初級翻訳・虹猫と木精 第2話

ファイルマン ローズ

あれは本当に悪いやつさ」

「じゃあ、もう一つ聞くけどさ」
と、虹猫は話を続けました。
「あの薔薇は、自分が背が低くて、天までとどくことができないのを、それがすごく悔しくて、他のみんなをねたましがっているって聞いたけど、それも本当かい?」

「本当だよ! いつもぶつぶつ小言を言ったり、どなり散らしたりして、近所じゅう大迷惑なんだ」

「ふむ」
と言って、虹猫は腕を組み、しばらくの間なんだか難しく考えこんでいました。
「そのやぶ薔薇の花びらで、妖精の靴が作れるだろうか?」
と、虹猫は少し経ってから切り出しました。

「きれいなのができるよ! でも、色が白だから使えないんだよなぁ」
その頃のやぶ薔薇は、妖精の国でも、ほかの国でも、みんな真っ白ばかりだったのです。

「まったく、そのとおりだね」
と、虹猫は言いました。
「ところで、その白を赤に変える工夫があるんだよ。
マンドリンを一台、貸してくれないか?」

「うん、貸すとも!」
と、木精は急いで走って帰りましたが、まもなく、銀や象牙(ぞうげ)、真珠貝などをちりばめた、とっても美しいマンドリンを一台持って戻ってきました。

「やあ、ありがとう。じゃあ、三十分もしたら、君が必要としている薔薇の花びらを持ってくるからね」

虹猫はそう言うと、マンドリンを首にかけて、いそいそと森の方へ出かけていきました。

しばらくして、虹猫はウマオイ谷にやって来ました。やぶ薔薇のトゲが届かないくらいの安全なところにちょこんと腰を下ろすと、マンドリンの調子を合わせて、次のような歌を面白おかしい節回しで歌いました。

カシの木は
天まで腕を伸ばす、
マツの木は天まで頭をあげる
細いカバの木は
すっきりした貴婦人、
ポプラの姿のなよなよしさ
だがいったい誰だろう?
そこの、ちっぽけな、
いじわるは
誰だろう、ああ誰だろう?
そこの背の低い変てこな木は?

虹猫がこれを歌い終えないうちに、やぶ薔薇は真っ赤になって怒り出しました。
その場にじっと立っていられないほど頭にきたと見えて、体中をブルブルとふるわせました。

虹猫はそっちには一瞥(いちべつ)もくれず、第二節を歌いました。

ニレの木は王様のように立派だ、
ドロの葉は踊ったり、歌ったり、
ブナの奥さん、きれいな奥さん、
クリの電灯はぴっかぴか、
だがいったい、誰だろう?
その膝までもとどかない、
頭が白くて、足曲がり、
いったいどうしたわけなんだろう?

歌が進むにつれて、やぶ薔薇はますます怒りで顔を真っ赤にしました。

虹猫が、
「いったいどうしたわけなんだろう」
と、歌の締めくくりを歌うときには、本当にいい声でした。
おまけに節回しもとっても面白かったのです。

けれども、やぶ薔薇の方では、そんな歌のうまさになんて気づきもしません。
ただもうカンカンに火のようにおこるものですから、白い花びらはだんだんと美しい石竹色(せきちくいろ:鮮やかなピンク色)に変わっていきました。
あんまり激しく身をふるわせるものですから、しまいには花びらが、まるでうす紅色の雨のようにパラパラと地面に散り落ちました。

虹猫はもう、のんびりしているヒマはありません。
歌の続きを口ずさみながらも、足の続く限り猛スピードで木精の頭のところへ走って戻りました。

そして、必要な材料はウマオイ谷に行けば手に入るとみんなに知らせました。
木精たちがぞろぞろと出かけていき、地面に落ちたやぶ薔薇の花びらを一生懸命に寄せ集めて持ち帰りました。

こうしてついに、女王さまはバラ色の靴を御殿中の人たちみんなにはかせることができたのです。
大喜びした女王さまは、虹猫に「いつまでも好きなだけ木精の国にとどまっておいでなさい」と言ってくださいました。

けれども、虹猫は「もっともっと旅がしたいんだ」と言って、それを丁重に断りました。
木精たちはたくさんのお土産をくれましたけれど、虹猫はその中から、ただ「魔術の井戸の水」を小ビンに一杯だけもらいました。
この水は、ほんの一滴だけ目につけると、なんと石の壁をすーっと通り越して、向こう側にあるものがハッキリ見えるという、とっても便利なものだったのです。また、マンドリンはぜひ持っていくようにと言われたので、虹猫はそれもありがたくもらっていきました。
それからというもの、あのやぶ薔薇は、うす紅色のきれいな花を咲かせるようになったのでした。

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