初級翻訳・リップ・ヴァン・ウィンクル 第2話

アーヴィング ワシントン

女の人はいつの時代もそうであるように、村の奥さんたちも、夫婦げんかが起きるといつもリップの味方をして、夕暮れどきに世間話をするときには、ヴァン・ウィンクルのおかみさんのことをみんなでさんざん悪く言ったものだった。
村の子供たちにとっても、彼がやってくると大喜びで大歓声をあげる大人気の存在だった。
彼は子供たちといっしょになって遊び、手作りのおもちゃを作ってやったり、タコを高くあげるコツやおはじきの上手なやり方を教えてやったりした。それに、こわい幽霊や、魔法使いのおばあさんや、インディアンの不思議な話を長々と聞かせてやったんだ。
彼が村をのんびり歩いていくと、かなりの数の子供たちがまわりにわらわらと集まってきて、上着の裾にしがみついたり、背中によじのぼったりして色んなイタズラをしかけた。だけど、彼は一度だって子供たちを怒ったりしなかった。
それに、このあたりでは、一匹の犬でさえもリップに向かって吠えかかろうとはしなかったんだ。

そんなリップにも、一つだけ大きな欠点があった。それは、何であれ「お金になる仕事」をするのが、嫌で嫌でたまらなかったということだ。
それは別に、一生懸命に働くやる気がないとか、根気が足りないからというわけでは全然なかった。
その証拠に、彼は濡れた岩の上にどっかりと腰を下ろし、タタールの人の槍ほどもある長くて重い釣竿を手に持って、朝から晩までずっと釣り糸をたれていた。一言もしゃべらず、魚が一度も食いつかなくても、まったく平気でいられたのだ。
また、猟銃を肩にかついで、何時間もぶっ続けで、重い足をひきずりながら森を抜け、ジメジメした沼地をわたり、高い丘を越え、谷を下っていく。そうやってクタクタになって、やっと手に入れるのはリスや野バトがほんの二、三羽ということもよくあった。
それでも、近所の人から手伝いを頼まれると、彼は絶対に断らなかったし、どんなに大変な力仕事でも喜んで引き受けた。
田舎の楽しい野良仕事のときには、いつも真っ先に進んで働き、トウモロコシの皮をむいたり、頑丈な石垣を積み上げたりした。
村の奥さんたちも、ちょっとした使い走りをしてほしいときや、自分たちの亭主なら面倒くさがってやってくれないような細かい用事を、いつもリップに頼んでいた。
ひとことで言うと、彼は誰の頼みでも喜んで引き受けるのに、自分自身の仕事となるとダメだった。自分の家の大切な仕事や、自分の畑の手入れとなると、どうしてもやる気が起きなかったのだ。
実際、彼はいつもこうはっきりと言っていた。「うちの畑なんて、いくら手をかけても何の役にも立たないんだ。この土地といったら、このあたりでいちばん厄介な場所で、何をどうやっても一度だってうまくいったためしがないし、これから頑張ったところでうまくいくわけがないのさ」
だから、うちの垣根はいつもあちこちバラバラに崩れていたし、雌牛はどこかへ迷い込んで行方不明になるか、隣のキャベツ畑に入り込んでしまうのだった。
雑草だけは、ほかのどの場所よりも彼の畑ですくすくと早く育った。
そして、彼が何か家の外で自分の仕事をしようと思い立った日に限って、決まって雨が降り出すのだった。
そういうわけで、先祖代々受け継いできた土地は、彼が管理するようになってから少しずつ減っていき、今ではトウモロコシとジャガイモがわずかに育つ小さな畑が残っているだけだった。
それでもその畑は、この近所でいちばん手入れが行き届いていない、ひどい場所だった。
彼の子供たちもまた、ボロボロの服を着て、まるで野山で育つように自由にすごし、まるで親がいない子どものようなありさまだった。
息子のリップ・ジュニアは、父親そっくりのイタズラ小僧で、やがては父親のボロボロの古着といっしょに、その「働かない性格」までまるごと受け継ぐのは確実な様子だった。息子のリップ・ジュニアが、小馬のようにちょこちょこと母親の後について歩いてゆくのがよく見かけられた。父親のお下がりであるだぶだぶのズボンをはいていて、一生懸命にそのズボンを片手でたくし上げながら歩く様子は、ちょうど貴婦人が、天気の悪い日にスカートの裾を持ち上げて歩くのに似ていた。

しかし、リップ・ヴァン・ウィンクルは、いわゆる「おめでたい」人間の一人で、間の抜けた、のんびりした性格だった。
のんびりとこの世を暮らし、白パンであろうと黒パンであろうと、なるべく頭を使ったり骨を折ったりしないで手に入る方を食べ、働いて一ポンドの金を稼ぐよりは、むしろ一ペンスしかなくてもお腹を空かせているほうがよかった。
もし気の向くままにほっておかれたら、口笛でも吹きながら、すこぶる満足して一生を過ごしたことだろう。

しかし、彼の奥さんは、彼の耳元でめったやたらにがなり立てて、やれぐうたらだ、やれのんきすぎる、いまに一家が路頭に迷うようなことになる、と言って責め立てたのだった。
朝も、昼も、夜も、彼女の舌が休まることはなく、彼の言うことやすることは何でも、彼女のとめどなく続くものすごいおしゃべりの格好のネタになってしまった。

リップには、こうした説教に言い返す策がたった一つしかなく、それをあまりに何度もやっているうちにすっかり癖になっていた。
彼は肩をすくめ、頭を振り、空を仰いで、ひとことも口をきかずにじっと耐えるのだった。
しかし、これは決まって奥さんから新たな一斉射撃を浴びせられる引き金になった。
そこで、彼はすごすごと旗を巻いて退却し、家の外へ逃げ出すより仕方がなかった。
じっさい、奥さんにすっかり頭の上がらない亭主の逃げ場所といえば、家の外のほかにはなかったのだ。

家の中でリップの味方をしてくれるのは、犬のウルフだけだったが、この犬もまた主人に負けず劣らず、奥さんにはまったく頭が上がらなかった。
ヴァン・ウィンクルのおかみさんは、彼らを「のらくら仲間」とみなして、意地の悪い目でウルフをにらみつけ、主人がむやみにふらつき歩いているのはこの犬のせいだ、と言わんばかりだった。
じっさい、ウルフはどこから見ても立派な猟犬にふさわしい気性をそなえていて、どんな犬にも劣らず勇敢に、獲物を追って森の中を駆け回った。
だが、いかに勇気があったとしても、絶えまなく四方八方から攻め立てる恐ろしい女の舌には対抗できない。
ウルフは家に入るなりすっかりうなだれてしまい、尻尾を地面に垂れ下げるか、股の間に丸め込んで、まるで絞り首にでもされるようなおずおずとした足取りで歩き、しきりにヴァン・ウィンクルのおかみさんの顔色を横目でうかがうのだった。
そして、おかみさんがほんのちょっとでも箒の柄や柄杓を振り上げようものなら、悲鳴を上げて戸口の方へとすっ飛んで逃げ出すのだった。

年月が経つにつれて、リップ・ヴァン・ウィンクルの形勢はますます悪くなる一方だった。
とげとげした気性は年をとってもやわらぐものではなく、毒舌とは使えば使うほど切れ味が鋭くなる唯一の刃物なのだ。
もうずいぶん前から、彼は家を追い出されると、村の賢人や哲学者、そのほかの怠け者たちが集まる一種の常設クラブのような場所へ通って、自分の心を慰めることにしていた。

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