ロナルドとスミスが選ばれました。どちらも元気で、常識に富んだ隊員でした。
二人はこの危険な使いを恐れることなく引き受け、まるで隣の家へ行くかのような気軽さで出かけていきました。
もちろん二人は、携帯無線機を背負って、必要なときにすぐ本艇と連絡が取れるよう用意を怠りませんでした。
二人が出発したあとで、その話を聞いた帆村荘六が言いました。
「あ、それなら、『宇宙の女王』号へ無線連絡を取ってみてはどうでしょう」
「あそこは無線連絡が通じないんだ。そのことは君も知っているはずだが……」と隊長は言いました。
その言葉通り、『宇宙の女王』号は、本艇よりもずっと厳しい取り締まりをガン人から受けていました。
あとでわかったことですが、ガン人は最初、『宇宙の女王』号を手に入れると、たいへん珍しがって、その構造の研究や地球人類の能力を調べるために、艇内はいつも大勢のガン人の学者たちでごった返していたのです。
そして乗組員たちは艇から外へ出ることを許されず、もちろん他の地球人類との行き来も許されず、厳重に捕虜の状態に置かれていました。
ただ例外として、サミユル艇長だけは艇から降ろされ、町に住まわされていました。
その理由は、彼が艇にいるとガン人の仕事がやりにくいからでした。
つまり、艇長を外に出しておいて、ガン人は艇内を完全に自由にいじり回したかったのです。
艇長がいなければ、乗組員たちはどうしていいか困ってしまうからです。
「いや。いまは無線連絡がつくようになっているかもしれませんよ」と、帆村は言いました。帆村は『宇宙の女王』号の状況をうすうす察していました。今はもうガン人たちが艇から引き払っているはずであり、それなら無線連絡も回復しているのではないかと考えたのです。
「なるほど。無線連絡を試みる価値はありそうですね」
テッド隊長は再び無線係を呼び、今度は『宇宙の女王』号へ連絡を取るよう命じました。
**ガスコの最期**
連絡はすぐにつながりました。サミユル艇長の声が即座に飛び込んできたため、無線係は驚き、大慌てでテッド隊長の部屋に通信線をつなぎました。
「やあ、テッド君。どうしたね?」
サミユル博士のほうから声をかけてきました。
「いやあ……」
テッド隊長は面食らってしまい、しばらく言葉が出てきませんでした。
「先生は、いつあちらへ帰られたのですか?」
「あの騒ぎが起きたとき、すぐ戻ったよ」
「なるほど。無事にお帰りになられて何よりです。ところで、これからどうなさるおつもりですか?」
「電話ではちょっと話せないね。とにかく万全の準備を整えておくことだ。死地に陥っても嘆かず、順風に乗っても油断せず。ねえ、そうだろう?」
「はあ……」
テッド隊長は、サミユル博士も自分たちと同じようにチャンスを狙っているのだと察しました。博士もまた、この混乱の中から素晴らしい好機が顔を出すかもしれないと考えているようです。
「先生。お目にかかりたいですね。至急お会いして打ち合わせをしたいのですが、いかがでしょうか」
「けっこうだ。それでは、あと五分もしたらわしが君のところへ行こう」
「えっ、先生が来てくださるのですか? それはありがたいですが、あちらを離れても大丈夫なのですか?」
「まあ、心配あるまい。それに『宇宙の女王』号は、君たちのところから譲ってもらいたいものもあるのでね。とにかく会ってから話そう」
「実は、こちらから隊員のロナルドとスミスを使いに出しました。彼らが到着したら、どうかいっしょになってこちらへお越しください。そうしていただければ、私も安心しますので」
テッド隊長は、老博士の身を案じてそう伝えました。
「ありがとう。それならば、二人が到着するのを待っていよう」
そこで無線は一旦切れました。その通信が終わるのを待ちかねていたかのように、僚艇からの報告が次々と隊長のもとへ届きました。『出航用意』が完全に整ったと知らせてくる艇もあれば、少なくともあと五時間はかかると嘆いてくる艇もありました。隊長は、準備が遅れている僚艇へ、完了した艇から応援を送るように手配しました。
時は流れましたが、待ち受けているはずのサミユル博士はまだ姿を現しません。どうしたのでしょうか。そのとき、三根夫がテレビジョンのモニターを指さして叫びました。
「あッ、隊長! 担架が二つ、こちらへ向かってきますよ!」
「なんだと? 担架が二つだと……?」
見ると、担架が二つゆらゆらと揺れながら、艇の出入り口に近づいてきます。担架には誰かが寝かされています。しかし、担架を担いでいる者の姿は見えません。ただ、長いシャツのようなものを引きずり、首も手足もない奇妙な形のものが担架を取り巻いています。そしてもう一つ、別の奇妙な形のものが担架の前に立って歩いています。それは他のものとは違い、冠のようなものが頭上で輝いていました。
「先頭を歩いているのは、ガンマ和尚みたいですね」と三根夫が言いました。
「ガンマ和尚がね……一体どうしたというんだ?」隊長は不審に思いました。
三根夫は、ガン人の姿がはっきりと見える「変調眼鏡」を取りに自分の部屋へ走りました。彼が眼鏡を手に取り、司令室へ引き返そうとしたその出合い頭に、例の担架が入り口を通り抜けてきました。
「どうしたんだ!」
「なんだ、なんだ!」
隊員たちが驚いて担架の周りに集まってきました。
「テッド博士にお会いしたい。二人の勇士を送り届けにきたのです。わしはガンマ和尚でござる」
冠の下から、特徴のある声が響きました。
そのとき三根夫は変調眼鏡を目に当てることができました。彼はガンマ和尚の顔をはっきりと見たのです。それは噂通り、小熊のような、豚のような、そして人間のようなガン人でした。ガンマ和尚は額にしわを寄せ、眉の間には三本の深い縦じわが刻まれ、垂れた鼻の両脇からは長い白ひげが下がっていました。このガンマ和尚こそ、怪星ガンの最高指揮者だったのです。
ガンマ和尚は「二人の勇士」を送り届けにきたと言います。二人の勇士とは――。
「おや、ロナルドとスミスじゃないか! 大けがをしているぞ。一体どうしたんだ!」
「おい、しっかりしろロナルド! どうしたんだ、スミス!」
隊員たちは仰天し、担架の周りに駆け寄りました。が、そこで、目に見えないぐにゃりとした壁のようなものに突き当たり、「ひゃっ」と悲鳴を上げて後ろへ飛びのいた。
それは彼らが、目に見えないガン人たちの身体に突き当たったからである。
そのガン人たちは、担架を担いでいたのだ。
大宇宙の秘密
ガンマ和尚とテッド隊長の会見は、劇的な光景を呈して、隊員たちをいやがうえにも興奮させた。
司令室の卓を挟んで、両雄は久しぶりの挨拶を交わしたが、
「どうしたというのですか、私の二人の隊員たちの大怪我は……」
と、テッド隊長は悲しげな顔になって、ガンマ和尚に尋ねた。
「わしが、両君に力を貸してくださいと無理にお願いしたのです。相手はガスコと称しているすこぶる悪い奴で、やはり地球人類なんですわい」
「ガスコ?」
ガスコの名が出たので、隊長のそばに立っている帆村荘六も三根夫も、はっと顔を強張らせた。
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