しかし、世界に類を見ない磁力砲などを使われては、鋼鉄でできているわが軍艦も、弾丸の前の紙細工のように無力になってしまいます」
「ううむ、残念だが、これは困ったことになった」
さすがに武勇に秀でた士官たちも、怪塔ロケットの持つ磁力砲の威力を考えると、非常に暗い気持ちになりました。塩田大尉は、この時、席から立ち上がり言いました。
「こうなれば、我々の選ぶ道はただ一つであると思います。すなわち、大利根博士の秘密室で発見された『あべこべ砲』を再現して、それを軍艦や飛行機に取り付けるのです」
「うむ、そうするより仕方がないが、あのあべこべ砲は壊れているそうではないか」
4
怪塔ロケット一台さえ持て余し気味であるのに、小浜兵曹長からの無電によれば、白骨島には、そのような怪塔ロケットが七、八台もいるという報告なのですから、全く驚くほかありません。頼みの綱である大利根博士発明の「あべこべ砲」は、博士の秘密室の中にありましたが、壊れていて役に立たないという状況でした。塩田大尉は、司令官の前でじっと考え込んでいましたが、やがて決心の表情を浮かべました。
「司令官、あべこべ砲のことは、塩田にお任せいただけませんか」
「なに、任せろというのか。塩田大尉、どうするつもりだ?」
「はい。私は、あべこべ砲をもう一度よく調べてみます。そして、なんとか役に立つように修理してみたいと思います」
「塩田大尉、お前には、あべこべ砲を直せる見込みがあるのか?」
「はい。私はかねてより大利根博士と、新兵器のことについて色々と議論したことがございます。それを思い出しながら、あのあべこべ砲を実際にいじってみたいのです。机の上で考えているより、一日でも早く手を下した方が勝機があると考えます。あべこべ砲が直せるものか、それとも不可能なのか、いずれにせよ、すぐにとりかかった方が答えは早く出るはずです。白骨島をすぐにでも攻略したいのは山々ですし、あの島に上陸後、音信不通となった小浜兵曹長のことも気がかりですが、しかし御国に仇なす怪塔王を本当にやっつけるには、今のところ、このあべこべ砲の研究よりほかに道がありません。ですから、私は我慢して、目を閉じ耳をふさぎ、壊れたあべこべ砲と知恵比べを始めたいのです。ぜひお許しを願います」
「よろしい、では許そう。当分、秘密艦隊の方へ出勤しなくてもよい」
青い牢獄
1
こちらは、白骨島です。勇士・小浜兵曹長は、残念にも怪人団のために頭を蹴られ、気を失ってしまいました。それから後、兵曹長の身の回りにどんなことがあったのか、それは彼には何もわかりませんでした。それからどのくらいの時間が経ったのか、はっきりとは分かりませんが、とにかく兵曹長は一人で意識を取り戻しました。気がついてみると、頭のてっぺんがまるで今にも破裂しそうなほど、ズキンズキンと痛むのです。
「ああ、痛い……」
さすがの兵曹長も、思わず悲鳴を上げました。そっと手を持っていってみると、そこはアンパンを乗せたかのように、ひどく腫れ上がっていました。
「ち、畜生……。よくもこんなにひどい目にあわせやがったな」
兵曹長は、目をパッチリと開けると、あたりをキョロキョロと眺めました。
「はて、ここはどこだろう」
あたりは、電灯一つついていない真っ暗な場所でした。そして非常に寒く、体がガタガタと震えるのです。手探りで周囲を撫で回してみますと、床は固く、そしてジメジメしていました。「なるほど、これでわかった。俺はとうとう怪塔王の一味に捕まって、穴倉かどこかに放り込まれたに違いない。
ちぇっ、残念だ。
無念だ。
帝国軍人として捕虜になるなんて、この上ない不名誉だ。
それに、憤死した青江三空曹の仇も討たないうちに、こんな目にあうとは、返す返すも悔しい――なんとかして、ここを脱出して、自由になってやるぞ」
小浜兵曹長は、ギリリと歯を食いしばり、戦う決意を固めました。
その時、どうしたことか、小浜兵曹長の頭上から、青い光がさっと照らし出されました。
2
頭上から、さっと照らしつけた青い光!
「おやっ――」
と、小浜兵曹長は、上を見上げました。
すると、下から二十メートルもあろうかと思われる高い天井に、一つの青い電灯がついたことがわかりました。
それと共に、今小浜兵曹長のいる室内の様子が、青い光に照らされて、大分はっきり見えてきました。
それは、実に細長い部屋でした。
まるで、煙突の中にいるような気分です。
兵曹長の横たわっている床は円形で、人間がやっと手足を伸ばして寝られるくらいの広さしかありません。
そこから上は、まっすぐに円筒形の黒い壁になっていました。
「ふん、怪塔王が好みそうな造りの牢獄だな」
その黒い壁に、もしや上に登れる梯子のようなものでもあるかと思い、よく気をつけて眺めました。
しかし、足掛かりになるようなものは何一つなく、全くつるつるした壁でした。
その時、小浜兵曹長の頭に、ふと一つの疑問がひらめきました。
「なぜ、今頃になって天井の青い電灯がついたのだろうか」
これは何か、上からピストルでも撃ちかけてくるのではないかと考えられました。
そこで彼は身動きもせず、じっと天井の方に油断なく気を配っていました。
その時でした。
「はっはっはっはっ」
と、突然、破鐘のような笑い声が頭上から響いてきました。
兵曹長は、はっと息をのみました。
「はっはっはっはっ。
ふふん、やっぱり貴様だったのか。
わしのロケットを執念深くどこまでも追いかけてきた飛行機のパイロットだな。
なんだ、変な顔をするな。
ははあ、わしがどこから見ているのかわからなくて、びっくりしているのだろう。
あははは、こっちからは、貴様のそのぐるぐるした目玉が丸見えじゃ」
という声は、間違いなく怪塔王でした!
3
怪塔王のしわがれ声は、天井裏から薄気味悪く響いてきます。
声は聞こえますが、怪塔王の姿は不思議と見えません。
小浜兵曹長は、傷の痛みも忘れて、怪塔王の声がする方をじっと睨みつけていました。
怪塔王は、これから何をしようというのでしょうか。
「あははは、そんな恐ろしい顔をしても、もう駄目だよ。
この牢獄に入ったが最後、二度と外へは出られないのだ。
このへんで、少し早めにお念仏でも唱えておくがいい」
怪塔王の言うことは、相変わらず憎たらしいことばかりです。
この時、小浜兵曹長はキリリと眉を上げ、
「おい、怪塔王! 貴様は俺をなぜこんなところに入れたんだ。
俺が何をしたというのだ!」
「わかっているじゃないか。
貴様は、わしの乗っていた怪塔ロケットを空中で攻撃した。
その時一人だけやっつけたが、貴様を殺し損ねた。
わしはそれを残念に思っていたところ、貴様の方から、この白骨島へ踏み込んできたではないか。
そして貴様は気づいていないだろうが、あの岡の上から、貴様は怪塔ロケットの根拠地をすっかり見てしまっただろう。
こんなところに怪塔ロケットの根拠地があるなんてことは、絶対秘密なんだ。
それを知った以上は、いよいよ貴様を殺してしまうほかない」
「ふふん、そんなことか。
なんだ、馬鹿みたいな話じゃないか」
「なにが馬鹿だ。
こいつ、無礼なことを言う」
「だって、そうだろう。
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