初級翻訳・大宇宙遠征隊 第7話

大宇宙遠征隊

全然スピードが出ないうえに、変なガタガタという揺れが始まって、一向に止まらないんだよ。ほら、あんな風に不気味な震動が聞こえるだろう?」

「あ、本当だ……」

鳥原さんの言う通りでした。ブブブブ、ブブブブと、なんだか気持ちの悪い震動の音が響いています。

「鳥原さん、一体どうしてそんな故障が起きちゃったんですか?」

「それはね、宇宙のチリ(宇宙塵)が襲ってきたからだよ」

「宇宙のチリ……? やっぱりそうなんだ!」

三郎は、またしてもよく分からない「宇宙塵」という言葉にぶつかってしまいました。

【修理がむずかしい!?】

「鳥原さん、宇宙のチリって、一体全体どんなものなんですか? さっきからみんなが宇宙のチリ、宇宙のチリって騒ぐから、ぼくは何がなんだか分からなくて困っているんです」

「なんだ、三ちゃんは宇宙のチリのことを知らないのかい?」
と、鳥原さんは、鼻の頭を指でちょいとこすりながら言いました。

「宇宙のチリっていうのはね、分かりやすく言うと『星のかけら』のことなんだよ」

「星のかけら? じゃあ、流れ星とか隕石(いんせき)のことですか?」

「そうそう! 隕石も、宇宙のチリの仲間だよ。隕石は地球に落ちてくるチリのことだけど、この大宇宙には、地球に落ちてこない星のかけらが、ものすごい数でフワフワ、ビュンビュンと飛び回っているんだ。ときには、それがまるで超特急の列車みたいに、あるいは一斉に撃ち込まれる大砲の弾みたいに、はたまた砂漠の嵐みたいに押し寄せてくるんだよ。いや、人間の言葉ではとても言い表せないくらい、恐ろしいものなんだ。僕たちの船は、運悪くその宇宙のチリの群れに突っ込んでしまったんだね。いや、チリの側から、斜め後ろのものすごいスピードで追いかけてきたんだ。そして、あっという間に『ガン! ガン! ガン!』と後ろから僕たちの船を叩きつけて通り過ぎていった。そのときに、チリの粒が船のガス噴射口を叩き壊していったらしいんだ」

「へえーっ! 宇宙のチリって、そんなにものすごいものなんですね!」

「そうさ。まるで、宇宙の『空飛ぶギャング(匪賊)』みたいなものだよ」

「空飛ぶギャングだなんて、鳥原さんは面白い例えをしますねえ!」

「はははは! さあ、僕もあっちへ行って、みんなの手伝いをしてこなくちゃ!」
鳥原さんは、そう言って作業場所へ向こうとしました。

「あ、鳥原さん! 待ってください!」

「どうしたんだい、三ちゃん。ロケット船が壊れちゃったからって、怖くて震えているのかい? 元気を出さなくちゃダメだよ!」

「震えているわけじゃないですよ! ただ、一刻も早く、本当の状況を知りたいんです。……それで、この船はこれからどうなっちゃうんですか? このままズルズルと、宇宙の果てまで落ちていっちゃうんでしょうか?」

「うーん、そればかりは僕にも何とも言えないな。今、船のみんな全員が力を合わせて、壊れた場所を見つけ出して、一刻も早く修理する方法を必死に考えているところなんだ。もう少し時間が経たないと、詳しいことは誰にも分からないよ。さあ、僕もここで油を売っているわけにはいかないんだ!」

そう言い残すと、鳥原さんは足早に廊下の向こうへと走っていってしまいました。

三郎はしばらくの間、廊下をのぞき見しながら、船の中の慌ただしい様子を眺めていました。しかし、みんなが真剣な顔つきで走り回っていることしか分からず、この船の運命が良い方向に向かっているのか、それとも悪い方向へ転がり落ちているのかは、さっぱり分かりませんでした。

そのため、仕方なく廊下を見るのをあきらめて、元の艇長室へと戻ることにしました。

(こんな大騒ぎに巻き込まれるって分かっていたなら、このロケット船に乗り込む前に、もっと宇宙のことをたくさん勉強しておくべきだったなぁ……)
三郎は、今さらどうしようもない後悔の気持ちでいっぱいになりました。

「そうだ、とにかく早く艇長さんが帰ってきてくれればいいんだけどな……」「そうそう、今度こそ艇長さんの口にコーヒーが入るように、ちゃんと用意しておこうっと」

三郎は、三度目のコーヒー淹れを始めました。
コーヒーは美味しく沸き上がりました。
しかし、艇長の辻中佐は、いつまで経っても部屋へ帰ってきませんでした。

「ああ、もったいないなぁ。今、艇長さんが戻ってきてくれれば、入れたての一番美味しいコーヒーが飲めるのに……」

艇長が戻ってくる気配はまったくありませんでした。
三郎は、なんとかして今度こそ艇長にコーヒーを飲ませてあげたくて仕方がありませんでした。
何か良い方法はないでしょうか。
三郎はしばらく幼い胸を痛めながら一生懸命考えていましたが、やがてパッと良いアイデアを思いつきました。
今淹れたばかりのコーヒーを魔法瓶に入れて、司令室にいる艇長のところへ直接持っていけばいいんだ!

「よし、それが一番いいや!」

三郎は一気に元気を持ち直しました。
さっそく魔法瓶に熱いコーヒーをたっぷり詰め込むと、司令室へと向かいました。
複雑な機械がずらりと並んだ司令室で、汗だくになりながら次々と素早く号令を出していた艇長の辻中佐は、三郎が運んできた大好物の思いがけない差し入れを受け取って、とても喜びました。

「おお、給仕の三郎か! お前は本当に気がきく少年だなあ。ありがとう! これで元気が百倍湧いてきたぞ!」

艇長は、湯気が立ち上る温かいコーヒーをコップに注ぐと、心から美味そうにゴクゴクとのどへ流し込みました。
そこで三郎は、気になっていたことを尋ねてみました。

「艇長さん、この船の故障は直りそうなんですか?」

「うーむ、全力で修理を進めてはいるのだが、宇宙を飛びながら直すのはちょっと無理そうだな。この様子だと、どこか陸地に船を降り着かせて直すことになりそうだ」

「陸地に降りるって……まさか、もう一度地球に戻るんですか?」

「いやいや、地球までは遠すぎて、とても引き返すことはできないよ。降りるとしたら、月の上だな」

「えっ! 月の上に着陸するんですか!?」

【月の世界へ】

月の上に着陸する――。
その言葉を聞いて、風間三郎少年の驚きはとてつもなく大きなものでした。
月といえば、いつも地球から空を見上げて美しく眺めていた、あの月です。
三日月になったり、満月になったりする月。
雲の間に隠れてしまう月や、ウサギがお餅をついているような模様のある月。ううん、それどころか、以前学校の望遠鏡でのぞき込んだときに見た、あの恐ろしいほど荒れ果てた、クレーターだらけの穴ぼこだらけの土地!
その月の上に着陸すると聞いて、三郎の胸は、ドキドキと不思議に跳ね上がるのでした。

「艇長さん、本当に月の上なんかに着陸できるんですか?」

三郎は、辻中佐に聞かずにはいられませんでした。

「ああ、できるとも。かなり難しい作業にはなるが、できないことはない。ワシは一度だけだが、実際に月の上に降り立ったことがあるんだよ」

さすが船を任されている艇長だけあって、辻中佐は月の上に降りた経験があるというのです。

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