「ええ、馬鹿げているわ。誰が行くっていうの? 自分勝手な男たちは、そこに逃げ込むでしょうね。そしたら私たちはどこにいればいいの? 駄目よ、チェルカソフさん。どこにも行けないわよ!」
「失礼ですが、マダム」タスの記者の男が口を挟んだ。「どんな種類の男が逃亡するんですか?」
「酸っぱい顔をした連中よ。配管やテレビを修理したり、原爆や電気や、そんなものを作ったりするような奴らね」
「ああ」チェルカソフ氏はそう言うと、ブリーフケースを叩いた。そして続けた。「行くのはおそらくロシア人だけでしょうね、マダム。貴女がたは法律を通せましたね。正直に申しますと、私たちは人間を一人月に送った方が良かったのかもしれません。しかし、あなた方のお国がそれをプロパガンダに仕立て上げるかもしれず、そこを危惧しましてね」
マーサはオウムのように口を尖らせた。
「送るべきでしたわ、男を!」最後の言葉は、怒りでグチャグチャに響いた。ポーラとモニカは激しく頷いた。
チェルカソフ氏はブリーフケースを叩いた。
「月探検犬を飼っていた女性たちは、自分が行きたいとそれはそれは願ったものでした。言ってみれば、月探検犬は飼い主の命を救ったのです。これは貴女にとって価値のないことでしょうか?」
マーサは目を見開いた。
「まさか、哀れでか弱い女性を……つ……月に送るつもりだったの?」
「ロシアの女性は頑強です」チェルカソフ氏はなだめるように言った。「沢山の女性が、科学者の女性たちが、志願しましたよ」
マーサはまっすぐに座り直すと、再びオウムのような口をした。太った頬が白粉の下で紅潮している。
「いいえ!」彼女は切り返した。「貴男がどこに話を持っていこうとしているのか分かっています。その手に乗るものですか! 阿婆擦れ女を送れば良かったのよ! ほんの思いつきで、愛する小さな犬を犠牲にするなんて不道徳です」
取り巻きの二人は、親分を尊敬のまなざしで見つめた。
「ほんとう、ただの思いつきで!」ポーラが繰り返した。
チェルカソフ氏の指はブリーフケースの上で、あてもなく入り組んだ模様を描き、彼は脚を組み替えた。
「すべての犬が、同じように愛するわけではありません、マダム。貴女の犬が貴女を愛しているのが、どうして分かるのですか?」
「簡単ですわ」マーサは言った。
「私の可愛いフィッファーロですけれど――強制収容所に連れ去られて、とっても惨めな思いをしていることだけは分かるのですから」「全部、あなた方が悪いんじゃないですか――チェルカソフさん――私がフィッファーロの体をポンポンと叩いてやると、あの子は膝の上に飛び乗って、キスをして、尻尾を振るんです。それだけで……もう、真の愛情なんですから!」
「ああ……おっしゃることは、よく分かります。では、もし厳しい声で叱ったら、その愛犬はどうしますか?」
「仰向けに寝転がって、脚をバタバタさせるんです。哀れで、無防備で、とっても悲しそうな顔をするの。そうされると私の心は溶けてしまって、もうそれで降参です。あなたも経験なされば分かりますわ。これが『愛』というものよ」
モニカは涙をハンカチで押さえた。タスの記者二人が、熱心にメモを取った。
「私たちの間のわだかまりを解消する方法が、きっとあるはずです」とチェルカソフ氏は言った。彼は両脚をそろえて少し前屈みになり、膝の間にブリーフケースを挟んだ。「ところで、犬の歴史について、どれほどご存知ですか?」
「そうね、常に人類の最良の友だったとか、野蛮なインディアンが食用にしていたとか……あの……ええと……」
「真の犬は、マダム、二万年ほど前に家畜化されました。大元を辿るとゴールデン・ジャッカル(Canis aureus)でして、野生種としても現存しています。その間、従順で忠実な性格を求めて計画的な品種改良が行われ、結果として本来なら仔犬の時期にしか見られないような甘えん坊な特徴を、成犬になっても維持するようになったのです。現代のゴールデン・ジャッカルを祖先に持つ犬たちは、もはや自分一人で心を通わせるような秘密の生活を持ちません。彼らは愛し、愛されねばならないのです。さもなければ、死んでしまいます」
モニカが小さく鼻を鳴らした。
「なんて素敵な名前なんでしょう」とポーラが呟いた。マーサは警戒しながらも頷いた。
「ですが、マダム。世の中には『偽の犬』というのもいるのです。シベリアの部族の中には、文明の発展が少し遅れた地域がありまして、彼らは北方の狼、つまりカナイス・ルプス(Canis lupus)を家畜化しました。家畜化が何千年も遅れたために、当然ながら、この『偽の犬』たちには、長期にわたる品種改良の効果があまり表れていません。仔犬の間は愛らしいのですが、成獣になると超然とし、主人に対してのみ忠誠を尽くすようになります。極めて忠誠心が強いため、主人のためなら命を惜しみませんが、そんな主人にさえも外面的な愛情をほとんど示さないのです。尻尾を振ったり、膝の間に頭を乗せたりすることも、滅多にありません。ポンポンと体を叩けるのは、ほんの小さな子供たちだけ。主人以外には誰に対しても一種の、忍耐強い無関心さを見せるだけで、ひとたび危害を加えられそうになれば、即座に自分を守ろうとします」
「なんて恐ろしい動物でしょう、全然犬じゃないわ!」マーサが声を荒らげた。
「文化的見地においてはまさにその通りです、マダム」チェルカソフ氏は同意し、ブリーフケースにのしかかるようにして、さらに身を乗り出した。「しかし、残念ながら彼らも生物学的には犬なのです。ジャッカル由来の犬種のほとんどに、狼の血が忍び込んでいるのですよ。高い頬骨、落窪んだ目、そして犬種の性格の中に、言わず語らずに現れています。例えばチャウチャウには、相当程度狼の血が入っていますね」
「チャウチャウ!」マーサはまたも唇を尖らせた。「大嫌い! 猫と同じくらい嫌いだわ!」ポーラは熱狂的なまでに大きく首肯した。
「しかしながら、貴女の可愛いフィッファーロは、お話にあった通り、恐らくは純粋なゴールデン・ジャッカルの血統で、極めて入念に繁殖されたものでしょう」
「間違いありません。血は水よりも濃いのですわ。モニカ、私はいつもそう言っているでしょう?」
モニカは頷いた。その目は爛々と輝いていた。
チェルカソフ氏は少しずつ、椅子の端までにじり寄ってきた。
「さて、月探検犬ですが、マダム・ストーナリー。あれはライカ種で、チャウチャウ以上に狼の血が濃い犬種です。もし貴女が彼女を地上で仰向けにさせようとしても、彼女は冷たく無関心な様子で、ただ立ち去るだけでしょう」
「まさか。本当なの?」
「マダム、貴女がご存知の狼の特徴というのは、愛すべきジャッカルの特徴によって薄められたもの、例えばチャウチャウに見るようなものに限られます。ですが、ロシアの犬ときたら! もし貴女が月探検犬に一切れの肉を差し出したら、彼女がどうするかお分かりですか?」
「いいえ、教えてちょうだい」
チェルカソフ氏はさらに前屈みになり、奥まった灰色の両眼を大きく見開いた。そして、ほとんど囁きにまで声を殺して言った。
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