初級翻訳・若草物語 第34話

オルコット ルイーザ・メイ

さて、それから一、二週間のあいだ、ジョーはなんだかおかしな行動ばかりしていたので、みんな驚いてしまいました。
郵便屋さんの足音が聞こえると玄関へ走っていったり、ブルック先生に冷たい態度をとったり、じっと座り込んで悲しそうな顔でメグを見つめたり、急にメグに飛びついてキスしたり。ローリーが来ると、二人で目配せをして新聞の話をしたり……いったい、どうしちゃったというのでしょう?

ある日、ジョーは家の中に飛び込んできて、ソファに寝転がり、新聞を読むふりをしていました。ベスが尋ねました。

「何を読んでいるの?」

「『ライバルの画家』っていう小説よ」

「面白そうね、読んで聞かせて」
メグが言うと、ジョーはゴホンと咳払いをして読み始めました。それはとてもロマンチックな物語でしたが、登場人物が最後にはみんな死んでしまうという、かなり悲しいお話でした。

「いいわね、恋をするシーンが好きだわ。ねえ、作者は誰?」
と、エイミーが尋ねると、

「あなたたちの姉妹よ」

「あなたなの!?」とメグが叫びました。
「とっても上手ね」とエイミー。
「ああ、私、鼻が高いわ」とベス。

この大成功に、みんなは踊り出したいほど喜びました。お手伝いのハンナも飛び込んできて驚きの声を上げ、お母さんもどんなに誇らしく思ったことでしょう。喜びが、まるで嵐のように家の中を駆け巡りました。

ジョーは目にいっぱいの涙をためて、「ミス・ジョセフィン・マーチ」と自分の名前が印刷された新聞が、みんなの手から手へと渡っていくのを眺めていました。

「さあ、全部詳しく話してちょうだい!」「いつ新聞が届いたの?」「原稿料はいくらもらえるの?」「お父様はなんておっしゃるかしら?」「ローリーは笑ったりしなかった?」と、ジョーのまわりに集まった家族のみんなが、次から次へと大声で尋ねました。

「それじゃあ、全部お話しするわね」と、ジョーは自分の書いたお話を売りに行ったときの話を始めました。返事を聞きに行ってみると、2つの作品はどちらも面白いけれど、初めて書く人にはお金(原稿料)は払えなくて、ただ新聞に載せるだけだと言われたそうです。その代わり、もっと上手に書けるようになったら、今度は原稿を買い取るよ、と約束してくれたのだと話しました。

「それでね、私、2つとも原稿を渡してきたの。そうしたら、今日この新聞を送ってきてくれたのよ。ローリーが見せて、見せてってうるさいから見せてあげたら、『すごくよく書けているから、もっと書きなよ』って言ってくれたわ。それに、次はちゃんとお金をもらえるように掛け合ってあげる、って。私、本当にうれしい! 自分が書いたものでお金を稼いで、みんなの暮らしを楽にしてあげられるかもしれないんですもの!」

ジョーは一気にしゃべりつくして、ハァハァと息を切らせました。そして、新聞で顔を隠すと、うれし涙で自分の小説を濡らしてしまいました。自分のペン(書く力)だけで自立して、大好きな家族から褒められることこそ、ジョーにとって何よりも一番うれしいことだったのです。

第十五章 雲のすき間から差し込む光

「11月って、なんだかどんよりしていて嫌な月ね」とメグが言ったのをきっかけに、ジョーもエイミーも、霜で白くなった寂しい庭を眺めながら、なんだか気分が沈むような話ばかりしていました。すると、別の窓から外を眺めていたベスが言いました。

「うれしいことが2つもあるわよ。お母様が街から帰っていらしたし、ローリーさんが、何か面白いお話でも持っていそうな様子で、お庭を通り抜けてこっちへやって来るわ」

お母様とローリーの2人が家の中に入ってきました。みんなはお母様に、お父様からの手紙は届いていなかったかと尋ねました。

ローリーは、今日は数学の勉強をやりすぎて頭がクラクラするから、ブルック先生を馬車で送り届けるところなんだと言って、「どうだい、みんなも一緒に乗らない? 今日はどんよりした天気だけど、馬車に乗ると気持ちがいいよ」と、上手に誘いかけました。

メグは、「若い男の人とそんなにしょっちゅうドライブに行くものではありません」というお母様のアドバイスを守りたかったので断りましたが、ほかの3人は出かけることにしました。

ローリーが「おばさん、何かお使いの用事はありませんか?」と、いつもの人懐っこくて可愛い声で尋ねると、マーチ夫人は言いました。

「ありがとう。できれば郵便局に寄ってちょうだい。今日は手紙が届く日なのに、郵便屋さんが来ないの。お父様は、毎日お日様が昇るのと同じくらい、きっちりと欠かさずお手紙をくださるはずなのにね」

そのとき、ジリリリとけたたましく玄関のベルが鳴り、しばらくするとお手伝いのハンナが1枚の紙を持って入ってきました。ハンナは「奥様、恐ろしい電報が届きましただ!」と言って、まるでその電報が突然バクハツでもするかのように、おそるおそる差し出しました。

お母様はそれをひったくるように受け取って読みましたが、まるで胸にピストルの弾を撃ち込まれたかのように、顔を真っ青にして、椅子に崩れ落ちてしまいました。

ローリーは急いでお水を取りに下の階へと駆け下り、メグとハンナはお母様を抱き起こしました。そしてジョーが、震える声でその電報を読み上げました。

「マーチ夫人へ――ご主人、重体。すぐに来られたし。ワシントン・ブランク病院。エス・ヘールより」

部屋の中は、水を打ったようにシーンと静まり返りました。娘たちは、自分たちの暮らしから、すべての幸せと元気の源が奪い去られてしまったような気持ちになりました。

お母様はすぐに我に返ると、電報をもう一度読み直し、胸が張り裂けそうな悲しい声で言いました。
「私はすぐに出発します。でも、もう間に合わないかもしれない……。ああ、みんな、どうかお母様がこの苦しみに耐えられるように、力を貸しておくれ」

しばらくの間、部屋の中には、途切れ途切れに交わされる慰めの言葉や、「みんなで助け合おう」と誓う言葉、神様がお守りくださることを祈る言葉、それから、それらに混じるしくしくというすすり泣き以外、何の音もしなくなりました。

けれども、かわいそうなハンナがハッと我に返り、自分でも気づかないうちに素晴らしい知恵を発揮して、みんなにお手本を示してくれました。ハンナにとっては、体を動かして働くことこそが、どんな心配事も吹き飛ばしてくれる一番の特効薬だったのです。

「神様が、旦那様をきっとお守りくださいますだ。いつまでも泣いてばかりはいられねえ。奥様がすぐに出発できるよう、支度をしなくちゃなんねえ!」と、ハンナは心からそう言って、涙をエプロンでゴシゴシと拭いました。そして、ゴツゴツとした固い手でマーチ夫人の手をぎゅっと握りしめると、誰よりもテキパキと働くために部屋を出ていきました。

「ハンナの言う通りね。泣いている場合ではありません。みんな、落ち着いてちょうだい。そして、お母様にこれからのことを考えさせてね」
お母様は、顔を真っ青にしながらも、ぐっと気持ちを奮い立たせて悲しみをこらえ、娘たちのためにあれこれと準備を考え始めました。

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