初級翻訳・若草物語 第49話

オルコット ルイーザ・メイ

そうでないと、仕事も手につきません」
「でも、私はまだ若すぎますから……」
「僕は待ちますよ。そのうちに、僕のことを好きになってください。僕が教えてあげたいんです。これはドイツ語を覚えるよりも、ずっと簡単なんですから」ジョンは、一生懸命にお願いするような様子でしたが、その顔にはどこか楽しそうで、きっとうまくいくと信じているような、満足げな微笑みさえ浮かべていました。

それを見たメグは、ふとお金持ちの友人アンニイ・マフォットのことを思い出しました。自分もあんなふうに、誰かを振り回してみたいという、ちょっとしたいたずら心が芽生えたのです。
「私、そんな気持ちにはなれませんわ。どうぞお帰りください」
メグは、わざと冷たく言ってしまいました。

それを聞いたジョンは、メグが急に不機嫌になったことに驚きました。
「本気で言っているのですか?」
部屋から出ていこうとするメグを追いかけて、ジョンは心配そうに尋ねました。

「ええ、そうです。私、そんなことで悩みたくありませんもの。お父様も、今は気にしなくていいとおっしゃいました。まだ早すぎますし、そんな気にはなれませんわ」
「……いつか、あなたの気持ちが変わってくれることを願っています。僕は待ちますよ。ですから、どうか僕をからかわないでください」
「私のことなんて考えないでください。そのほうが、私には好都合なんです」
メグは、恋人の忍耐強さを試したり、自分の言葉で相手を動かせたりすることに、いじわるな満足感をおぼえながら言いました。

ジョンは顔を真っ青にして、本当に苦しそうにしていました。
もし、このハラハラする場面に、マーチおばさんが足をひきずりながら入ってこなかったら、このあと一体どうなっていたことでしょう。

マーチおばさんは、ローリーからメグのお父さんが帰宅したことを聞くと、すぐに甥に会おうと馬車を飛ばしてきたのです。
みんなをびっくりさせようと、案内も受けずにずかずかと入ってきましたが、これにはメグもジョンも本当に驚きました。メグは飛び上がり、ジョンはあわてて書斎へ逃げ込もうとしました。

「おやまあ、これは一体どういうことだい?」
おばさんは杖で床をコンコンと叩きながら、二人が一緒にいたことを怪しみました。
「あの、この方はお父様のお友達ですの」
「その男が、お前さんの顔を真っ赤にさせたのかい? なにかまずいことでもあったんだろう」
「ただお話ししていただけです。ブルックさんは、傘を取りにいらしたんです」
「ほう、ブルックだって? あの子の家庭教師かい。ああ、わかったよ。ジョーがお父さんの伝言を持ってきたとき、うっかり口を滑らせたのを聞いたんだ。お前さん、まさか承知したわけじゃないだろうね?」
「しっ! 聞こえてしまいますわ。お母様を呼んでまいりましょうか?」
「まだいいよ。お前に言っておくことがある。もしお前がその男と結婚するつもりなら、私はびた一文だってあげないからね。よく覚えておきな。賢くなるんだよ」

マーチおばさんは、どんなに優しい人であっても「反抗してやる!」という気持ちにさせてしまう人でした。メグも、無理やりそんなふうに言われると、ジョンへの愛情と意地っぱりな気持ちがムクムクと湧いてきました。ジョンを好きになろうと決心したメグは、いつになく強気で言い返しました。
「私は、好きな人と結婚します。お金は、おば様の好きな方にあげてくださいな」
「なんですって! そんな口のききかたをして。今に貧乏人との暮らしに飽きて、後悔することになりますよ」
「愛のない結婚をしてお金持ちになるより、ずっとマシですわ」
メグは一歩も譲りません。

おばさんは、メグがこんなに言い返すなんて思ってもみなかったので驚きました。今度は少し優しくして、説き伏せようとしました。
「私は親切で言っているんだよ。お前さんは立派な結婚をして、家族を助けなきゃいけない立場なんだから」
「いいえ。お父様もお母様も、そんなこと考えていません。二人ともジョンが好きなんです。貧乏ですけれど」
「お前さんの両親は、世間知らずのお人好しだからねえ。そのブルックとかいう男は、貧乏で、金持ちの親戚もいないんだろう?」
「でも、親切な友達がたくさんいますわ」
「友達が何の助けになるもんかね。それに、その男には仕事もないんだろう?」
「今はまだありません。でも、ローレンス様がお世話してくださいます」
「あんな変わり者が頼りになるものかね。とにかく、お前はもう少し賢い子だと思っていたんだがねえ」
「ブルックさんは、立派な方です。頭もいいし、才能もあります。勇気だっておありです。そんな方が私のことを思ってくださるのを、私は誇りに思っています!」
「あの男はね、お前に金持ちの親類がいるから、それを目当てにお前を好きになったんだよ」
「まあ、なんてことをおっしゃるんですか! 私は、どうしても、あの方と結婚します!」

メグはそこまで勢いで言ってから、「もしジョンに聞かれていたら……」とはっとして言葉を止めました。でも、マーチおばさんはすっかり怒り狂っていました。
「よろしい、強情な子だね! もうお父さんに会う気力もなくなったよ。結婚したって、私から何かをもらえるなんて思ったら大間違いだからね。一生おさらばだよ!」
おばさんは恐ろしい顔をして、帰っていってしまいました。

残されたメグがぼんやりと立ち尽くしていると、ジョンが部屋に入ってきました。
「メグ、僕のことをかばってくれてありがとう。それから……おば様に、あなたが少しでも僕のことを愛してくれていると証明してくれたこと、心からお礼を言わせてください」「おば様があんなにあなたの悪口を言うまで、自分がどれだけあなたのことを大切に思っていたか、私、気づかなかったんです」

「じゃあ、僕は帰らなくていいんだね? ここにいて、幸せになってもいいんだね?」
ジョンがそう聞くと、メグはいつものようにすました顔で立ち去る……かと思いきや、「ええ」と優しくささやいて、ジョンの胸に顔をうずめました。ジョーの前では「恋なんて興味ないわ」なんて言っていたメグでしたが、これでもう、ジョーに対して一生頭があがらなくなってしまいました。

十五分ほどして、ジョーが二階から降りてきました。すると、部屋の雰囲気がすっかり変わっているではありませんか! ジョーは驚きのあまり、息が止まりそうになりました。それなのにジョンは、「僕たちを祝福してください」なんて言ってくるのです。

ジョーは悲痛な叫び声をあげて飛び出し、二階へ駆け上がりました。
「ああ、誰か早く下に行って! ジョンがおかしなことをして、お姉ちゃんが喜んでるのよ!」

お父さんとお母さんは、急いで一階へ向かいました。ジョーはベスとエイミーに、この「おそろしいニュース」をわめき散らしながら伝えましたが、二人はむしろ「うれしいニュース」だと思って喜んでいました。ジョーは一人、自分の屋根裏部屋へ閉じこもって、その悩みをネズミたちに打ち明けるしかありませんでした。

その日の午後、客間でどんなお話がされたのか、詳しいことは誰も知りません。

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