初級翻訳・狐と猫 第1話

グリム ヴィルヘルム・カール

ある日のこと、猫が森の中でキツネさんとばったり出会いました。
「キツネさんは頭が良くて世の中に慣れているし、みんなから尊敬されているんだ」と猫は考えたので、愛想よくキツネに話しかけました。
「キツネさま、こんにちは! ごきげんはいかがですか? 景気はいかがですか? 暮らしにくい世の中になりましたけれど、キツネさまはどんなお生活を送っていらっしゃるのですか?」
 キツネは、それはそれは威張りくさって、猫のことを頭のてっぺんから四本の足の先までじろじろと眺めているばかりで、どうにか返答をしてやったものかどうか、しばらくは見当もつきませんでした。
やっとのことでキツネが言いました。
「なんだと! おまえなんか、ひげのお手入ればかりしているけちな奴で、ぶち模様で、マヌケで、腹ペコのネズミ捕りじゃないか!
一体何を考えて、この俺様に向かって『ごきげんいかがですか』なんてぬかしやがって、図々しいやつだ。
おまえは一体、何を学んできたんだ? おまえにできる技は、いくつあるっていうんだ?」
「わたしにできることは、たった一つしかありません」と、猫は小さくなって答えました。
「どんな技なんだ?」と、キツネが尋ねました。
「犬たちがわたしを追いかけてまいりましたときに、木の上に登って自分の身を救うことができます」
「それだけか!」と、キツネは言いました。「俺様なんてな、できることが百もあるんだぞ!
そのうえ、おまけに知恵がいっぱい詰まった袋まで持っているんだ。
かわいそうなやつだなあ、俺について来い! 犬たちから逃げ出す方法をおまえに教えてやるよ」
 そのとき、猟師が犬を四匹連れてやって来ました。
猫は、すばやく木の上へ飛び上がって、何本もの太い枝やこんもりとした葉っぱが自分の体をすっぽり隠してくれる枝のてっぺんへと座り込みました。
「袋の口をお解きなさいな、ねえ、キツネさま、袋の口をお解きなさいな!」とキツネに呼びかけましたが、そのときにはもう、犬たちはキツネを捕まえて、しっかり押さえつけていました。
「どうしたことでしょうねえ、キツネさま」と、猫が大きな声をあげました。「あなたはできることが百もおありだというのに、身動きもできないなんて。
あなたがわたしのように木登りをおできになりましたら、惜しい命を落とすこともなかったでしょうに」

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