「そんなのうそにきまっている!
だいたいロロ公爵は、ここから見えるあのペペ山にこもって、おれたちの攻撃を受けているはずだ。
王城へ行くひまなんかあるもんか。
だから今おれたちがペペ山を攻めたてれば、簡単にロロ公爵をやっつけることができるんだ。
おいアグラス!
うまくやったらうんとご褒美をやるから、早くその地底戦車隊に命令を出して、ペペ山をドカーンと爆破しろ!」
丸木は、ここぞとばかりに大声でわめきちらしました。
しかし、司令官のアグラスは、丸木の言うことになんか従おうとはしません。
「丸木どの。
それはもう無理な話です。
いまペペ山にいるのは、ルル公爵の方なのです。
ロロ公爵――いや、ロロ新しい王さまは、ずっと前に王城にお入りになられたのだ。
私は、ロロ新しい王さまにお目にかかってから、こちらへやって来たのです。
もうあきらめなさい。
あなたのためを思って言っているのですぞ」
司令官はやさしく丸木をなだめましたが、丸木はますます激しくさけび声をあげました。
「そんなばかな話があるか!
ロロだろうがルルだろうが、そんな子どもみたいなやつらに、この火星国をにぎられてたまるものか!
火星国で一番えらいやつが王さまになればいいんだ。
火星兵団をひきいて地球まで行った大英雄はこのおれだぞ!
おれは今すぐ、火星の王さまの位につく!
ほかに王さまを名乗るやつがいるなら、そいつこそニセモノの王さまだ!」
「だめです、そんなことは絶対にだめです!」
「いや、おれは火星王だ!
そしてこの大宇宙をしはいしてやるんだ。
地球なんかバラバラにこわれてしまえばいい!
わしは金星をやっつけ、木星を従え、水星も土星も、みーんな自分の領土にしてやるぞ。
そうしてさらに、ほかの太陽系の星をめがけて、まっしぐらに突進してやるんだ!」
丸木は、どんどんすごい大口をたたいて、えばりちらしました。
まるで頭がおかしくなったように、アグラスがいくら止めても、新しい王さまのロロに従うとはどうしても言わないのでした。
アグラスも、「これではもうどうしようもない」とあきらめました。
「しかたがない。
大砲の用意!
ねらいは、逆賊の丸木だ……!」
アグラスの命令は、大きなスピーカーをつうじて、丸木の耳にもものすごい勢いで響き渡りました。
「なんだ、なんだと!
おれを撃つつもりか!
撃てるものなら撃ってみろ!
そんなことができるものか!」
丸木はまだ強がりを言っていました。
その時、地底戦車隊長のアグラスがついに叫びました。
「撃て!」
隊長の命令が下ると同時に、戦車の大砲は、まるで空も地もバラバラにくずれ落ちるようなすさまじい音をたてて、一斉に砲弾を発射しました。
砲弾は、丸木が腕を組んでドヤ顔で立っていた小高い岡にズドンと命中し、ババババッとものすごい勢いで大爆発を起こし、もくもくと立ちこめた黒い煙が、あっという間にその岡をすっぽりと包み込んでしまいました。
丸木の体はいったいどうなってしまったのでしょうか。
しばらくすると、煙は風にふかれてペペ山の方へと流れていきました。
煙がはれて、岡の様子が見えてきました。
しかし、岡の形はすっかり変わってしまっていました。
岡の上にあったのは何だったでしょう。
そこには、見るも無残にグチャグチャに掘りかえされた、大砲のあとが残っているだけでした。
もちろん、丸木の姿はどこにも見当たりません。彼のトレードマークだった大きな麦わら帽子の、焼けこげた切れ端すら一枚も落ちていませんでした。
丸木の体は、まるごと消えてなくなってしまったのです。
自分を大英雄だと思い込み、オレ様こそが火星の王さまだと大きなことを言っていた丸木も、ついに最後は煙となって消え去り、あとには何の痕跡も残らなかったのでした。
アグラスはそこで全軍に命令し、どっと勝どきの声をあげさせたのです。
72 大団円
丸木がついにあわれな最期をとげたことは、火星国の王城にもすぐに伝わりました。
新しい王さまのロロは、その戦いの様子を、テレビ画面でぜんぶ見ていたのです。
そこで、ロロ王さまの使いの者が、地下の洞窟へとやって来ました。
使いの者は言いました。
「丸木は、とうとうあわれな最期をとげました。
そして火星国は、新しい王さまのもとで、すっかり平和におさまりました。
どうかご安心のうえ、今すぐ王さまのお城へおいでください。
ロロ新しい王さまが、いまかいまかとお待ちかねでございます」
博士はそれを聞いて、大喜びしました。
「おお、それはなんとめでたいことだ!」「それでこそ、わたしたちが一生懸命がんばったかいがあったというものです。
さあ新田さん、千二君、新しい王さまになったロロくんに、おめでとうを言いにいこうじゃないか!」
「はい、よろくろんでおともします。
千二君も、いっしょに行くよね?」
「うん、先生、ぼくも行くよ!
火星国の王さまのお城って、いったいどんなところなんだろう、早く見てみたいなあ!」
そこで三人は、新王ロロの使いの者にお願いして道案内をしてもらい、その後ろについていきました。
洞窟の外に出ると、そこにはきれいな色に塗られた、まるでおやつのサヤエンドウのような形のロケットが待っていました。
三人はさっそく、そのロケットに乗り込みました。
すると、するすると音がして、波のような模様の大きなふたがスーッと引き出され、千二たちの頭の上をすっぽりと覆いました。
ロケットは、まるでサヤエンドウのさやに入ったような形になりました。
このロケットは乗り心地がとってもよくて、見るみるうちに空へと飛びあがり、雪をかぶった高い山の上をフワッと飛びこえ、それから、緑色のじゅうたんを碁盤の目のようにきちんとしきつめたような、きれいな緑地帯の上をビューンと走り抜けていきました。
しばらくすると、その向こう側に、こんもりと木が茂った、ものすごく大きな森が見えてきました。
使いの者がその森を指さして言いました。
「あそこに大きな森が見えますね。
あれが王城です。
新しい王さまのロロさまが、そこでお待ちかねですよ」
ロケットは、その王城の森の入り口に、フワリと静かに着陸しました。
そこには、蟻田博士たちをむかえるために、位の高い役人や軍人たちがずらりと並んで待っていました。
彼らは、すきとおった長いドレスのような服を着ています。
千二から見ると、だれもかれもみんな同じような顔に見えました。
首相のモンモンが前にすすみ出て、博士に挨拶をしました。
「あなたが蟻田博士でいらっしゃいますね。
ロロ王がお待ちかねです。
さあ、こちらへどうぞ……」
森の中のふしぎな景色に、千二はびっくりして目を丸くしました。
空から見下ろしたときは地球の森と同じように見えたのに、こうして実際に地上から森の中に入ってみると、地球の森とはまったくちがっていたのです。
なんという名前の木なのかはわかりませんが、左右から大きな根っこが伸びていて、それが複雑に組み合わさり、まるで大きなカゴをふせたようなドームの形を作っていました。
その正面には、まるで門のような入り口がポッカリとあいています。
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