初級翻訳・新浦島 第3話

アーヴィング ワシントン

そこには紫色の雲や、あちこちでキラキラした水面の上に浮かんで昼寝をしているような、ゆっくりと進む小舟の帆が影を落としています。その先には青く見える高原があり、最後の方はぼんやりとして、どこまで続いているのか分からなくなっていました。
反対側を見下ろすと、そこは寂しくて荒れ果てた深い谷でした。底の方にある岩にはたくさんのひび割れがあり、所々には崖から飛び出した大きな石も見えました。夕日の光が反射して、わずかにそこを照らしています。

リップはこの景色を眺めながら、しばらくの間、物思いにふけっていました。
あたりにはだんだんと夕暮れが迫ってきて、山々は谷の底に長い青色の影を落とし始めました。
彼は「この様子じゃ、村に着くよりずっと早く日が暮れてしまうぞ」と考え、家に帰った時に奥さんがどれほど怒るだろうかと思って、思わず深いため息をつきました。
リップが「よし、帰るぞ!」と気合を入れて立ち上がろうとしたその時、遠くの方から「リップ! リップ!」と呼ぶ声が聞こえてきました。
あたりを見回してみましたが、頭の上を飛んでいく一羽のカラスのほかに、何も見当たりません。
彼は「気のせいかな」と思ってまた歩き出そうとすると、また同じ声で「リップ! リップ!」と呼ぶのです。
この声が静かな夕暮れの空気に響き渡ると、連れていた猟犬ウルフの毛が逆立ちました。犬はクンクンと鼻を鳴らしながら、リップにすり寄ってきて、何かに怯えるような様子で谷の底をのぞき込んでいます。
リップもなんだか薄気味悪くなって、ふと犬が見つめている方を見ると、岩を踏みしめて登ってくる怪しい人物の姿が見えました。
その人は、背中に背負っている重い荷物のせいか、腰を曲げて歩いています。
こんな人里離れた場所で誰かに出会うなんて、リップも少し驚きました。でも、「きっと近所の村の人だろう」と思ったので、重そうな荷物を運ぶのを手伝ってあげようと、急いで崖を下りていきました。

近づけば近づくほど、その見知らぬ人の様子は不思議なものでした。
背は低いけれど力がありそうなおじいさんで、髪の毛はほうきのようにボサボサと濃く、ヒゲは灰色をしています。
格好は、大昔のオランダのスタイルでした。腰をベルトで締めた木綿の服を着て、ズボンを何枚も重ねてはいています。一番外側のズボンは幅が広くて、両側にはボタンが一列に並んでついていました。
膝のところには紐がついています。
肩に乗せているのは重そうな木の桶で、中にはお酒が入っているようでした。
その不思議な人は手まねでリップを呼び、「少し手伝ってくれ」と頼んでいるようでした。
リップは、この初めて会う相手に対して、少し「怪しいな」と疑う気持ちもありましたが、いつものお人よしな性格から、手を貸してあげることにしました。

不思議な人とリップは、交代で荷物を背負いながら、谷間を登っていきました。
この谷間は、大昔に山の川が流れていた跡のように見えます。
よじ登っていく途中で、時々、遠くの方で雷が鳴るような音が聞こえてきました。
その音は、登りきった先にある岩の裂け目から聞こえてくるようです。
リップは最初この音を聞いた時、立ち止まって耳を澄ませました。でも、「深い山ではよくある、通り雨の雷だろう」と思ったので、また疑わずに進んでいきました。
さて、その岩の裂け目を通り抜けてみると、そこは一つの大きな洞窟のようになっていました。
洞窟の形は劇場の客席のようで、周りは切り立った崖に囲まれています。
崖の上には古い木々が枝を広げて重なり合い、その隙間から、深い青色の空と光り輝く夕方の雲がわずかに見えるだけでした。

リップはこの不思議な人と一緒に登っている間、ずっと黙ったままでした。
「どうしてこんな山奥に、お酒の入った重い桶を運んでいるんだろう?」
その理由は分かりませんでしたが、この不思議な人の姿には、なんだか近寄りがたい、それでいて尊敬しなくてはいけないような雰囲気があって、どうしても話しかけることができなかったのです。
洞窟の中に入ると、そこでまた、あっと驚くような光景が目に飛び込んできました。洞窟の真ん中の少しへこんだ場所に、不思議な人たちが集まって、「ボウリング」のような遊びをしていました。それは、向こう側に立てた尖った木の柱を、こちらから木の玉を転がして倒すゲームでした。

その人たちの服は、見たこともないようなおかしな外国風の格好でした。ある人は短い上着を着て、別の人たちはベストのような服を着て長い剣を腰に下げていました。みんな、さっき荷物を運んでいたおじいさんと同じように、ものすごくダボダボしたズボンをはいていました。

しかも、その人たちの顔はみんなとっても変なのです。ある人は頭が大きくておでこが広く、目はブタのように細めていました。また別の人は、顔のほとんどが鼻なんじゃないかと思うくらい鼻が大きくて、その上には赤い鳥の羽で飾られた、白いとんがり帽子をかぶっていました。みんな、いろいろな形や色のヒゲを生やしています。

その中に一人、リーダーらしき人がいました。日焼けした顔をした、力強そうなおじいさんです。その人はひもで飾られた上着を着て、太いベルトに剣をさし、羽のついた高いとんがり帽子をかぶり、赤い靴下にかかとの高い、花の飾りがついた靴をはいていました。

リップはこの仲間たちを見て、村の教会のシエエクさんの部屋に飾ってあった、大昔にオランダからやってきた人たちが描かれた古い絵を思い出しました。

リップが特に不思議に思ったのは、この人たちは心から楽しんでいるはずなのに、みんな真面目な顔をして、何か秘密でもあるかのように黙りこくっていることでした。ですから、リップが今まで見た中で、これほど静まりかえってどんよりした集まりはありませんでした。

この静かな場所で、時々響くのは玉が転がる音だけです。玉が投げ出されるたびに、山じゅうに山びこが響きわたり、まるでゴロゴロと鳴り響く雷のような音がするのでした。

桶をかついだ人に連れられて、リップがこの不思議な集団に近づくと、彼らは急に遊びをやめて、こちらをじろりと見ました。その生気のない、まるで石や金属で作られた彫刻のような目と、カサカサしてツヤのない顔を見たリップは、心臓がバクバクして、膝がガクガクと震えだしました。

一緒に来た男の人は、桶に入っていたお酒を大きな瓶に分けて入れましたが、それが終わるとリップを呼んで、不思議な人たちにお酒を注いで回るように言いました。リップは怖くて震えながらお酒を注いで出しましたが、彼らは黙ってお酒を飲み干すと、また遊びの方に顔を向けて、リップのことなど気にも留めませんでした。

リップはだんだんと、怖さや恥ずかしさを忘れていきました。彼らが見ていないのをいいことに、こっそりとお酒を味見してみると、それは最高級のジンのような味がしました。リップはもともとのどが渇きやすい性格だったので、一度その味を覚えると、また一口飲みたくなってしまいました。ついつい二度、三度と瓶のお酒を飲んでいるうちに、だんだんと意識がぼんやりしてきて、目がチカチカし、いつのまにか頭ががっくりと垂れ下がってきました。

リップは眠ってしまいました。

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