そして、口々にこんなことを言ってからかってきた。
「おじさん、四苦八苦の姿だねえ――」
「アツハツハ……あの顔つき!」
「だめだめ、もう引き返せないんだからね。」
「なんてだらけない格好なんだろう、意気地なしだなあ!」
「男のくせにライフボート役は出せないよね。」
「ちょっと、その腰の動きは何かのおかしなダンスに似てない?」
「野蛮だなあ!」
僕は言い返す余裕もなくて、まったくもう、しどろもどろになりながら、見栄も外聞もなく顔をゆがめ、足を曲げ、腕を大きく振って、まるで変てこなフォックストステップでも踏んでいるみたいに、今にも目が回りそうだった。
「やめておけばよかった。」――「自分の家で昼寝でもしていればよかったのに!」――「何の何の、もっと走れ、ここは砂漠だ、砂漠だ! どうせ砂漠なんだから!」
僕は苦しまぎれに口から出まかせの言葉をわめき散らしたり、行進曲を口ずさんだりしながら、一目散に走り続けた。
いくつものボートが木の葉のように水の上に浮かんでいて、渚の人々や、真っ青な空や、赤い旗や、白いパラソル――などが、まるで花びらのように僕の目の前でパッと光って通り過ぎた。
そして、
「もっと早く走らないから、熱いんだよ。」
「身振り手振りばかり大げさで、ちっとんだめなんだから。」
「ふざけてるんじゃないの?」
「あそこにきれいな芸者さんがいたから、こっちに来るのが本当は嫌々だったんだよ、絶対に!」
「そうそう、さっきから横目ばかり使ってたぜ!」
「チェッ、嫌になっちゃうな!」
そんな声が、やっぱり花びらのように四方から降ってきて、どこが海で、どこが陸なのか、ふと見当がつかなくなるような錯覚にとらわれた――と思ったけれど、それは僕がもうあと二、三歩で波打ちぎわにたどり着こうというところで、思いきり勢いをつけてトンボ返りをしたその瞬間、耳のなかにバラバラと残っていた、さっきからの彼らの笑い声だったんだ。
――だけど僕は、水の中に頭から飛び込んで、すぐに顔を出すと、そんな苦しみも、そんな言葉もすっかり忘れて、
「さあ行こう!」
と言ってオールを握りしめた。
ふと振り返ってみると、白い砂地を、変な足取りで走ってくるおかしな人影がいくつも見えた。
――砂があまりにも真っ白に光っているものだから、走っている人たちがまるで氷の上を滑っているみたいに見えたりもしたのだった。
初級翻訳・熱い砂の上 第2話
熱い砂の上
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