そこから、まっ白なガスのようなものがもうもうと湧き出してきて、それに触れた我が軍の兵士たちは、からだがとろとろにとけて消えてしまうのです!」
「ななんだ、そうだったのか、なるほどなるほど」
「丸木閣下、そんなのんきなことを言っている場合ではありませんぞ!」
「いや、その砲弾なら、われわれ火星兵団が地球へ攻め込んだとき、逆に浴びせられてひどい目に遭ったやつだ。うむ……。察するに、ロロとルルの野郎め、あの蟻田博士からその砲弾の作り方をこっそり教わり、秘密裏に大量生産してペペ山にかくしておいたにちがいない」
丸木はそう言うと、少しばかりおじけづいたような表情を見せました。
「とにかく、我が軍の死者はすでに何千人にも及び、大変な大損害です! どうしましょう、閣下!」
「こいつは参ったな……。まさか、あいつらがそんなものを持っているとは予想していなかったぞ。よろしい、それならば、こちらは地中をもぐり進む『地底戦車隊』を繰り出そう! そして、ペペ山の真下から根こそぎ大爆発させてやるのだ。そうすれば、相手の持っている溶解砲弾もペペ山といっしょに木端微塵に吹き飛ぶし、ペペ山にこもっている反乱軍も一網打尽、全滅するはずだ。ふん、これなら絶対にうまくいくぞ!」
ペペ山に立てこもる王子ロロ公爵の一味をまとめて片付けようと、火星兵団長の丸木は、地底戦車隊に出動の命令を下しました。
その様子をそばで聞いていた千二は、「これは大変なことになったぞ」と強く心配しました。
もしペペ山の下が地底戦車によってくりぬかれ、下から大爆破されたなら、ロロ公爵たちもいっしょに粉々になってしまいます。
「丸木さん! せっかく帰ってきたばかりのロロ公爵を、そんなひどい目にあわせないでください!」
千二は必死になって忠告しました。
「いや、いいんだよ。戦争とはそういうものだ第一、おれに歯向かうような奴らは、一刻たりとも生かしておくわけにはいカんのだ!」
「丸木さん、あなたは自分のことばかり考えて、火星国全体の平和や人々のことを少しも考えていないからダメなんだよ!」
「ふん、いずれはこのおれが火星国全体を支配するようになるのさ。おれが一度命令を下せば、火星兵団は手足のように思い通りに動く。だから、今の火星王よりも、ほんとうはこのおれの方がずっとえらいのさ!」
丸木はすっかり思い上がり、調子に乗っていました。
「丸木さん、そんな考え方は絶対によくないよ。きっといつか、自分のしたことが間違いだったと気づく日が来るはずだ。僕はね、本当の実力もないのに、からいばりをしたり、むちゃくちゃなことばかりする奴が大嫌いなんだ!」
「なんだと! 千二、生意気な口をきいていると、ただじゃすまさないぞ!」
その言い争いの最中にも、はるか遠くの地中から、ごうごうとすさまじい地響きが近づいてきました。
丸木兵団長はその音を聞きつけると、ぴょんと飛び上がって大喜びしました。
「おお、来たぞ! 地底戦車隊だ! さあ、今に見ていろ!」ロロ公爵も、元の王子も、これで灰になって空へまいあがるだろう。
どりゃ、一つゆるゆる見物するかな」
と丸木は、にやりと笑って、ペペ山の方にむきなおった。
71 硝煙の岡
千二少年は、ペペ山がこれからどうなるかについて、しんぱいであった。
しかし、丸木のようすを見ていると、丸木はペペ山の爆破に夢中になっていて、千二のいることをわすれている。
(あ、今だ。
にげだすのは……)
ペペ山のこともしんぱいだが、千二は、早く蟻田博士や新田先生のもとへ、かえりたかった。
それで千二は、丸木のすきをうかがって、そこをにげだした。
にげだしたはいいが、どっちの方へいっていいのか、わけがわからなかった。
「困ったなあ。
さっきは、こっちの方からやって来たように思うが……」
千二は足にまかせてどんどん走った。
わずかの心おぼえが、彼をうまくみちびいて、どうやら元の海岸が見えだしたときには、おどりあがってよろこんだ。
「ああ、よかった」
千二はカリン岬を前にして、海岸に立ってあたりを見まわした。
「おや、博士は? 先生は? どこへいったか、まだ見えない」
浜はがらんとしていた。
博士のすがたも見えなければ、新田先生もいない。
そればかりか、大空艇さえ見えないのであった。
「先生! 博士!」
千二は大きなこえをだして、いくどもよんでみた。
だが、千二のこえは、こだまとなって、かえって来るばかり。
千二はちょっとよわった。
「どうしたらいいだろう」
そのとき、千二のあたまに思いうかんだことがあった。
このカリン岬の下に、秘密の洞窟があることを思い出したのであった。
「ひょっとすると、博士たちは、そこにいるのではなかろうか」
そう思った千二は、なんとかしてそこへはいってみようと思い、洞窟への入口をさがしはじめた。
カリン岬の下の洞窟へは、どこから、はいったらいいのであろうか。
千二少年は、岩山のあたりをあっちこっちとさがしまわった。
だが、その入口はなかなか見つからなかった。
「ああ困ったな。
どうしたらいいだろうか」
千二は、だんだん心ぼそくなって来た。
だが、こんなところでよわい気を出しては、いよいよ死を早めるばかりだと思ったので、彼は胸を叩いて、なにくそと一生けんめいに自ら元気をふるいおこした。
なんべんも胸を叩いているうちに、どうやら元気づきもし、気もおちついて来た。
そこで彼はもう一度砂浜の方へおりていった。
なにか手がかりはないかと、それを見つけるつもりで……。
すると、彼はついに、うれしい手がかりを発見した。
砂浜の上に、大きい矢印が書いてあるのであった。
「千二ヨ、タズネルモノハ、コノサキニアル。
ワレワレは、ナカデマツ」
たずねるものはこの先にある、われわれは中で待つ――と、砂の上に片仮名で書いてあったのだ。
たずねるものというのは、洞窟への入口のことであろう。
中とは、洞窟の中のことにちがいない。
われわれとは、蟻田博士と新田先生のことであろう。
「さっき、二度も三度も、このへんを歩いたんだがな。
さっきは、これが見えなかった。
やっぱり、あわてていたせいだろう。
あわてるのは、そんだなあ」
千二は、はずかしくなって、ひとりでに顔が赤くなった。
矢の方向へずんずん歩いていくと、一つの大きな岩山にぶつかった。
しかし入口はまだ見えない。
千二は、もっと向こうかも知れないと思って、その岩山をよじのぼったが、
「おや、もうこの先は海だ」
と叫んで、がっかりした。
海へ出ては、いきすぎだ。
千二少年は、岩山をまた下りて後もどりした。
その途中、岩山のどこかに割目でもありはしまいかと念入にさがしたのであるが、割目などは一向に目にはいらない。
そうして、そのうちにとうとうもとの砂原におりてしまった。
「これはおかしい。
どうしても、この大きな岩山の、どこかに入口がなければならないのだが……。
はて、困ったなあ」
千二は、しばらく岩山をじっと見上げていたが、そのうちに思い出したことがあった。
「ああ、そうだ。
博士から聞いたところでは、このカリン岬の下の洞窟内には五つの扉があって、それを開くには呪文を言えばいいのだ。
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