初級翻訳・小公女 第22話

小公女

「少なくとも、こんなところにただ住んでいるだけじゃ、耐えられないわ」

アーメンガードは、だんだんとその世界に惹き込まれていきました。

「あなたが話すと、何でもみんな本当のことのように思えてくるわ。あなたは、メルキセデクのことを人間のように言うでしょう?」
「人間なのよ」あれは私たちと同じように、お腹がすけばひもじくなるし、びっくりしたりもするわ。それに結婚だってするし、子供だって持っているの。だから、あれだって私たちと同じように、何も考えていないなんて言えないでしょう? あの目を見ていると、まるで人間の目のようよ。だから私、あれに名前をつけてあげたのよ。」

セーラはいつものように膝を抱えて、床に座っていました。

「それにね、あれは私の友達としてつかわされた、バスティユの監獄のネズミなのよ。」
「まだバスティユごっこをしているの? いつも、ここはバスティユの監獄だと思って過ごしているの?」
「たいていはそう思っているわ。時々、別の場所のつもりになることもあるけれど、バスティユのつもりになら、いつでもすぐになれるのよ。特に寒い日なんかはね。」

ちょうどその時、アーメンガードはベッドから転げ落ちそうになりました。向こう側の壁を、コツ、コツと叩く音が聞こえたからです。

「な、なに? あれは?」
セーラは立ち上がって、まるで演劇のセリフのような口調で答えました。
「あれこそは、隣の監房にいる囚人よ。」
「ベッキーのこと?」
「そうよ。こうなのよ。コツ、コツと二回叩くのは、『囚人よ、そこにいるのですか?』という意味なの。」

セーラは返事でもするように、こちらからも壁を三回叩きました。
「ね、これは、『はい、おります。別に変わりはありません』という意味なの。」
すると、ベッキーの方から、コツ、コツ、コツ、コツと、四回叩く音が返ってきました。
「あれはこうなの。『では、同胞よ、安らかに眠りましょう。おやすみなさい』という意味よ。」

アーメンガードは、うれしさのあまり目を輝かせました。
「まるで、何かのお話みたいね、セーラさん。」
「みたいじゃないわ、本当に物語なのよ。何だってかんだって物語なんだわ。あなただって一つの物語だし、私も一つの物語よ。ミンチン先生だって、やっぱり物語の一部だわ。」

セーラはまた床に座って話し出しました。アーメンガードは、自分がいわば脱走囚のようなものだということも忘れて、セーラの話にすっかり夢中になっていました。そのため、セーラは彼女に、このバスティユに夜通しいてはいけないから、そっと梯子を降りて自分の寝室へ戻るように、注意しなければなりませんでした。

第十章 インドの紳士

しかし、アーメンガードやロッティが、そう毎晩屋根裏部屋に忍んで行けたわけではありません。セーラがいつ行っても屋根裏にいるとは限りませんし、抜け出したあとをアメリア先生に見つかる恐れも全くないわけではありませんでした。

だから、セーラはたいてい一人ぼっちでした。彼女は屋根裏に一人でいる時よりも、階下でみんなの中にいる時の方が、よけいに一人ぼっちな気がしました。かつて「プリンセス・セーラ」として馬車に乗り、女中を従えていた時には、通りがかりの人がみんな振り返って見たものでしたが、今は、使いっ走りで出歩くセーラに目を留める人など誰もいませんでした。ぐんぐん背丈は伸びていくのに、古い服のままで着ているので、形が整わないのは言うまでもありませんでした。

セーラは時々、商店のショーウィンドウに映る自分の姿をちらと見て、思わず吹き出してしまうこともありましたが、時には顔を真っ赤にして、唇を噛みしめ、そこから逃げ出さずにはいられませんでした。

日が暮れて、窓の中に灯りがともると、セーラは通りがかりに暖かそうな部屋を覗いてみるのが日課でした。火の前に座ったり、テーブルを囲んで楽しそうに話したりしている人たちを見て、彼女はよくその人たちのことを想像してみたものでした。

ミンチン女学院のある一画には、五つか六つの家族が住んでいました。セーラはそれぞれの家族と、空想の中で親しくなっていました。その中で一番好きな家族を、セーラは「大屋敷」と呼んでいました。そう呼ぶ理由は、その家の建物が大きいからではなく、その家には人がたくさんいるからでした。

そのたくさんの人たちは、大きいどころか、子供の方が多いくらいでした。太っていて血色のいいお母さんと、太っていて血色のいいお父さんと、これまた太っていて血色のいいおばあさんと、八人の子供たちと、たくさんの召使たち――これが「大屋敷」の人たちでした。大屋敷の本当の名前は、モントモレンシイというのでした。

ある晩のことでした。非常に滑稽なことが起こりました。もっとも、考えようによっては、ちっとも滑稽なことではなかったかもしれません。セーラがモントモレンシイ家の前を通りかかると、子供たちはどこかの夜会へでも出かけるらしく、ちょうど歩道を横切って馬車の方へ歩いていくところでした。

二人の女の子は、白いレースの服に美しい飾帯(さしおび)を着けて、先に馬車へ乗り込みました。それにつづいて、五歳の少年ガイ・クラレンスが乗り込もうとしていました。少年の頬は赤く、目は青く、丸い可愛い頭は巻き毛に覆われていました。あまりの美しさに、セーラは自分の持っている手籠のことも、みすぼらしい身なりのことも――何もかも忘れてしまい、もう一目その少年を見たいという気持ちでいっぱいになりました。
そこで、彼女は思わず立ち止まって、少年をじっと目で追いました。
ちょうどクリスマス前だったので、大屋敷の人たちは貧しい子供たちについての話をいろいろと耳にしていました。
ガイ・クラレンスはその日、そんな話を読んで涙ぐんだほどでした。
ですから彼は、なんとかしてそんな子を見つけ出し、持っていた二十銭銀貨をあげたいと思っていたのです。
彼はその二十銭があれば、貧しい子の一生を救えるものと信じていました。
彼が姉に続いて馬車に乗ろうとした時にも、その銀貨はポケットの中にありました。
乗ろうとして、クラレンスはふと、セーラが飢えたような目つきで自分を見ているのに気づいたのでした。
セーラが飢えたような目をしていたのは、この少年に抱きついてキスをしたいからでした。
けれど、少年は、セーラが一日中何も食べていないからそんな目をしているのだろうと思いました。
そこで彼はポケットに手を入れ、銀貨を握りしめたまま、セーラの方へ歩いていきました。
「かわいそうに。この二十銭をあげるよ。」
セーラはびっくりしました。
しかしすぐに、今の自分は、昔自分が馬車に乗るのを見上げていた乞食の娘たちとそっくりなのだと気づきました。
セーラも、昔はよくそうした娘たちに銀貨を恵んであげたものでした。
セーラは一度顔を真っ赤にしてから、今度は真青になりました。
セーラは、その情のこもった銀貨に、手も出せないような気がしました。
「あら、たくさんですわ。わたくし、本当にいただくわけにはまいりません。

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