初級翻訳・洞熊学校を卒業した三人 第4話

宮沢 賢治

狸が言いました。
「それはな、じっとしていることだ。な。わしはお前の牙を抜くぞ。この牙でどれほどものの命を奪ったことか。恐ろしいことだ。な。お前の目をつぶすぞ。な。この目でどれほどのものを睨み殺したことか、恐ろしいことだ。それから……なまねこ、なまねこ、なまねこ。お前の耳を一寸かじるぞ。これは罰だ。なまねこ、なまねこ。こらえなされ。お前の頭をかじるぞ。むにゃ、むにゃ。なまねこ。この世の中は我慢が大事だ。なま……むにゃむにゃ。お前の脚を食べるぞ。なかなかうまい。なまねこ。むにゃ、むにゃ。お前の背中を食うぞ。ここもうまい。むにゃむにゃむにゃ」

とうとう狼はみんな食べられてしまいました。
そして狸のお腹の中で狼が言いました。
「ここは真っ暗だ。ああ、ここに兎の骨がある。誰が殺したんだろう。殺したやつは、あとで狸に説教されながらかじられるんだろうぜ」
狸は「やかましい、やかましい、蓋(ふた)をしてやろう」と言いながら、狼が持ってきた籾を風呂敷のまま飲み込みました。

ところが、狸は次の日からどうも体の具合が悪くなりました。どういうわけか非常にお腹が痛くて、喉のあたりにチクチク刺さるものがあるのです。はじめは水を飲んだりしてごまかしていましたが、一日一日とそれが激しくなり、もう居ても立ってもいられなくなりました。
とうとう狼を食べてから二十五日目に、狸は体がゴム風船のように膨らんで、それから「ボローン」と鳴って裂けてしまいました。

林の中の動物たちはびっくりして集まってきました。見ると、狸の体の中は稲の葉でいっぱいでした。あの狼が下げてきた籾が芽を出して、だんだん大きくなったのです。
洞熊(ほらぐま)先生も少し遅れてやってきて見ました。そして、「ああ、三人とも賢いいい子供たちだったのに、実に残念なことをしたものだ」と言いながら、大きなあくびをしました。

このときはもう冬の始まりで、あの目の碧(あお)い蜂の群れは、もうみんな自分の蝋(ろう)で作った六角形の巣に入って、次の春の夢を見ながら静かに眠っていました。

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