初級翻訳・紅すずめ 第2話

小川 未明

すずめは木の枝に止まっては、あのこまどりの聞き覚えのある歌声がどこからか聞こえてこないかと耳を澄ませました。そして、こちらの林からあちらの林へと伝い歩いて探しました。ちょうどそのとき、以前会ったあのからすに出会いました。

「からすさん、からすさん、いいところでお目にかかりました。お元気そうでなによりです」と、すずめは声をかけました。

からすは首をかしげてじっとすずめを見ていましたが、「ああ、いつかのすずめさんでしたか。ずいぶんと姿が変わったので、一瞬わかりませんでしたよ。羽の色がすっかり赤くなりましたね」と、からすは言いました。

すずめは驚いて、自分の体を見まわしながら「私が、赤くなったとおっしゃるのですか?」と聞き返しました。

「あなたには、それがわからないのですか」と、からすは笑いました。

「なるほど、私の姿は変わったのかもしれません」

「空を飛びすぎて、日に焼けたんですよ」と、からすは言いました。

すずめは急に悲しそうな声を出して答えました。「私は、早く太陽のおそばへ行きたいと思っているんです。そして、何かの役に立つ立派な鳥になりたいのです。それで、あの時のこまどりを探しているのです」

すると、からすはまた、からからと笑いました。

「おまえさん、あのこまどりの言ったことを本当に信じていたのですか? もしそうなら、実にお気の毒なことだ。あのとき、こまどりがいい加減なことを言ったのは、私を恐れて、私にへつらうために出任せを言っただけのことだよ。私は普段、あのおしゃべりなこまどりを少しからかってやろうと思っていただけなんだ。どうして私の先祖が太陽を綱で引いたものですか。本当にこまどりは、嘘をつくのが得意な名人ですよ。あなたは今まで、それを信じていたのですか?」

からすは、あきれかえったような顔つきで言いました。

すずめは二度びっくりしました。そして、長い三年の間の自分の苦労がすべて無駄であったことを知り、深く嘆き悲しみました。「からすさん、私は三年の間、空の上へ飛んでいく練習を積み重ねてきました。
そして今では、雨が降ろうと風が吹こうと、決して負けないだけの力を身につけたのです。
それなのに、その苦労もすべて、何の役にも立たなくなってしまったのでしょうか」
と、すずめは今にも泣き出しそうな声で言いました。

「どんな鳥であっても、太陽が輝くあの場所までたどり着ける鳥なんていませんよ。
それにすずめさん、あなたは今のその姿になってしまったら、もう故郷へ帰ることはできません。
誰もあなたを、自分たちと同じ仲間だとは認めてくれないでしょうから」
と、からすはひどく気の毒そうな顔をして言いました。

紅すずめは黙ったまま、しばらくの間どうすべきか思い悩んでいましたが、やがて南にある故郷へは帰らず、北の方角を目指して飛び去っていきました。
すずめは、しらさぎやいわつばめたちが待つ、あの青く澄み渡った海のある場所へと、再び帰っていったのです。

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