀正しく呼び止め、何の行進なのかと尋ねました。道端の石や葉にあまりにも気を取られていたため、行進のほとんどが通り過ぎてしまった後のことでした。
問われた男は答えました。「私らは科学の崇拝者であり、我らが神を讃えて厳粛なる儀式を執り行っているのです。これから科学を奉じる高僧たちによる大演説が予定されており、数多くの生贄――子羊、馬、鳩、雌鹿、およびあらゆる種類の動物――が屠られることになっています。彼らは言語に絶する苦痛に苛まれ、拷問され、傷つけられ、焼かれ、バラバラに裂かれて死ぬのです。これらすべては科学の栄光と利益のため。私らは、科学の祭壇から滴り落ちる血に、科学を讃えて立ち上る煙に、歓喜の叫びを上げることになるのです」

「だが、それは恐ろしいことだぞ」真面目な男は嫌そうな身振りで言いました。「野蛮人の乱痴気騒ぎか、狂人の気晴らしのように聞こえる。知的で正気な人間がすることではない」
「逆です」情報提供者は返しました。「私らが知的でかつ正気だからこそ、そこから大きな喜びを見いだせるのですよ。そのような犠牲によってこそ、我らが科学の女神は信託を下してくださるのです。ぐちゃぐちゃになった犠牲者の死体と内臓の中に、我らの預言者たちは求める知識を見いだすのですから」
「どういった知識なのかね?」旅人は聞きました。
「自然の神秘についてですよ」と科学の信奉者は目を爛々と輝かせて叫びました。「生と死についての知識、疾病を治癒させる魔法の力、大宇宙の謎を解き明かす鍵! 我々は犠牲者たちの苦しい死戦のただ中にこれらすべてを学び、読み取るのです。

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