なにしろ、広葉樹たちは夏の間しか着物を着ていられないのに、ぼくたちの家族ときたら、夏でも冬でも、緑の着物をずっと着ていることができたんですからね。
ところが、そこへ木こりがやってきて、大革命が起きたってわけですよ。
それで、ぼくたちの家族は、ちりぢりばらばらになってしまったんです。
いちばんの本家は、大きな船のメインマストになりました。
その船は、世界中どこへでも航海できるくらい、立派な船なんですよ。
ほかの枝も、それぞれ別の地位につきました。
ところでぼくたちは、こうして、下の階級の一般の人たちのために火をつけてあげる役目を持っているんです。
まあ、こういうわけで、ぼくたちみたいな上の階級の人間が、こんな台所にやってきたんですよ』
『ぼくは、あんたたちとはずいぶん違うよ』と、マッチたちのそばにいた鉄なべが言いました。
『ぼくは、世の中に生まれてきてからというもの、何度も磨かれたり、煮られたりしてきたんだ。
ぼくは、長持ちするようにと、そればっかり心にかけている。
本当のことを言えば、この家では、ぼくが一番の働き者さ。
ぼくのたった一つの楽しみは、ご飯のあとで気持ちよくさっぱりして、棚の上に座り、仲間とおもしろいおしゃべりをすることだよ。
けれど、手おけくんだけはときどき中庭へ降りていくから別としても、ぼくたちはいつも家の中でばかり暮らしている。
ぼくたちに新しいニュースを持ってきてくれるのは、市場に行く手かごくんだけなんだ。
ただ、この人は政治とか世の中の話をしだすと、ひどく過激になってしまうがね。
まったくのところ、ついこのあいだも、年老いたつぼがその話を聞いてびっくりして、転がり落ちてこなごなになってしまった始末だよ。
あの人は、危険な考え方を持った人だ!』
『おまえさんは、すこししゃべりすぎるよ』と、火打箱が言いました。すると、火打がねを火打石にカチリと打ちつけたので、火花がパチパチと飛び散りました。
「ねえ、みんなで今夜を楽しく過ごそうじゃないか!」
「それがいいね。じゃあ、誰が一番上品か、そのことについてお話ししましょうよ」と、マッチたちが言いました。
「いいえ、あたしは自分のことを話すなんて、いやだわ」と、土なべが言いました。
「それよりも今夜は、何か出し物でもなさっては? あたしが最初に何かお話ししますわ。みなさんも経験したことがあるような、よくご存じの、とっても面白いお話ですよ。バルト海のほとり、デンマークにあるブナの森のそばでのお話です――」
「すばらしい始まりだね!」と、お皿たちが声をそろえて言いました。「きっと大好きなお話になるよ」
「あたしは、ある静かな家庭で若いころを過ごしました。その家では家具はピカピカに磨かれ、床はいつも丁寧に洗われていて、カーテンは二週間ごとに新しくてきれいなものに取り替えられていたものです」
「きみの話は、なんて素敵なんでしょう!」と、ほうきが言いました。「話しているのが女性だってことはすぐにわかるよ。聞いていて、どこか清らかな気持ちになるね」
「まったくだ、みんなそう思うだろうよ」と、手おけが言いました。そして嬉しさのあまりピョンと跳ねたので、床の上に水がピシャリとこぼれてしまいました。
土なべは話を続けました。その結末も、始まりと同じくらい素敵なものでした。お皿たちはみんな大喜びで、ガチャガチャと音を立てました。ほうきは砂穴から緑色のパセリを持ってきて、それで花輪のように土なべを飾りました。こんなことをすれば他の仲間が怒ることは分かりきっていましたが、ほうきはおなかの中でこう考えたのです。「今日ぼくがあの人を飾ってあげれば、明日はあの人がぼくを飾ってくれるだろう」と。
「じゃあ、あたしが踊るわ!」と火ばしが言って、踊り出しました。おや、おや! どうしてあんなに片足を高く上げることができるのでしょう。向こうの隅にあった古い椅子カバーがそれを見ると、思わず感心してほころんでしまいました。
「あたしも花輪で飾ってもらえるかしら?」と火ばしが言うと、そのとおりに飾ってもらいました。
「まったく、つまらない連中ばかりだ!」と、マッチたちは思いました。
今度はお茶わかしが歌を歌う番になりました。ところが、お茶わかしは「あたし、今かぜをひいていて。それに、お湯が煮立っている時でなければ歌えないの」と答えました。でもそれは、ただお上品ぶって言っているだけのこと。つまり、ご主人様たちがいるテーブルの上でなければ歌いたくなかったのです。
窓のところには、女中さんが字を書くときにいつも使う古いペンが置いてありました。このペンについては特筆すべきことは何もありませんでしたが、ただインキつぼの中に深く浸かっていることを自慢に思っていました。
「お茶わかしさんが歌いたくないなら、それでもいいじゃありませんか。表のかごの中には歌えるナイチンゲールがいますよ。あの人は教養はないけれど、まあ、今夜は悪口を言うのはよしましょうよ!」
「それは断じていけないわ」と湯わかしが言いました。この人は台所の歌い手で、お茶わかしとは腹違いの姉妹だったのです。「あたしたちの仲間でもない、あんなよその鳥の歌を聞くなんて! そんなの愛国的とは言えないわ。市場へ行く手かごさんに決めていただきたいわ!」
「実に不愉快だ!」と、市場へ行く手かごが言いました。「ぼくがどれほど不愉快か、誰にも想像できないだろう。いったいこれが、今夜を楽しく過ごす正しいやり方なのかね? もっと家の中をきれいに、きちんとしておくほうが大事じゃないか。みんなそれぞれ、自分の場所へ帰るべきだ。ひとつ、ぼくが指図をすることにするよ。そうすれば少しはよくなるはずだ」
「そうだ、一騒ぎやらかしましょう!」と、みんなが口々に言いました。
そのとたんに、ドアが開きました。女中さんが入ってきたので、みんなはしーんとして、誰ひとり口を利くものはいませんでした。しかし、そこにいるお鍋たちはみんな、心の中で自分にできる力や、自分がどれほど上品かということを考えていたのでした。『そうだ、わたしがそのつもりになっていたら』と、みんなは思いました。
『きっと、おもしろい晩になっていたろうに!』
女中さんがマッチを取って、火をつけました。
――おやまあ、マッチはパッと火花を散らして、明るく燃えあがったではありませんか。
『さあ、これでわかったでしょう』と、マッチたちは心の中で思いました。
『ぼくたちが一番なんだってことが! なんて輝いているんだろう! なんて明るいんだろう!』――
こうして、マッチたちは燃え尽きてしまいました。
「すてきなお話でしたわ」と、お妃さまは言いました。
「まるで、お台所のマッチたちのそばにいるような気がしましたわ。
分かりました。
娘は、あなたにあげましょう」
「よろしい」と、王さまも言いました。
「月曜日に、娘をあなたにやることにしよう」二人は商人の息子を「あなた」と呼びましたが、もうすっかり家族の一員になったつもりでそう言ったのです。
こうして、結婚式の日取りが決まりました。
そしてその前夜、町じゅうに明るい明かりが灯されました。
みんなは、おいしいパンやビスケットを好きなだけもらいました。
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