そこには、バイオリンが一丁、すすけた天井から吊るされていました。
彼がよく見ると、そのバイオリンには、小さな光る星のような真珠が埋め込まれていました。
「あ!」と声を上げて、少年は喜びのあまり、狂わんばかりでした。
そしてさっそくそのバイオリンを買い取ると、自分の腕の中に奪うようにして抱きしめました。
間違いなく、三年前に失くした、おじいさんがくれたあのバイオリンでした。
黄昏時の空に、ツバメが鳴いています。
そのツバメの鳴き声は、故郷の海岸の岩場で鳴いていたツバメの声と重なりました。
「ああ、ツバメが僕に教えてくれたんだ」
薄明かりの下で、少年はバイオリンを抱きしめながら、ツバメが飛んでいく北の空をじっと見つめていました。
松蔵は、歌い手となりました。
かつておじいさんがそうであったように、背中に小さな薬箱を背負い、バイオリンを弾きながら、見知らぬ他国を旅して歩いたのです。
沈みゆく夕日は赤く、海のかなたへと消えていきました。
彼はその夕日を見るたびに、おじいさんのことを思わずにはいられませんでした。
旅を続けるうちに、幾たびか歳月が流れました。
松蔵は、もう青年になっていたのです。
それでも彼は、なんとかして一度、海を渡ってあちら側の国へ行ってみたいという希望を捨ててはいませんでした。
ある年の初夏のころ、彼はついに海を渡り、海のかなたにある大きな島に上陸しました。
そこでは今、さまざまな花が盛りと咲き誇っていました。
彼はその島の町や村で、やはり薬箱を背負い、バイオリンを奏でながら毎日のように歩き回りました。
今度こそ、彼は自分のおじいさんを探さなければなりませんでした。
彼がバイオリンを鳴らしながら道を歩くと、村の子供たちが男の子も女の子もみんな、彼のまわりに集まってきました。
「ああ、この人だ。この人だ」
「僕に、どうかバイオリンを教えてください」
「わたしにも……」
子供たちがこう言って口々に頼むだけでなく、親たちまでが家の外に出てきて、松蔵をじっと見つめていました。
「どうしたことだろう?」と、彼は不思議に思いました。
すると、一人の子供が言いました。
「私たちのおじいさんが亡くなる前に、『もし真珠の星が入ったバイオリンを弾いてやってくる人がいたら、その人は第二の私だと思って、その人からバイオリンを習いなさい』と言い残したのです」
彼はその言葉を聞くと、がっかりしてしまいました。
懐かしいおじいさんには、もう二度と会うことができないのだと分かったからです。
それからというもの、彼は花が咲き、蝶が舞う中で、村のみんなに音楽を教えてあげたのでした。
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