私もなんだか魔法にかかっているみたい。
きっと、ただそう見えているだけなのね。
いつまでもそう思っていたい。
でも、どうでもいいわ。
どうでもいいのよ」
セーラは燃え上がる火の前にひざまずき、火に手をかざしてみました。
近づけすぎて、熱さのあまり思わず飛びのきました。
「夢で見ただけの火なら、熱いはずがないわ」
セーラは立ち上がると、テーブルや食器、絨毯に触れてみました。
それから、ベッドの毛布にも触れてみました。
柔らかい綿入りの服を取り上げ、思わず抱きしめて頬ずりしました。
「温かくて、柔らかい。
本物に違いないわ」
セーラはその服を羽織り、スリッパを履きました。
そして、よろよろと本棚のそばへ行き、一番上の一冊を開いてみました。
『屋根裏部屋の少女へ、友人より』
表紙にそう書かれているのを見て、セーラはその上に顔を伏せて泣き出しました。
「誰だか知らないけれど、私を気にかけてくれる人がいるんだわ。
私にも、お友達がいるのね」
セーラは蝋燭を持ってベッキーの部屋へ行きました。
ベッキーは目を覚まし、緋色の綿入り服を着たセーラを見ると、びっくりして起き上がりました。
まるで昔のままの「プリンセス・セーラ」が立っていると、ベッキーは思いました。
「ベッキー、来て見てちょうだい」
ベッキーは驚きのあまり言葉も出ず、黙ってセーラについていきました。
セーラの部屋に入ると、ベッキーは目が回りそうでした。
「みんな本当のことなのよ。
私、触ってみたんだから。
きっと私たちが眠っている間に、魔法使いが来たのね」
十六 お客様
それからその晩、二人がどう過ごしたか、想像できるならしてみなさい。
二人は火のそばにしゃがみこみ、お皿にかけてあった布を取りました。
中には、二人で食べても食べきれないほどのおいしいスープや、サンドイッチ、丸パンなどが入っていました。
ベッキーのティーカップはないので、洗面台のうがい用カップを使うことにしました。
そのお茶の、なんとおいしかったことでしょう。それは、お茶以外の何物でもないほど、温かくておいしいものでした。二人は空腹も寒さもすっかり忘れて、幸せな気持ちでいっぱいになりました。
「一体、誰がこんな素敵なことをしてくださったのかしら? 誰かがあの部屋にいたのは間違いありません。私を思ってくださる方がいるのね。ねえベッキー、その誰かは、きっと私のお友達なのよ」
「あの……」と、ベッキーは一度言葉をためらってから言いました。「お嬢さん、これら全部、消えてなくなったりしないでしょうか? 今のうちに早く食べてしまったほうがいいんじゃありませんか?」ベッキーはそう言うと、急いでサンドイッチを頬張りました。
「大丈夫よ。私もさっき、夢じゃないかと思って暖炉の火に触ってみたけれど、本当に熱かったもの」
お腹がいっぱいになると、セーラは一人では使いきれないほどの毛布を、ベッキーにも分けてあげました。ベッキーは帰る際、何度も振り返っては、貪るように部屋の中を見回しました。
「お嬢さま、これが全部朝になって消えてしまったとしても、とにかく今夜だけは本当にあったことですから、私、決して忘れません」
ベッキーは忘れないようにと、もう一度暖炉やランプ、ベッドや床をじっと眺めました。それから、自分のお腹の上に手を置いて、「この中には、スープとサンドイッチと丸パンがちゃんと入っていったんだわ」と、それだけは確かなこととして言いました。
朝になると、生徒たちも召使たちも、いつの間にか昨夜の出来事を知っていました。みんな、セーラがどんな顔をして出てくるのかと待ち構えていました。セーラはみんなの視線を避けるようにして、まっすぐ流し場へ向かいました。ベッキーはせっせと茶釜を磨きながら、口の中で何かを小声で歌っていました。
「お嬢さん、目が覚めたらちゃんとありましたよ、毛布が。昨夜のままでした」
「私のもよ。私も毛布にくるまりながら、昨日食べ残した冷たいものを食べてきたわ」
「そう、よかったですね」
そこへ料理番が入ってきたので、ベッキーはまた茶釜に顔を近づけて、黙々と磨き始めました。
教室ではミンチン先生が、やはりセーラがどんな顔をして出てくるのかと待ち構えていました。さすがのセーラも、今日はしょんぼりして現れるだろうと思っていたのです。ところが不思議なことに、セーラは血色もよく、微笑みを浮かべて、踊るような足取りで入ってきました。ミンチン先生の驚きといったらありませんでした。
「あなた、自分が今どんなにひどい目に遭っているのか、分かっているの?」
「はい、よく分かっております」
「それなら、そんな風に何かいいことでもあったような顔をするんじゃないよ。生意気な子だね。それから、今日は一日何も食べられないということを、忘れないようにしなさい」
「はい、忘れません」
そう答えながらセーラは、もし魔法のような出来事がなかったら、今頃はひどい空腹で辛かっただろうな、と思いました。
「セーラ、そんなにお腹が空いているようには見えないわね」と、ラヴィニアが囁きました。「まるで朝食に何かおいしいものでも食べてきたような顔をしているわ」
「あの子は、私たちとはどこか違うのよ」ジェシーはフランス語を教えているセーラの姿を見ながら言いました。「私、時々セーラが怖くなることがあるわ」
「馬鹿ね」
セーラはいろいろと考えた末、昨夜起きたことは誰にも言わないでおこうと決心しました。ミンチン先生が屋根裏部屋までやってくれば隠し通すのは難しいでしょうが、しばらくは大丈夫だろうと考えたのです。アーミンガードやロッティは、見張りが厳しくてなかなか会いに来られないでしょう。それに、魔法の神様もきっとこの奇跡を守ってくれるはずです。
「どんなことが起きようと、私には目に見えないお友達がいるのだから大丈夫だわ」
その日は前日よりも天気が悪く、セーラは昨夜の出来事のせいもあって、さらに厳しく辛く当たられました。それでも、セーラはもう何も怖いとは思いませんでした。夕方までには少しお腹も空いてきましたが、また今夜もご馳走が食べられるはずだ、と確信していたからです。
夜が更けて、一人で自分の部屋の前に立ったとき、セーラの胸は期待でドキドキしました。
「もしかしたら、もう全部片付けられてしまっているかもしれないわ。昨夜だけ、ほんの少し私に貸してくれただけなのかもしれない。でも、借りたのは確かな事実だった。夢でも何でもなかったんだわ」
セーラは部屋に入るとすぐドアを閉め、背中を預けて部屋の隅々を見回しました。どうやら魔法の神様は、セーラの留守中にまたここを見舞ってくれたようです。昨夜はなかったものまで増えていました。
低い食卓の上には、またしても美味しそうな食事が用意されていました。しかも今日は、カップも皿も二人分そろえられているのです。炉の上の棚には、見事な刺繍が施された布が敷かれ、いくつかの置物が飾られていました。部屋の醜い部分は、すべて綺麗なカーテンで隠されていました。美しい扇や壁掛けが、鋭い鋲で壁に留めてありました。
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