広くて、広くて、野原は一面まっ白な雪におおわれていました。
子供はその雪の中を、おばあさんの先頭に立って、元気よくはだしで進んでいきました。
北の地平線は、灰色にぼんやりとかすんでいました。
そこには、まだ春は訪れていなかったのです。
「おばあさん、もうすぐ家に着くよ」
と、子供は言いました。
「ああ、ここまで来ればもう大丈夫だよ」
とおばあさんも答えました。
このとき、子供は懐の中から角笛を取り出しました。
そして、北の野原に向かって、プ、プー、プ、プー、と力強く吹き鳴らしたのです。
すると、たちまち、無数のおおかみがどこからともなく群れをなして、雪を蹴散らしながら駆けつけてきました。
子供は、その中の一頭にすばやく飛び乗りました。
そして、南の空を振り返りながら、太陽に向かって威嚇したのです。
すると、無数のおおかみたちは一斉に太陽に向かって、遠ぼえをあげました。
その声は、じつにものすごいものでした。
広野に静まり返っていた遠く近くの木立は、みんなブルブルと身震いをしました。
冷たい風が急に北の方から吹き荒れ、雪がちらちらと舞い降りてきました。
よく見ると、さっきまで杖をついて黒い頭巾をかぶっていたおばあさんは、なんと恐ろしい魔物だったのです。
黒い頭巾に見えたのは、大きな翼を折りたたんで、その頭を隠していたからでした。
たちまち魔物は、大きな翼を力いっぱい羽ばたいて、大空へと舞い上がりました。
子供が角笛を吹きながら、北へ北へと、おおかみの群れとともに駆け去っていくその頭の上の空には、黒雲がわき起こり、雷がゴロゴロとどろいていました。
南の空からは、しきりに金色の矢が飛んできました。
けれど、それらの矢はここまで届くことなく、みんな野原の上にポツリポツリと落ちてしまいました。
すると、矢が落ちた場所からは雪が消え、地面の下からかわいらしい緑色の草が元気よく芽をふいたのでした。
初級翻訳・角笛吹く子 第2話
小川 未明
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