初級翻訳・青い草 第2話

小川 未明

「兎追いしかの山 小鮒釣りしかの川」
「夢は今もめぐりて 忘れがたき故郷」

道を急ぐ人々の中には、立ち止まってじっと耳を澄ます青年がいました。
また、一人の女の人もいました。
その人たちは、歌が終わるまでずっと聞き入っていました。

「志をはたして いつの日にか帰らん」
「山は青き故郷 水は清き故郷」

父親が歌い終わると、あちらからもこちらからも、お金が二人の前に落ちてきました。
義坊は拾うのに夢中でした。
やがて、草の白い花が、薄暗がりの中でほんのりと見えなくなる頃、哀れな父親の袖にすがりながら、勇んで帰っていく子供がいました。
それは義坊です。
沈みがちに歩く父親に向かって、
「ねえ、お父ちゃん、今日はよかったね。また明日もあんな歌を吹きなさいよ」と、言ったのでした。

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