私たちはどうなっても、あなたさえ幸せになれるのなら、それ以上のことはないんだからね。大王が何と言っても、言いたくないことは黙っていなさい」
それは確かに、懐かしいお母さんの声でした。
杜子春は思わず、目を開けました。
そして、馬の一匹が、力なく地面に倒れたまま、悲しそうに彼の顔をじっと見ているのを見ました。
お母さんは、こんな苦しみの中でも、息子のことを気遣って、鬼たちのむちに打たれたことを恨む様子さえ見せないのです。
大金持ちにはお世辞を言い、貧乏人には口もきかない世間の人たちと比べると、なんとありがたい心でしょう。なんと健気な決心でしょう。
杜子春は、鉄冠子の教えも忘れて、転ぶようにその馬のそばへ駆け寄ると、両手で半死半生の馬の首を抱き、はらはらと涙を落としながら、「お母さん」と一声叫びました。
六
その声に気がついてみると、杜子春はやはり夕日を浴びて、洛陽の西の門の下に、ぼんやり立っていました。
霞んだ空、白い三日月、絶え間なく続く人や車の波――すべてが、まだ峨眉山へ行く前のことと同じでした。
「どうだ。俺の弟子になったとはいえ、とても仙人にはなれそうもないな」
片方の目を細めた老人は、微笑みながら言いました。
「なれません。なれませんが、しかし私はなれなかったことも、かえって嬉しい気がするのです」
杜子春はまだ目に涙を浮かべたまま、思わず老人の手を握りました。
「いくら仙人になれたところで、私はあの地獄の森羅殿の前で、むちで打たれている両親を見て、黙っているわけにはいきません」
「もしお前が黙っていたら――」と鉄冠子は急に厳しい顔になって、じっと杜子春を見つめました。
「もしお前が黙っていたら、俺は即座にお前の命を絶ってしまおうと思っていたのだ。――お前はもう仙人になりたいという望みも持っていないだろう。大金持ちになることにも、元から愛想が尽きたはずだ。では、お前はこれから後、何になったら良いと思うな」
「何になっても、人間らしい、正直な暮らしをするつもりです」
杜子春の声には、今までにない晴れ晴れとした調子が満ちていました。
「その言葉を忘れるなよ。では、俺は今日限り、二度とお前には会わないから」
鉄冠子はそう言うと、もう歩き出していましたが、急にまた足を止めて、杜子春の方を振り返ると、
「おお、そうだ、今思い出した。俺は泰山の南のふもとに一軒家を持っている。その家を畑ごと、お前にやるから、早速行って住むがいい。今頃はちょうど家の周りに、桃の花が一面に咲いているだろう」と、とても楽しそうに付け加えました。
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